徹底解説!強・中・弱の地デジ電界地域に適したテレビアンテナ工事の選び方、調べ方とは?
テレビアンテ地デジ放送で地域ごとに受信できる電波レベルを示す強電界地域、中電界地域、弱電界地域に適したテレビアンテナの機種とは? という疑問に対して、衛星放送用のBS/CSアンテナを含め、さまざまな条件の現場に安心して設置できるアンテナ機種から設置位置、設置角度までの調べ方を解説します。
テレビアンテナの取り付け工事は、2023年(令和5年)現在でも、地上波デジタル放送(地デジ)や衛星放送(BS/CS)をご視聴になる方法としては、もっとも一般的なものです。アンテナ設置によるテレビのご視聴は、衛星放送の有料チャンネルを除いて、ほぼ永続的に無料でご視聴になれることが最大のメリットです。
ただ地デジ放送の場合、日本国内でも地域によって地デジ電波の強度が異なり、一部には受信が困難となる地域もあるため、テレビアンテナの設置にあたっては、その現場の電波状態に適したアンテナ機種を選ぶ必要がございます。
衛星放送であるBS放送、CS放送に関しては、ほぼ同様のBS/CSアンテナを設置することにより日本全国で受信が可能ですが、やはり一部の地域ではやや電波が弱くなることがございます。他にもアンテナを設置できる位置、方向などに制限も生じてまいります。
またテレビアンテナの設置に関しては、受信性能だけではなく、風雨など自然環境への耐久性や住宅の外観性、ご自宅の敷地からはみ出さない設置など、お客様のご要望を含めてさまざまな条件が出てくることでしょう。しかしこのような条件も、十分なテレビ電波の受信性能を第一に考えると、現場の電波状態に応じた制約が考えられます。
そこで当コラムでは、2023年度の最新情報に基づき、地デジのいわゆる強・中・弱の各電界地域に適した地デジアンテナ機種やモデル、設置位置のご紹介から、衛星放送用のBS/CSアンテナについても、電波状態や環境などに合わせたBS/CSアンテナのモデルや設置方法。また現場の電波状態とは異なる原因で、テレビ側で受信できるアンテナレベルが低くなるケースと、その対処法などを解説してゆきます。
当コラムをお読みいただければ、お住まいのエリアの電波状態に適応しつつ、もっともご希望に近いテレビアンテナのモデル、および設置位置などのアンテナ工事をお選びいただけることと存じます。
地上デジタル放送の特性と強・中・弱の電界地域について
地上デジタル放送、いわゆる「地デジ」とは、日本各地の主要な地域に設置された大規模な送信所や、送信所をカバーする形で設置される大小の中継局などの電波塔から、その周辺エリアに地デジ電波を発信し、建築物などに設置された地デジアンテナで受信して、テレビ番組を視聴する形式のテレビ放送です。地上に設置された電波塔から電波を送信しているため「地上波放送」とも呼ばれます。
地デジ放送のチャンネルには、全国的なテレビ放送である、NHK、広域民放の各チャンネルと、東京都の東京MX、兵庫県のサンテレビ(SUN-TV)など、一部の都府県に存在する独立放送局が放送し、その都府県内や周辺エリアで視聴できる地方チャンネルが存在します。
強・中・弱の電界地域とは?
この各チャンネルの地デジ電波を受信できるエリアでも、そのエリアの地デジ電波レベルによって、電波レベルが高い順より「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」に分けられます。
強電界地域とは、受信できる地デジ電波のレベルが高い地域を指します。位置的には電波塔が近く、電波を遮る山地などの障害物が少ないなどの条件が揃っており、どのようなモデルの地デジアンテナでも良好な地デジ電波受信が可能となるエリアです。
弱電界地域は、強電界地域は逆に地デジ中継局から距離が遠い、遮蔽物が多いなどで、一帯で受信できる地デジ電波が弱いエリアです。そのため使用できる地デジアンテナモデルや設置位置が限られ、ブースターなどの機器も必須となります。
中電界地域は、強と弱の中間にあたるエリアで、電波レベルもその中間であり、使用できる地デジアンテナのモデルや設置位置に一定の制約がかかります。
ただ一般的に、強、中電界地域にあたるエリアでも、中継局と各ご家庭のアンテナとの間に山林や高層建築物が存在する。あるいは周囲より低い窪地や盆地になっているエリアでは、局地的に受信できる地デジ電波レベルが低下することもございます。
一般的には、電波の強度を示す単位「㏈(デシベル)」において、受信できる地デジ電波レベルが「80㏈」以上のエリアが強電界地域、「80㏈」から「60㏈」のエリアが中電界地域。「60㏈」以下のエリアが弱電界地域にあたります。ただこれらの㏈の数値は、一年を通して天候、季節などの変動により、おおむね「6㏈」前後の変動が生じる他、悪天候でもやや電波レベルは低下します。
さらに各住宅などの地デジアンテナで地デジ電波を受信してから、配線や各機器を通ってテレビなどの受信機器に届くまでにも、電波レベルは徐々に減衰(弱まり)してゆきます。一般的に地デジ電波は、気候や天候による変動なども踏まえて、テレビなどの受信機器に届く時点で「47㏈」から「81㏈」程度の電波レベルが受信に適切とされております。また「90dB」以上と強すぎるレベルでも、かえって画面の乱れなどの原因になります。
