地デジアンテナとBS/CSアンテナをセットで設置する工事とは? 地デジ用、衛星放送用テレビアンテナの種類とその違いを解説
一般的な戸建て住宅において、地上デジタル放送と、BS放送、CS放送や4K8K放送など衛星放送の双方をテレビで視聴するため、地デジアンテナとBS/CSアンテナをセットで取り付ける場合のさまざまな設置工法や、地デジ用、衛星放送用でそれぞれ使用できるテレビアンテナの種類について解説する記事です。
2023年(令和5年)現在、一般のご家庭で視聴できるテレビ放送といえば、ほぼすべての世帯に普及している地上デジタル放送(地デジ)と、現在では普及率か7割近いと言われる、いわゆるBS放送、CS放送の衛星放送、二種類がございます。
それぞれの放送は、電波の種類も送信方法も異なるため、使用されるアンテナも地デジアンテナ、BS/CSアンテナで別種類となりますが、どちらのアンテナもご家庭に設置することで、双方の放送をご視聴いただけます。
現在では地デジアンテナはほとんどの戸建住宅に設置されており、現在は地デジアンテナのみの世帯でも、BS/CSアンテナを追加設置されることで衛星放送もご視聴いただけます。またご新居を建てられた際や、既存住宅で古くなったアンテナを交換される際に、地デジとBS/CSアンテナのセット設置を選ばれるケースも多くなっております。
地デジとBS/CSアンテナのセット設置は、最初から双方のアンテナを設置する前提で、受信しやすく風雨などの影響を避けやすく、住宅の外観性にも配慮できるアンテナ設置を実現できる他、住宅内のアンテナケーブル配線についても、シンプルで整理された配線を行うことにより、トラブルなどのリスクを軽減することができます。
当コラムでは、2023年(令和5年)度の最新データに基づき、地デジ、BS/CSアンテナをセットで設置される場合に利用できるアンテナモデルから、セット設置の具体的な工法などをご説明してまいります。
地デジ放送、衛星放送の基礎知識
適切なテレビアンテナの設置方法についてご理解いただくため、まずは地デジ放送、衛星放送の基礎知識、および各アンテナの種類についてご説明いたします。まずは地デジ、衛星放送についての解説になります。
地デジ放送の基礎知識
地デジ放送を受信する仕組み
地デジ放送(地上デジタルテレビ放送)は、地上波放送とも呼ばれるものです。
日本の地デジ放送は、かつての地上波テレビ放送であったアナログテレビ放送と入れ替わる形で、2003年(平成15年)12月1日にスタートし、およそ7年半、デジタルとアナログが並行して放送される移行期間を経て、2011年(平成23年)7月24日正午にアナログ放送が停波したことで、完全移行となったものです。
現在の地デジ放送は、テレビ番組を制作、放送している放送局の放送電波を、日本国内の各地に設置されている中継局(電波塔)を経由して、各中継局の周辺地域にある戸建て住宅などの建築物に地デジ電波を送信する形式のテレビ放送です。
個々の住宅などで地デジ放送を受信、視聴するためには、住宅などに地デジアンテナを設置して、付近の中継局から送信される地デジ電波を受信し、その電波信号をケーブルでテレビなどの受信機器に送信、内装される地デジチューナーでテレビ映像用の信号に変換し、テレビ画面に地デジ放送を映し出します。
なお地デジ電波やその特性の詳細については、以下の各コラム記事でもご説明しております。
地上デジタル放送の「地デジ電波」基礎知識
地デジ電波の強さと品質を示す「dB」「MER」「BER」とは何か?
地デジ受信に重要な「ハイトパターン」とは? 地デジアンテナは高いところに設置すべきとは限らない?
地デジ電波の特徴
現在の地デジ放送では、「UHF(極超短波)」帯のうち、470MHz(メガヘルツ)から710MHzまでの周波数帯を使用しております。
その波長の長さはおよそ40センチから60センチ程度であり、周波数帯によっても到達距離は異なりますが、UHF帯に限らず電波は基本的に、送信値より距離が遠くなるほど電波が弱くなってゆきます。
また中継局は「電波塔」とも呼ばれる通り、主に高い鉄塔のようなテレビ塔から地デジ電波を発信しているため、中継局と住宅との間に。高層建築物や山地などがあると地デジ電波が遮られてしまい、その向こう側にある住宅などでは、受信できる地デジ電波が弱まります。
アンテナで受信できる電波強度(電波レベル)が弱いと、地デジ放送が映らない、映像が乱れるなどの視聴トラブルも発生します。
地デジ放送の電波レベルが強い地域、弱い地域
日本国内の各エリアで受信できる地デジ電波の強弱は、中継局からの距離や地形などの影響により変わってまいります。
おおむね、受信できる地デジ電波が強い地域から弱い地域までの順に、地域を区分けして「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」そして「難視聴地域」と呼ばれております。
この電界地域は、学術的な定義などではなく、テレビアンテナ業界などで使用されるものであるため、正式な基準はございません。
しかし電波レベルを示す「㏈(デシベル)」での一般的な基準としては、そのエリアで受信できる地デジ電波レベルが「80㏈」を超える地域は強電界地域。「80㏈」から「60㏈」の範疇である地域は中電界地域。「60㏈」以下の地域が弱電界地域とされております。
ただこの電波レベルは、それぞれの電界地域内でも場所によって違いがある他、例えば強電界地域であっても、付近の高層建築物で地デジ電波が遮られる、また窪地であるなど地形の関係により、局地的に80㏈以下になるなど、必ずしもその受信レベルが補償されないケースもあるためご注意ください。さらに地デジの電波レベルは、一年を通じて、季節による気候の近いなどで約「6㏈」前後の変動が出る他、豪雨や降雪などの悪天候で通常より低くなることもございます。
特定のエリアの電界地域を確認するには、一般社団法人「放送サービス高度化推進協会」の公式サイト内で、無料で確認できる「放送エリアの目安」ページを利用するのが便利です。このサイトでは日本国内にある中継局の位置、およびその中継局の強電界地域にあたるエリアを、地図上で確認することができます。
ただ前述した通り、各電界地域はおおまかな目安にすぎず、個々の現場では集権環境などにより、受信できる地デジ電波レベルが変化します。そのため、戸建住宅で実際に地デジアンテナを設置するにあたっては、アンテナ工事の専門業者に依頼し、専用の電波測定器(アンテナレベルチェッカー)を使用して、住宅の各場所での地デジ電波レベルを測定することが確実と言えます。
なお各電界地域についての詳細は、以下のコラムにてご説明しております。
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは
衛星放送の基礎知識
現在の日本における衛星放送には「BS放送」と「CS放送」の2種類が存在します。そして2018年(平成30年)12月1日には「新4K8K衛星放送」もスタートしています。
衛星放送を受信する仕組み
衛星放送は、地球上から約36,000キロの上空にあたる宇宙空間、周回軌道上に位置して、地球の自転に合わせて周回するため、地上から見れば常に空の一点に静止しているように見える「静止衛星」から、放送電波を送信する形式のテレビ放送です。
地上側では、各住宅などで、静止衛星の方向に向けたBS/CSアンテナを設置し、衛星からの放送電波を受信。地デジ放送と同じく、ケーブルで屋内のテレビ機器などに送信して、機器のBS/CSチューナーに接続することで、電波信号が映像信号に変換され、衛星テレビ放送が視聴できるという仕組みです。
衛星放送については、以下のコラム記事でも詳細を解説しております。
衛星放送(BS放送・CS放送)の「テレビ電波」基礎知識
BS放送とは?