そのため、各住宅では多くの場合、必要なレベルまで電波レベルを増幅する「ブースター」という装置を設置する他、電波レベルが強すぎる場合は、逆に電波を少し減衰させる「アッテネーター」という装置を使用します。また近年のテレビ、レコーダーなどの機器には、アッテネーター機能を内蔵しているものもございます。
また一口に強・中・弱の電界地域といっても、実際には各電界地域内にて、中継局からの距離などの条件で、現場ごとに電波レベルの違いが出てまいります。他にも日本国内には、地デジ電波が届かない山間部、周辺に中継局がない過疎地域などの「難視聴地域」も各地に存在します。このようなエリアでは、主にケーブルテレビ(CATV)などを利用してテレビ放送を視聴することになります。
なお各住宅などの現場において、地デジ電波レベルを確認する方法では、テレビアンテナ工事の専門業者放送が使用するアンテナレベルチェッカー(電波測定器)を用いて確認することがもっとも確実です。レベルチェッカーは個人で購入することも可能ですが、価格が数千円程度になる他、一般の方では電波レベルの読み取り方が難しいこともございます。
一般の方が各ご家庭で、自宅がどの電界地域に該当するかを判定する方法としては、アンテナ設置業者にレベルチェッカーを用いた電波調査を依頼するのがもっとも確実です。ただ業者によっては、調査費用の他、出張料やアンテナ工事のキャンセル料などが生じる場合もございますので、それらが完全無料の業者を選択されるといいでしょう。
他にも電界地域の大まかな目安を確認する方法としては、周辺の住宅に設置されている地デジアンテナの形状を確認する。最寄りの家電量販店やホームセンターに問い合わせる。地デジとワンセグ放送の受信感度は比例するため、スマートフォンなどでワンセグの受信を試みる。スマートフォンのアプリやインターネットの専門情報提供サイトで調べてみる、などの方法がございます。
周辺のテレビアンテナを確認する場合は、後述する電界地域ごとに適したアンテナモデルを参考にしてください。
また各電界地域やその確認方法、その他、地デジ電波に関する特性などの詳細は、以下のコラム記事の情報もご参照ください。
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは
地デジ電波の強さと品質を示す「dB」「MER」「BER」とは何か?
地デジ受信に重要な「ハイトパターン」とは? 地デジアンテナは高いところに設置すべきとは限らない?
地デジ放送を受信する地デジアンテナの主なモデルは?
現在、地デジ放送を受信するため、戸建て住宅などに設置する地デジアンテナには「八木式アンテナ」「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」の3機種が存在します。それぞれの特徴は以下の通りです。
・八木式アンテナ
八木式アンテナは、1920年代、大正時代に、東北帝国大学(現・東北大学)の八木秀次博士、宇田新太郎博士の共同研究によって開発された古典的なテレビアンテナです。由来から八木アンテナ、八木・宇田アンテナとも呼ばれます。
八木式アンテナの形状は、全体は大きな矢印のようで、そこに短い横棒がいくつもついた魚の骨に似ているものです。矢印の先か魚の頭に見える反射器(リフレクター)と横棒にあたる導波器(ディレクター)。導波器の反射器よりに設置された輻射器(ラジエーター)から構成され、反射器の反対側を中継局や電波の方向に向けます。
また反射器、導波器に数多くついている短い棒は素子(エレメント)と呼ばれ、この素子数が八木式アンテナの受信性能を決めます。
八木式アンテナの特徴は、この素子数の増減により受信性能を幅広く調整できる点です。具体的には強電界地域向けの8素子、中電界地域から弱電界地域向けの14素子、20素子ののモデルなどから、Ⅹ字型の部品に複数の素子を設置した高性能素子を使用するパラスダックアンテナという機種では、27素子、30素子も可能になります。
ただ素子数の多い八木式アンテナはその分、大型になる他、特にパラスダックアンテナでは指向性(特定の方向でのみ受信性能が高くなる性質)が高くなる問題もございます。逆にパラスタックアンテナであれば、5素子程度のモデルでも、通常の14素子、20素子などのモデルと大きな差のない受信性能を実現できるため、アンテナの小型化が可能となります。
八木式アンテナのメリットは、素子数によって受信性能を調整でき、高い受信性能を発揮すること。またシンプルな構造から本体価格や設置費用が、地デジアンテナではもっとも安価となることです。
デメリットには、住宅の屋根上に設置されるケースが多いため、ご自宅でのメンテナンスなどが難しくなる。同じ理由から風雨や鳥害などに影響されやすく、経年劣化が進みやすい。屋根の上で目立って住宅の外観や周辺の景観を崩してしまうなどの点が挙げられます。
八木式アンテナの詳細は、以下の各コラム記事もご確認ください。
地デジテレビアンテナの長老「八木式アンテナ(八木アンテナ)」とは?