日本の衛星放送のうち「BS放送」とは、東経110度に位置する「放送衛星」から電波を送信する衛星放送です。
現在はBS放送もデジタル化されているため、BSデジタル放送とも呼ばれます。BS放送には地上波と同じNHK、広域民放のチャンネルがあり、これらは(NHK受信料を除き)、アンテナを設置するだけで基本的に無料で視聴できます。その他にも「WOWOW」「スターチャンネル」など、月額契約制の有料チャンネルも存在します。
CS放送とは?
CS放送は、同じ人工衛星でも「通信衛星」を用いた衛星放送です。こちらもデジタル化によりCSデジタル放送とも呼ばれます。
CS放送の主な通信衛星は、放送衛星と同じ東経110度に位置しているため、一基のBS/110度CSアンテナ設置で双方の放送を視聴できます。他に東経124度、128度の軌道上に位置する放送衛星も使用されており、それぞれこのため「BS/110度CS」「124度/128度CS」と表記されることもございます。110度CSデジタル放送は「スカパー!」、124度128度CSデジタル放送は「スカパー!プレミアム」のサービス名で知られています。
なお124度/128度CS放送を視聴するためには、一般的なBS/CSアンテナとは別に、専用のパラボラアンテナ、またはすべての衛星からの電波を受信できるマルチアンテナが必要となります。
新4K8K衛星放送とは?
「新4K8K衛星放送」は2018年にスタートした衛星放送の一種ですが、BS放送、CS放送と別個のものではなく、従来はフルハイビジョン(2K、FHD)放送であったBS、CSのデジタル放送に、4K、8K対応のチャンネルが追加されたものです。
従来の2K放送に比べ、4K放送は4倍の画素数、8Kは16倍の画素数になる他、色彩や色調の表現、動画のなめらかさ、音声なども格段に向上しており、従来よりもさらに臨場感あふれるリアルな映像を楽しめる放送になります。
ただ新4K8K衛星放送の導入に当たり、従来の衛星放送の電波「右旋円偏波」では、使用できる周波数帯が不足したため、一部のチャンネルを除いて、4K8K放送の多くでは、新しく「左旋円偏波」が採用されました。
そのため右旋の電波を使用するBSのNHK、広域民放の4Kチャンネルを除き、すべての新4K8K衛星放送のチャンネルを視聴するためには、従来型の2K対応BS/CSアンテナから、より周波数の高い左旋の電波を受信できる4K8K対応型のBS/CSアンテナが必要となる他、ブースター、分配器なども、左旋電波に対応する「3442MHz(4K8K)対応型」が必要となります。
新4K8K衛星放送に関しては、以下の各コラム記事でも詳しく解説しております。
新4K8K衛星放送とは? 4K、8Kテレビの購入後に必要なアンテナ工事と費用の相場、おすすめ業者の選び方まで徹底解説!
「新4K8K衛星放送」ご視聴に必要な機器・完全チェック解説! テレビで全4K8Kチャンネルを見るための機材とは?
「新4K8K放送」を視聴するためのアンテナ工事、配線について徹底解説!
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衛星放送の電波の特徴
衛星放送では宇宙空間の人工衛星からテレビ電波を送信しているため、直進性の高い高周波数帯の電波を使用しております。具体的にはマイクロ波の一種、SHF(センチメートル)波のうち、12GHz(ギガヘルツ)前後(12GHz帯)の電波であり、その波長の長さは25ミリ前後と非常に短くなります。
周波数の高い(波長の短い)電波は光に近い性質となり、なり、直進性が高くなるため、衛星放送の電波には適しているのです。一方で障害物に遮断されやすくなる弱点もございます。
衛星放送用の人工衛星は赤道軌道上の一点から日本国内に電波を送信しているため、人工衛星からの距離がやや遠くなる日本国内の北部や南端部、離島部などでは、電波レベルがやや低くなります。
また衛星放送の電波は、波長の大きさが、大きめの雨粒や雪に近くなるため、地上で豪雨や降雪があると、電波の吸収や乱反射により、電波状態が非常に低下し、アンテナによる受信が難しくなることもございます、これを衛星放送の「降雨減退」「降雪減退」と呼びます。これらの減衰は天候の回復により解消されます。
降雨減衰、降雪減衰とその対策については、以下のコラム記事にも解説がございます。
雨や雪が降るとBS、CSの衛星放送が映らなくなる原因と衛星放送用テレビアンテナを調整して映るようにする対処方法とは?
衛星放送を受信するBS/CSアンテナ
衛星放送を受信するアンテナは、電波を集め、中央部に反射させるお皿のようなディッシュ部と、アームでその中央部に固定された、電波を集めるコンバーター部から成り立っている、BS/CSアンテナです。
今日の主要なBS/CSアンテナは、BS放送及び110度CS放送を受信するためのものです。また前述のように、新4K8K衛星放送を受信するためには、それ以前の2K対応BS/CSアンテナではなく、4K8K対応のアンテナが必要になる他、124度/128度CS放送の受信にも別個の対応アンテナが必要となります。
また衛星放送では、人工衛星から送られる直進性の高い高周波数の電波を、ケーブルでテレビなど受信機器で送信できるよう、アンテナのコンバーター部で適切な周波数に変換しているため、電源が必要になります。BS/CSアンテナの電源は、ブースター、またはテレビなど機器の端子部から供給されています。
BS/CSアンテナは、人工衛星から直進する電波を受け止めるため、人工衛星が位置する東経110度の方向へとディッシュを正確に向ける必要があり、この角度がミリ単位でズレただけでも、受信感度の大きな低下が起こりえます。
またアンテナを向けた方向に、衛星からの電波を遮る高層建築や山地、樹木などの障害物があると、電波が遮断されてやはり受信が困難となります。ちなみに障害物については、アンテナの位置からの障害物の高さに比して、障害物とアンテナとの距離が1.5倍以上あれば影響されなくなります。例えばアンテナより10メートル高い障害物がある場合、障害物とアンテナとの間が15メートル以上、離れていれば障害物による受信障害は起こらなくなります。
BS/CSアンテナは基本的な構造は、同じ大きさであればほぼ同一になるため、メーカー、モデルでの受信性能の差はほとんどございません。
上記の点についての詳細は、以下の各コラム記事でも詳しくご説明しております。
衛星放送用バラボラアンテナ・BS/CSアンテナの種類と選び方とは? 地デジテレビアンテナとの違い、家屋への設置工事を解説
衛星放送用BS/CSアンテナの種類と性能とは? 地デジテレビアンテナとの違い、設置工事の方法から機種の選び方まで解説!
地デジ、BS/CS用アンテナの主なモデル
ここでは地デジ、衛星放送用アンテナの各モデルについてご説明してまいります。
なお衛星放送と地デジでは電波の方向や周波数がまったく異なるため、地デジ、衛星放送用のアンテナはそれぞれの放送専用となり、
地デジアンテナで衛星放送を受信すること、またその逆はできなくなっております。
地デジ放送用のアンテナには、現在「八木式アンテナ」「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」の3種類が存在します。その他に「室内アンテナ」もございます。
地デジアンテナの種類
1:八木式アンテナ
八木式アンテナは、一般住宅の屋根の上などでよく見かける、金属の矢印のような骨組みに短い横棒がいくつもついた、魚の骨のような形状の地デジアンテナです。アナログ放送時代から使われている古典的なテレビアンテナになります。
屋根の上に設置されて障害物に影響されにくいことや、後述する高性能モデルも存在することから、現在の地デジアンテナではもっとも受信性能が高いモデルになります。設置位置は主に屋根の上ですが、ベランダの内外や、壁面に設置具を固定することでの設置もできます。
八木式アンテナのバリエーション
八木式アンテナの短い横棒の部分は「素子(エレメント)」と呼ばれ、この数が多いほど地デジ電波の受信性能が高まります。
八木式アンテナは素子数の数が異なる幅広いモデルがあり、高性能モデルであれば受信性能も高まります。