・デザインアンテナ
デザインアンテナは素子などのアンテナ本体部を、主に長方形の箱状など薄型のケースに収め、住宅の壁面などに設置される地デジアンテナです。別名をフラットアンテナ、平面アンテナ、壁面アンテナ、ボックスアンテナなどともいいます。
主な設置位置は住宅の壁面、またベランダの手すり部などですが、屋根の上のポールに設置されることもございます。また電波状態や住宅の建材などの条件が許せば屋根裏、天井裏空間などの屋内設置も可能です。
デザインアンテナのメリットは、コンパクトでスタイリッシュな形状に、カラーバリエーションも豊富で、住宅の外壁などの色に調和し、目立たず住宅の外観、景観を崩さない点です。さらに設置位置から風雨や鳥害などの影響を避けやすく、経年劣化を抑えて耐用年数が長くなる点も大きなメリットです。住宅密集地にて、アンテナの一部が隣家の敷地に入り込む越境問題が起こりにくい点もメリットと言えます。
デメリットとしては、壁面など設置位置がやや低く、素子数も主なモデルで20素子相当、26素子相当になることから、八木式アンテナに比べると受信性能も低くなり、電波条件や周辺環境が悪い現場では設置できない場合もあること。八木式アンテナに比べると、本体価格や設置工費がやや高額になる点がございます。
デザインアンテナについては、以下のコラム記事でも詳しくご説明しております。
地デジ用テレビアンテナの一番人気「デザインアンテナ」とは? 特徴から本体価格、工事費用や料金相場、業者選びまで徹底解説!
・ユニコーンアンテナ
ユニコーンアンテナは、2017年(平成29年)に、日本三大アンテナメーカーのひとつ「マスプロ電工」社が発売した、地デジアンテナの最新鋭機種です。ポールの先に、光の反射を抑えたホワイトのブラックの円柱型をしたアンテナ本体が設置されている、非常にスタイリッシュなデザインで、ポール型アンテナとも呼ばれます。受信性能は20素子相当になります。
スタイリッシュで軽量のユニコーンアンテナは、戸建て住宅では屋根の上をはじめ、屋根の張り出し部(破風板)や壁面の高い位置にも、専用の固定具で設置可能です。その装飾物のようなデザインから、純和風建築などを除けば、どこに設置しても住宅のデザインにマッチし、景観や建物の美観を保つことができます。
他にも設置位置が高いことから、デザインアンテナに比べて高い受信感度を確保できる点。越境問題が起こりにくい点などもメリットであり、八木式アンテナ、デザインアンテナのメリットを兼ね備えた地デジアンテナといえます。
ユニコーンアンテナのデメリットとしては、同素子数から高性能の八木式アンテナと比べると受信性能が一歩及ばないケースがある。また最新型アンテナ機種であるため、本体価格や設置費用も、地デジアンテナではもっとも高額になることです。
ユニコーンアンテナに関する詳細は、以下の各コラム記事をご参照ください。
地デジアンテナの最先端、ユニコーンアンテナとは? 特徴、メリット、工事費用の相場まで徹底解説!
台風対策に最適!地デジ「デザインアンテナ」と「ユニコーンアンテナ」とは?
各電界地域に適した地デジアンテナの素子数(相当)と設置位置は?