戸建て住宅向け八木式アンテナの主な素子数は、強電界地域向けの4素子から8素子。中電界から弱電界地域向けの14素子から20素子などですが、X字型の金具の先端に複数の素子を設置した高性能機種「パラスタックアンテナ」では、個々の素子の性能が向上し、27素子、30素子などの高性能化も可能である他、素子数が少なくても受信性能を維持できるため、アンテナサイズを小型化もできます。ただパラスタックアンテナは、指向性が非常に高くなるというデメリットもございます。
また台風や降雪などが多い地域向けに、素材の改良による軽量化や、表面の防水加工、素子を短くするなどの工夫を施した、高耐風や防雪モデルなども存在します。
八木式アンテナのメリット/デメリット
八木式アンテナのメリットは、前述のように設置位置を高く取れて、高性能モデルも存在するため、受信性能が高くなる点です。弱電界地域などでは、屋根の上に高性能の八木式アンテナを設置する以外の選択肢がない場合もございます。
また古くから使われる構造のシンプルなアンテナであるため、現在では本体価格ももっとも低価格になっております。
デメリットは、地デジアンテナの中ではサイズが大きく重量もあり、外観も独特なことから、住宅のデザイン性や景観を乱し、地域によっては景観条例や高さ制限により、屋根の上に設置できない場合もある点。屋根の上に設置スペースが必要となり、太陽光パネルを設置している住宅では、設置場所が確保できない場合もある点。住宅密集地などでは、アンテナの一部が隣地にはみ出す「越境問題」などのトラブルが発生するケースもある点などが挙げられます。
さらにその形状と設置位置から、強風や降雪、海沿いの潮風、また鳥が留まる、フンをするといった鳥害など、自然環境の影響を受けやすく、経年劣化が進みやすい、アンテナ角度のズレなどが生じやすいことも弱点といえます。
八木式アンテナの寿命は一般に10年から15年程度ですが、環境が厳しいエリアではそれ以下になる場合もあり、老朽化した八木式アンテナは屋根の上で傾く、倒壊して落下するなどのリスクも生じてまいります。
2:デザインアンテナ
デザインアンテナは、アンテナ本体部を、長方形で薄型のケースに収めたような形状の地デジアンテナです。2009年(平成21年)頃に普及しはじめた、第二世代と言える地デジアンテナで、主に壁面やベランダなどに設置されます。また電波状態や住宅の建材などの条件が許せば、住宅の屋根裏、天井裏空間をはじめとする、屋内空間への設置も可能です。
総じて、目立たず外観性に優れる上、その形状から風雨などにも影響されにくい、メリットの多いアンテナ機種です。
デザインアンテナのバリエーション
現在ではデザインアンテナもさまざまなメーカーから販売されており、薄型を基本に、本体の形状、カラーバリエーションも豊富になっております。また強電界地域用のモデルとしては、室内用アンテナとしても使えるコンパクトサイズのモデルも登場しています。
またデザインアンテナは、広義にはデザイン性に優れたアンテナの総称としても使われ、八木式アンテナにカバーを装着したタイプ、後述するユニコーンアンテナなどもデザインアンテナに含まれることがございます。
受信性能は、八木式アンテナの素子数に対応する「素子数相当」で表され、強電界地域用モデルを除いた主なモデルは、20素子相当、26素子相当になります。
デザインアンテナのメリット/デメリット
デザインアンテナはそのデザイン性からメリットの多い地デジアンテナになります。まずコンパクトで外観性に優れ、カラーバリエーションも豊富なため、住宅の壁面に設置しても建物の外観や景観を乱しません。そのため越境問題なども起こりにくくなります。
そのコンパクトさや設置位置により、風雨などにも影響を受けにくくアンテナトラブルが発生しにくい上、耐用年数も長くなります。
現場の電波状態がよく、住宅の建材や屋根材が電波を通しやすい素材であれば、屋根裏、天井裏空間などへの設置で、風雨に影響されず、住宅の外観にも影響しない設置が可能です。なお八木式アンテナはサイズが大きく条件や作業が困難になる上、設置具などの必要からコストがデザインアンテナと変わらない。ユニコーンアンテナでは受信面積が狭いという理由から、屋根裏設置には適しません。