現在の一般戸建て住宅向け地デジアンテナは、基本的に上記の3機種になります。各機種の中でも素子数(相当)をはじめ、サイズの大小など、さまざまなモデルが存在するため、使用する現場の電波状態や設置工法に適したモデルを選ぶ必要がございます。
各種地デジアンテナモデルのそれぞれには、強・中・弱の各電界地域向けという表示がございますが、その違いは主に前述の「素子(エレメント)数」の違いになります。
この素子数は、八木式アンテナであれば各モデルの表示の他、外見からも短い横棒の数で確認することができます。弱電界地域向けの高性能モデルであれば素子である横棒の数が多くなり、アンテナ本体も大型になります。
ただデザインアンテナやユニコーンアンテナでは、外見から素子数を判断することはできないため、その受信性能は、八木式アンテナにおける「素子数相当」という表現で表されます。また素子数の上限も、デザインアンテナ、ユニコーンアンテナでは、八木式アンテナには及びません。
2023年の現状では、ユニコーンアンテナは「20素子相当」のみ。デザインアンテナは素子数が最大でも「26素子相当」になるのに対して、八木式アンテナはパラスダックアンテナであれば「30素子」も可能となります。
地デジアンテナのどの機種であっても、強電界地域向けのモデルは「4素子」「8素子」から「14素子」程度。中電界地域向けモデルは「14素子」から「20素子」の標準モデル。弱電界地域向けモデルは「20素子」から「30素子」の高性能モデルになります。
また設置位置では、受信できる電波レベルが低いほど、周辺の障害物の影響が少なくなる高所に設置する必要がございます。
例えば中電界地域でも、住宅密集地などではデザインアンテナなどの壁面への設置が難しくなる。弱電界地域では八木式アンテナをできるだけ高所に設置する方法が基本になるなどの傾向がございます。
地デジアンテナの素子については、以下の各コラム記事にも詳しい解説がございます。
テレビアンテナの性能を決める「素子」とは何か? 地デジアンテナ工事で重要な「素子数」を徹底解説!
地デジ用テレビアンテナ工事にて設置する電界地域に最適な受信性能は「何素子数」タイプか? アンテナ機器の選び方を徹底解説!
地デジ放送用テレビアンテナ、UHFアンテナ機種による素子数の違いとは? 高性能モデルや現場ごとに必要な素子数の機種を解説
受信性能が高い地デジアンテナ機種とは?
結論から申し上げると、地デジ電波の受信性能がもっとも高いアンテナ機種は、八木式アンテナになります。
前述のように地デジアンテナ本体の受信性能は、主に素子数で決まります。そのため基本的には機種を問わず素子数が多いアンテナほど受信性能が高くなりますが、八木式アンテナのような素子が露出したアンテナは「素子アンテナ」とも呼ばれ、受信性能では素子アンテナ以外のアンテナでは素子アンテナには及びません。
例えば同じ「20素子(相当)」の地デジアンテナであっても、実際の受信性能には最大から最小まで、やや幅がございます。
そして八木式アンテナ(素子アンテナ)は、20素子の範疇でも平均より高めの受信性能を発揮するのに比べて、素子アンテナでないデザインアンテナ、ユニコーンアンテナは、20素子相当でもやや低い受信性能になってまいりますので、地デジアンテナ選びの際には、その点をご注意ください。
また、八木式アンテナは構造的に高所への設置が前提になる点も、高層建築や住宅密集地などの周辺環境に影響されにくくなるため、受信感度の向上につながります。その点はユニコーンアンテナも同じである他、デザインアンテナを屋根の上のマストに設置することも不可能ではございませんが、設置条件が同じであれば、やはり本体の受信性能の違いが大きくなってまいります。
その他、条件に応じた地デジアンテナ機種の選び方や、受信性能を決める要素については、以下の各コラム記事も参考になると思われます。
おすすめの地デジアンテナの選び方 ~屋外用から室内用の人気商品まで~
地デジのテレビアンテナで受信できる方向は指向性で決まる? アプリでアンテナの方向調整に最適な角度を調べる方法も徹底解説!
地デジアンテナや無線通信用アンテナの性能を示す利得、動作利得とは何か? 素子数との違いなど地デジアンテナ基礎知識も解説
衛星放送(BS/CS放送)の特性と主なアンテナモデル
引き続きこの項では、地デジ放送とはまったく異なる衛星放送、いわゆるBS放送、CS放送および、その電波を受信するBS/CSアンテナについて解説してまいります。
BS放送は、日本国内における地デジ難視聴地域など、テレビ放送の受信格差を軽減することを目的に開設された、東経110度に位置する静止衛星の放送衛星を使用する衛星放送です。NHK、広域民放その他の無料放送チャンネル(NHK受信料を除く)の他、月額契約により視聴できる有料チャンネルも放送しております。
CS放送は、東経110度、および124度と128度に位置する通信衛星を一般ご家庭向け放送のため商業利用した衛星放送です。特に主な放送サービスである、東経110度の通信衛星を用いた放送は、いわゆる110度CS放送「スカパー!」として知られております。CS放送はほとんどのチャンネルは月額契約制の有料チャンネルですが、チャンネル数は「スカパー!」で約80あり、細分化されたさまざまなジャンルから、お好みのチャンネルを選んで視聴できる点が魅力です。
また2018年(平成30年)12月より、これらBS、CSの衛星放送に、従来のフルハイビジョン(2K)画質よりも格段に高精細画質となる、4K、8K放送のチャンネルを加えた「新4K8K衛星放送」もスタートしております。
これら放送衛星、通信衛星から送信される電波は、高周波数帯であるマイクロ波の一種である「SHF(センチメートル波)」のうち、12GHz(ギガヘルツ)前後の周波数で、12GHz帯と呼ばれます、直進性の高い性質があり、その波長の長さは25ミリ前後です。
日本国内でBS、CS放送が受信できるエリアとしては、衛星からの電波送信となるため、基本的には国内の全域で受信が可能です。ただ放送衛星、通信衛星とも赤道上空に位置するため、日本国内では北へ行くほど受信電波が弱くなる他、南端部や離島部などでも電波がやや弱まってまいります。
また、衛星放送の12GHz波は性質が光に近く、直進性が高い半面、障害物などに遮られやすい性質がございます。他にも雨粒や雪が12MHz帯の波長の大きさに近くなる激しい雨や雪の場合には、電波が吸収されて受信不要が発生する「降雨減衰」「降雪減衰」も起こりえます。
なおBS放送、CS放送の各チャンネルについては、ケーブルテレビ(CATV)、光テレビなどのサービスでも、殆どのチャンネルがご視聴になれます。
衛星放送そのものや「新4K8K衛星放送」についての詳細は、以下のコラム記事もご確認ください。
新4K8K衛星放送とは? 4K、8Kテレビの購入後に必要なアンテナ工事と費用の相場、おすすめ業者の選び方まで徹底解説!
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「新4K8K放送」を視聴するためのアンテナ工事、配線について徹底解説!
雨や雪が降るとBS、CSの衛星放送が映らなくなる原因と衛星放送用テレビアンテナを調整して映るようにする対処方法とは?
(BS/CSアンテナの構造と主なモデル)
BS/CSアンテナは、ディッシュと呼ばれる皿状の円盤を人工衛星の方向に向けて、その内側に反射させた衛星からの電波を、アームによってディッシュの中央部に固定されたコンバーター集めて受信する、いわゆる「パラボラアンテナ」です。
前述したBS放送の放送衛星、CS放送の通信衛星とも、宇宙空間の赤道軌道上、周回軌道に位置し、地球の自転に合わせて日本列島を捕捉し続ける静止衛星です。そのため一台のBS/CSアンテナで、双方の電波を受信することが可能です。
ただしBS/CSアンテナは、双方の衛星が位置する東経110度(南西方向)へ正確に向ける必要があり、ミリ単位のズレでも受信感度が大きく低下することがございます。また衛星放送は地デジ以上に障害物に弱く、ご家庭のアンテナと人工衛星までの間に、建築物や山地、樹木などの障害物があると受信不良が起こります。
そのため施工時には、現状だけでなく将来的な障害物の発生も考えた設置位置の判断が必要となります。またBS/CSアンテナは受信した12GHz帯の電波を、コンバーターでケーブルでの送信に適したMHz帯の電波に変換しているため、電源が必要となります。
BS/CSアンテナの設置に関しては、以下の各コラム記事でも詳しくご説明しております。
BS/CSアンテナの角度調整に重要な「指向性」とは? 人工衛星の方向を確認できるスマホアプリ「BSコンパス」も徹底解説!
BS/110度CSアンテナで安定して衛星放送を受信できる設置の場所とアンテナの向きや角度を正確に調整する方法
(BS/CSアンテナの種類)
BS/CSアンテナのパラボラアンテナはどのメーカー、モデルのものも基本的な構造や設計は同じものであるため、同モデルであれば、受信性能に大きな違いはございません。
モデルによる違いでは、まずディッシュ部の大きさが挙げられます。戸建住宅やアパートなど小規模の集合住宅で使用されるモデルでは、ディッシュ部の直径(センチ)を表す45型、50型、60型、75型などがございます。
このディッシュ直径が大きいほど、衛星放送の受信感度が高まります。半面、ディッシュが大きくなると風雨などの影響を受けやすくなり、台風などの際にはアンテナ角度がずれてしまい、再調整するまで電波を的確に受信できなくなるなどのリスクが高くなります。
一般の戸建住宅では、基本的に45型のBS/CSアンテナで十分に受信可能ですが、降雨減衰や降雪減衰など、悪天候による受信不良を避けたい、また前述のように日本の北部や離島部など、衛星放送の電波がやや弱まるエリアでは、50型以上のモデルが利用されることもございます。
なお90型以上の大型BS/CSアンテナも存在しますが、これらはマンションなど集合住宅での共同受信用に利用されるもので、価格も10万円以上になってまいります。
またBS/CSアンテナの本体色は、太陽光(熱)の影響によるディッシュの歪みや部品の劣化を避けるため、主に白色系統が使用されますが、太陽光に強い塗料を用いたカラーバリエーションのモデルも存在します。
近年では、正面からの風の影響を避けるためディッシュに無数のパンチングホールを設置する。またマウントと呼ばれるアンテナ固定部の強化や、ディッシュ下部とアーム部の固定を強化するなどの工夫で、高い耐風性能を実現したBS/CSアンテナ機種も存在します。
なお2018年の「新4K8K衛星放送」開始以前の、2K対応のBS/CSアンテナでは、使用される電波の違いから、新4K8K衛生放送のチャンネルのほとんどが受信できません。現在のBS/CSアンテナは大半が4K8K放送対応型ですが、新4K8K衛星放送をすべてご視聴になるためには、対応するBS/CSアンテナの他、ブースターや分配器などの機器も4K8K対応(3224MHz対応)型に交換する必要がございます。
BS/CSアンテナについての詳細は、以下のコラム記事をご参照ください。
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地デジの強電界地域に適した地デジアンテナ