デメリットは、受信性能がやや低くなる点です。八木式アンテナに比べると設置位置が低く、素子数相当の上限も少ない上、同じ20素子(相当)のモデルでも、八木式アンテナは受信感度がやや高め、デザインアンテナはやや低めになり、弱電界地域などでは使用できないこともございます。デザインアンテナは基本的に、強電界地域から中電界地域での使用が推奨されます。
また外壁に設置する場合は、壁にビス穴を開ける必要がある。八木式アンテナより本体価格がやや高くなるのもデメリットと言えます。
3:ユニコーンアンテナ
ユニコーンアンテナは、2017年(平成29年)に、日本三大アンテナメーカーのひとつ「マスプロ電工」さんが発売した、地デジアンテナの第三世代にして、現在の最新機種になります。
マストの先にほぼ円筒形のアンテナ本体を取り付けた形状で、屋根の上、また専用の固定具で破風板(屋根の張り出し板)や壁面の高所などに設置でき、受信感度を確保できる他、スタイリッシュな外観性で風などにも影響されにくい、八木式アンテナとデザインアンテナのメリットを兼ね備えた地デジアンテナだといえます。
・ユニコーンアンテナのバリエーション。
ユニコーンアンテナはマスプロ電工さんの製品で、現在は「UC2N」の型番名で販売されております。カラーバリエーションは、光が反射しにくいウォームホワイト(WW)とブロンズブラック(BB)の二種類です。素子数は20素子相当になります。
ユニコーンアンテナのメリット/デメリット
ユニコーンアンテナは、前述のように受信感度は20素子相当ながら、ポールを立てたような形状で、屋根の上など高所に設置できることから一定の受信感度を確保でき、デザインアンテナが使用できない現場でも設置できることがございます。
デザイン性が高く落ち着いた色合いから、住宅の外観や景観を乱さず、越境問題も起こりにくい。またその形状から風雨などを受け流しやすく、経年劣化やトラブルの発生を抑えることができる。その形状から屋根の上に設置しても太陽光パネルの邪魔にならないなどのメリットもございます。
デメリットは、素子数が20素子相当であり、八木式アンテナの高性能機種には受信性能が及ばず、また同じ20素子の八木式アンテナよりもやや受信性能が低くなるため、弱電界地域などでは使用できないこともある。最新モデルであるため現在の地デジアンテナではもっとも高価格になる。和風建築などにはマッチしないこともあるなどの点です。
各地デジアンテナの詳細
地デジアンテナの性能やそれぞれのモデルの詳細は、以下の各コラム記事でも解説しております。
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衛星放送用BS/CSアンテナの種類
前述のように衛星放送用のBS/CSアンテナは、皿のような形のディッシュ部と、アームによって固定されたコンバーターから成り立つパラボラアンテナです。そのため基本的な構造や受信性能は、サイズが同じであれば、ほぼ同様になります。
・BS/CSアンテナのバリエーション
BS/CSアンテナは基本的にパラボラアンテナの一種類のみで、主要モデルはBS/110度CS対応機種になります。
ただBS/110度CSアンテナにも、前述した2K対応型の旧式モデルと、新4K8K衛星放送に対応する4K8K対応型モデルがある他、124度/128度CS放送用の専用モデル、また110度BS/CSを含めすべての衛星放送が受信できるマルチアンテナがございます。
また基本は同じBS/110度CSアンテナであっても、ディッシュサイズの違い、カラーバリエーション、高耐風モデルなどのバリエーションがございます。
一般家庭向けのBS/CSアンテナは45型(ディッシュ直径が45センチ)が中心ですが、50型、60型、75型などのモデルもあり、ディッシュが大きいほど受信性能が高まるため、日本北部や南端、離島部など衛星電波が弱いエリア、また降雨(降雪)減衰の対策となります。なお90型以上はマンションなど集合住宅用の、共同受信用アンテナになります。