強電界地域では、八木式アンテナ、デザインアンテナ、ユニコーンアンテナとも、基本モデルの地デジアンテナで快適な地デジ放送の受信が可能です。また壁面やベランダ内外など比較的、低い位置や、デザインアンテナでは風雨などを影響を避け、住宅の外観にも影響を与えない屋根裏、天井裏空間へのアンテナ設置も可能など、アンテナモデルやアンテナ工事、設置位置の選択で、非常に自由度が高くなります。
ただテレビなどの受信機器に届く地デジ電波レベルが「90㏈」以上になる場合は、前述の通り受信不良が起きやすいため、素子数が少ないモデルの地デジアンテナを設置する。またはアッテネーターの設置、テレビなどのアッテネーター機能をオンにするなどで、テレビ側に届く電波レベルを適度に弱める対策が必要となります。
地デジの中電界地域に適した地デジアンテナ
中電界地域では「強・中電界地域用」「中・弱電界地域用」の地デジアンテナ機種を用いることで、おおむねどの機種の地デジアンテナも設置可能です。中電界地域では、弱電界地域ほど地デジ受信についての条件は厳しくありません。ただ前述のように中電界地域内でも80㏈から60㏈までの電波レベルの違いが生じます。中電界地域はおおむね強電界地域と弱電界地域にはさまれる形になり、一般的に強電界地域から弱電界地域に近づくほど電波レベルが低下してゆきます。
そのため中電界地域内でも、弱電界地域よりで電波レベルが低い現場になると、デザインアンテナなど一部モデルが使用できない。素子数の多いモデルが必要になる。ベランダや壁面、屋根裏などへの設置ができないといった弱電界地域に近い制約が出てくるなど、アンテナ設置に関する条件が異なってまいりますので、ご注意が必要となります。
地デジの弱電界地域に適した地デジアンテナ
弱電界地域では、全般的に地デジ電波レベルがかなり低くなります。したがって確実な地デジ受信のためには、屋根の上などできるだけ高い位置に、より素子数が多い八木式アンテナの高性能機種を設置することが最適といえます。特に弱電界地域では、アンテナが受信した地デジ電波を増幅する「ブースター(増幅器)」でも、増幅性能が高い屋外用ブースターを設置することが、ほぼ必須となってまいります。
弱電界地域でも中電界地域の付近で比較的、地デジ電波状態がよく、デザインアンテナなどが使用できる場合でも、基本的に「中・弱電界地域用」の機種が必要となる他、屋内への設置などは難しくなるなど、設置位置の制約も大きくなってまいります。
さらに弱電界地域でも中電界地域から離れて地デジ電波レベルが低くなり、八木式アンテナでも高性能アンテナが必要となるようなエリアでは、デザインアンテナやユニコーンアンテナでは地デジ受信ができず、設置できないケースもございます。
設置エリアの電波状態に適したBS/CSアンテナ
前述のようにBS/CSアンテナは、基本的にどのモデルも受信性能に大きな差はなく、やや電波レベルの低いエリアでは大型のモデルが必要になる点を除けば、日本全国において同じタイプのBS/CSアンテナが使用できます。ただBS/CSアンテナは、BS放送、CS放送の人工衛星が位置する「東経110度(南西方向)」で、高層建築などの障害物が存在しない方向へ向けた設置が必要となります。
このBS放送、CS放送の受信レベルは、テレビ、レコーダーなど受信機器の側で、BS/CSアンテナレベル(受信レベル)の確認画面を表示することで、機器に届いている衛星放送の電波レベル(受信レベル)の強さを確認できます。なお地デジ電波についても、同じく地デジアンテナレベル画面から受信レベルを調べることができます。
アンテナレベルの確認方法は、基本的にテレビなどの機器をリモコンで操作し、設定画面などからアンテナレベルの確認画面を選択することで可能です。なお正確な確認方法は、テレビなど機器のメーカー、モデルや型番、製造年代などによっても異なるため、本体に付属のマニュアルやメーカーの公式サイトなどでご確認ください。
BS放送、CS放送の場合、一般的にアンテナレベルが「50」以上あれば、安定して受信できるとされています。一方でアンテナレベルが50以下の低い値や、「0」になっている。また50以上と以下で大きく変動しているなどの場合は、衛星放送の電波状態か、BS/CSアンテナの機器に問題が生じていると考えられます。このようなアンテナレベルでは、衛星放送のテレビ画面の乱れ、映らないなどの状態になるため、原因を特定しての対処が必要となります。
衛星放送のアンテナレベルが下がり、画面が乱れる、受信ができないといった場合は、まず天候が原因という可能性が考えられます。
豪雨による大粒の雨や降雪の場合は、雨粒や雪の大きさが、衛星放送の電波の波長の幅に近くなり、電波が吸収される、乱反射が起こるなどにより電波レベルが弱まります。前述の通りこれを「降雨(降雪)減衰」と呼び、衛星放送の仕組み上、避けられない問題になります。
降雨や降雪による減衰は天候の回復でおさまりますが、前述した50型など、大型のBS/CSアンテナを使用することでも抑えることが可能です。ただ大型のアンテナでは、風雨によるアンテナ角度のずれなどが生じやすくなるといった問題もございます。
BS/CSアンテナ角度のずれも、受信不良の原因では多いものです。BS/CSアンテナはBS放送の放送衛星、CS放送の通信衛星が位置する東経110度、南西方向へと正確に向ける必要があり、ミリ単位のズレでアンテナレベルが大きく下がることがございます。
アンテナ角度のズレは、風雨や降雪、地震など自然災害や気候の影響、またアンテナの老朽化などで起こり得ます。この場合はBS/CSのアンテナをあらためて東経110度へ調整し直すことでアンテナレベルが安定します。ただBS/CSアンテナが屋根の上など、角度の調整に危険が伴う場所に設置されている場合は、決してご家庭では行わず、専門のアンテナ工事業者などにご依頼ください。
BS/CSアンテナと人工衛星との間に障害物がある場合も、直進性の高い12GHz帯の電波が遮断されてしまい、アンテナレベルが下がる原因になることは、前述の通りです。
この障害物は、アンテナの前に高層マンションなどの建造物が建てられるなどの他、樹木が伸びる、葉が茂る、また洗濯物が干されるなどの要因でも起こり得ます。このような場合は、BS/CSアンテナの位置を、障害物の影響を受けない場所に再設置する方法で改善されます。
またBS/CSアンテナには、電源を供給する必要がございます。これは衛星から届いた電波を、テレビ電波に適したMHz帯周波数へと変換する「コンバーター(変換器)」に電源が必要なためですが、この電源トラブルにより、衛星放送の電波がテレビなどの機器に正しく届かなくなることがございます。
BS/CSアンテナへの給電は、基本的にブースターの電源部から、もしくは接続されているテレビ、レコーダーなどのチューナー端子からになりますが、ブースターからの場合はブースター電源のトラブル。テレビなどの場合は、テレビ側の給電設定が正しくないかトラブルが生じている。使用されている分配器(全端子通電型が一端子通電型)の問題。またその他の配線トラブルなどが考えられます。
地デジ、BS/CSアンテナとも、屋外に設置されるアンテナからテレビなど機器までの、テレビアンテナ配線には、途中にブースター、分配器などの機器が設置され、これらの機器のトラブルでも、テレビまで十分なレベルの電波が届かない要因となります。これらについては、次項で詳しくご説明いたします。
BS/CSアンテナへの給電については、以下のコラム記事の情報もご参照ください。
BS/CSアンテナには電源が必要? テレビから衛星放送用アンテナに電源設定を行う方法
テレビアンテナの配線や機器による電波レベルの低下について
通常の戸建て住宅では、屋外に設置されたテレビアンテナから屋内のテレビなど受信機器までの配線には、さまざまな機器が接続されております。前述のようにこれらの機器や配線のトラブルで、テレビに届く電波レベルが低下することもございます。
戸建て住宅に地デジ、BS/CS双方のアンテナが設置されている場合を例に挙げると、まず双方のアンテナのケーブルを「混合器」に接続して一本にまとめ、配線をシンプルにしてアンテナ工事のコストやトラブルの危険性を低くします。
次にアンテナの真下や天井裏などに、テレビ電波を必要なレベルまで増幅する「ブースター」を設置します。現在では、地デジとBS/CSアンテナの双方を取り付ける場合には、このブースターと前述の混合器が一体化した「UHF/BSCS混合ブースター」を使用することが多くなります。
その次に配置されるのが「分配器」になります。分配器とはアンテナ側から延びる一本のケーブルを入力端子に接続し、複数の出力端子からタコ足状に伸びる複数の配線へとテレビ電波を分配し、住宅内の各部屋に送信する装置です。
この分配器から各部屋のアンテナコンセントにケーブルを伸ばし、室内のテレビなどに電波を送ります。また混合器でケーブルを一本にまとめている場合は、アンテナコンセントかテレビなどの機器の前に「分波器」を設置して、再度、地デジと衛星放送の電波を二本のケーブルに分離し、テレビ側のそれぞれのチューナー端子に接続します。