またBS/CSアンテナの本体色は、熱を反射して太陽光の影響を避けられる白色が中心ですが、紫外線に強い塗料で外観性を重視した黒色などのモデル。ディッシュに風を通す無数のパンチングホールの設置や各部の強化で、高い耐風性を持たせたモデルなども存在します。
・BS/CSアンテナの特性。
BS/CSアンテナの特性としては、前述のように人工衛星の方向へ正確に向ける必要があり、ミリ単位でも角度がずれると受信性能が低下する。人工衛星の方向に障害物などがある、また豪雨や降雪でも受信不良が発生するなどになります、
他にもコンバーター部に電源の供給が必要。ディッシュ部を持つ形状により、風雨などの影響で角度のズレをはじめとするトラブルが生じやすいという点も挙げられます。
そのため設置位置は、将来にわたり障害物が発生しない位置を選び、角度のズレなどを避けるためしっかりした設置が必要です。
ディッシュが大型のBS/CSアンテナは、衛星放送の電波が弱いエリアでも受信が安定する、降雨、降雪の減衰を避けられるというメリットがありますが、その大きさにより風雨に影響されやすくなるデメリットもございます。またアンテナの重量も増すため、戸建て住宅へ設置する場合には、設置場所の耐荷重もよく検討する必要がございます。
また高耐風モデルは通常モデルよりやや高価になりますが、強風などによるトラブル対策には高い効果が得られます。
一般的なBS/CSアンテナの耐風水準は「風速20m/s(秒速20メートル)」で、大型台風などには耐えられないこともございます。「高耐風モデル」のおすすめ製品である、日本三大アンテナメーカーのひとつ「DXアンテナ」さんの「BC453SG」は、ディッシュ部のパンチングホールや取り付け部の強化により、受信可能風速は「50m/s(秒速50メートル)、耐破壊風速では「70m/s」の性能を誇ります。
BS/CSアンテナの詳細
BS/CSアンテナに関しては、以下の各コラム記事でも詳しく解説しております。
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地デジとBS/CSアンテナのセット設置について
戸建て住宅などにテレビアンテナを設置する場合は、適切な位置に設置した地デジ、衛星放送のアンテナ本体から、アンテナケーブルを住宅内に通して、住宅内の主要な各部屋にあるアンテナコンセントへとケーブルを配分。アンテナコンセントからケーブルでテレビ、レコーダーなど受信機器に接続するという形になります。またその配線の間で、さまざまな機器を通すことになります。
特に戸建て住宅で、地デジアンテナとBS/CSアンテナの両方を設置する場合は、設置や配線をシンプルにしてメンテナンス性を高める。また双方のアンテナが安定した設置で長寿命を実現するための工夫として、できるだけ同じ位置に設置することを推奨されます。
以下、戸建て住宅に地デジ、BS/CSアンテナの双方を設置する場合の主な配線、および必要な機器について解説します。
混合器
地デジアンテナ、BS/CSアンテナを設置した場合、それぞれの電波は別々のケーブルでアンテナから送信されることになります。このケーブルをそのまま屋内に引き込むと、必要なケーブルの長さや機器の数が多くなり、コストがかさんで配線も複雑になります。
そのためアンテナの近くで「混合器」という装置を設置し、地デジ、衛星放送の電波を一本のケーブルにまとめ、以下の配線をシンプルにします。双方の電波は周波数が異なるため、どちらも信号の品質や画質は低下しません。ただ近年では後述するブースターに混合器の性能を備えたモデルが多く、混合器を単体で設置することは少なくなっております。
ブースター