ただテレビアンテナで受信したテレビ電波は、これらアンテナ機器やその接続部を通るごとに徐々に減衰してゆきます。またアンテナからテレビ機器までの配線の距離が長くなるほど、やはり電波の減衰が発生します。
このアンテナ配線の中で、テレビ側でのアンテナレベルが弱まる原因となりやすい機器のひとつが、ブースターです。
ブースターは前述の通り、アンテナが受信したテレビ電波を必要なレベルまで増幅する装置です。主に中電界地域から弱電界地域など地デジ電波が弱いエリアで、電波レベルを補完するための機器ですが、現在では多くの場合、戸建て住宅内に複数のテレビなどが設置されるため、実質的に設置が必須となっております。
またブースターで増幅された電波は、分配器によって各部屋のアンテナコンセントへと分配されますが、このとき個々の分配先では、例えば4分配器であれば、ブースターからの電波は、分配先でそれぞれ4分の1など、電波レベルが分配数で割られるように減少します。
そのためブースター側で、現場で受信できる電波レベルと分配器で分配する数。また電波レベルが過度に強くならず、各部屋に十分なレベルの電波が届くよう、計算して増幅レベルを調整することになります。
ただブースターの注意点としては、まず電源を供給する必要があること。そして通電し続ける機器であるため、設置からの寿命が10年程度となる点がございます。そのため老朽化や電源トラブルなどでブースターの性能が低下、もしくは機能が停止する。また周辺環境の変化などで受信できるテレビ電波レベルが悪化し、ブースターの増幅レベルでは不足するなどの事態により、テレビ側のアンテナレベルが低下することも考えられます。
このような場合には、電波レベルの低下であれば、ブースターの増幅レベルを高める。ブースター本体のトラブルであれば。本体の交換や修理などの対応が必要となります。
ブースターを運用する上での注意点としては、ブースターは電波レベルのみを増幅して、電波の質を高めることはできないという点がございます。ブースターに届く電波にノイズ(乱れ)が混じっている場合、ノイズも増幅してしまい、テレビ画面の乱れにもつながります。そのためブースターはアンテナの付近など、できるだけノイズが入りにくい位置に設置する必要がございます。
またブースターの複数設置もおすすめできません。複数台のブースターを介するなどで電波を増幅しすぎると、電波にひずみが生じて質が低下する場合がございます。そのためブースターで電波の増幅レベルを設定する際には、最小の増幅レベルから徐々に調節して、必要最小限のレベルを選ぶ必要がございます。ブースターを使用しても一部の部屋などで電波レベルの不足が生じる場合には、必要な部屋に、ブースターの性能を補完する役割の、小型の「ラインブースター」を設置することで対応します。
他にもブースター、分配器には、地デジ用であればUHF(地デジ電波である極超短波)対応。衛星放送も視聴する場合にはBS/CS対応。さらに「新4K8K衛星放送」を視聴する場合は、3224MHz(4K8K)対応などの機種があり、ご自宅で設置するアンテナに合わせた機器を使用する必要がございます。
各種放送用のアンテナを設置しても、ブースターなどの機器が対応していないと、対応しないテレビ電波のアンテナレベルが低くなるケースが考えられます。例えば地デジアンテナのみの住宅にBS/CSアンテナを追加する、2K対応BS/CSアンテナを4K8K対応型に交換するなどの場合には、ブースター、分配器なども対応できる機種に交換する必要が出てまいりますので、ご注意ください。
各機器の詳細や交換方法に関しては、以下のコラム情報もご参照ください。
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各電界地域に適したアンテナ・まとめ
基本的に現在の日本国内では一部の地デジ難受信地域を除いて、大半の地域で地デジ、BS/CSアンテナの設置により、双方のテレビ放送を受信できます。しかし特に地デジアンテナの場合、使用できるモデルや設置位置などは、現場の電波状態に大きく左右される他。地域の気候や周辺環境の影響も大きくなります。
また現場の受信環境をはじめとする諸条件によっては、ケーブルテレビ、光テレビをご利用される方法も、月額料金などは必要となる反面、アンテナ設置が必要となくなり、アンテナ設置に関する諸問題が解消されるため、選択肢のひとつといえます。
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