アンテナが受信した地デジ、BS/CSのテレビ電波を増幅する装置です、基本的に地デジの弱電界地域や衛星放送の電波が弱いエリアで使用されますが、現在では戸建て住宅内に多くのテレビが設置されるため、台数分の電波レベルを確保すべく設置はほぼ必須になっています。
通常、ブースターを設置する場合は、電波の増幅性能が高い屋外型が選ばれます。電波を増幅するため電源が必要となり、設置位置はノイズが混入しにくいアンテナの付近、真下や屋根裏空間などが選ばれます。また対応する電波ではUHF(地デジ)対応型、地デジと衛星放送に対応し混合器の機能ももつUHF・BSCS混合型、さらに4K8K対応型などもございます。
分配器
分配器はブースターの次に設置される機器で、ブースターからの一本の配線を、複数の配線へと分配する装置です。
分配数は2分配から8分配(7分配除く)までがあり、通常は必要な分配数に予備の一端子を足したモデルが選ばれます。なお複数のケーブルに分配された電波は、個々の分配先では、分配数に合わせて、4分配であれば4分の1などに電波レベルが低下します。そのため分配器の前にブースターで電波を必要レベルまで増幅する必要が出てまいります。
分波器
分配器で分配されたケーブル(電波)は、各部屋のアンテナコンセントに接続され、そこからテレビなどの機器に接続されます。
地デジとBS/CSの電波を混合器で混合している場合は、アンテナコンセントからのケーブルに、分波器を設置して、あらためて地デジとBS/CSの電波を二本のケーブルに分離し、テレビ側の地デジ、衛星放送のチューナーに接続します。これにより地デジと衛星放送のどちらも視聴できるようになります。
各機器が対応するテレビ電波について
ブースターや分配器、混合器・分波器、またケーブルそのものには、機器によって対応できる電波に違いがございます。これは地デジ放送、BS/CS放送、4K8K放送になるほど電波が高周波数になり、ケーブルや機器を通した際の減衰量が大きくなるためです。
対応できるテレビ電波による各機器のモデルは、主に地デジのみのUHF用。さらにBS/CSや4K8K放送に対応する、BSCS対応、3442MHz(4K8K)対応型になります。各機器で対応できる電波の種類が多いほど、価格がやや高価になってまいりますが、地デジとBS/CS放送、双方のアンテナを設置する場合は、4K8K放送を視聴するか否かを問わず、将来性も踏まえて4K8K対応型の設置をおすすめいたします。
またアンテナケーブルも4K8Kの電波を減衰させず送信するためには、一定の太さと品質を持つ4K8K対応ケーブルが必要なため、ご自宅の配線が古い場合は交換が必要となることもございます。
各アンテナ機器についての詳細
上記の機器については、詳しくは以下のコラム記事でもご説明しております。
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地デジアンテナとBS/CSアンテナのセット設置について
以下、地デジアンテナの各機種と、BS/CSアンテナを同時設置する場合の実例について解説してまいります。
八木式アンテナとBS/CSアンテナ
八木式アンテナを屋根の上に設置する場合は、まず屋根の上に「屋根馬」という4本脚型の台座を設置し、そこにマスト(支柱、ポール)を立てて固定します。マストの先端に八木式アンテナを設置し、その下にBS/CSアンテナも固定できます。その後、屋根の四方からステンレスワイヤーなどの支線を張り巡らせて、屋根馬やアンテナを固定します。
また水平に突き出されたアーム部にマストを固定する、サイドベースという設置具を用いることで、住宅の壁面やベランダに八木式アンテナBS/CSアンテナを一緒に設置できます。
この機種によるセット設置のメリットは、アンテナの施工や配線がシンプルになる上、特に屋根の上ではどちらのアンテナも、障害物などの影響を受けにくくなり、正確な角度調整が行いやすいため受信性能が高くなる。また双方のアンテナを一度に設置できるため工事の手間がかからず、費用が安くなる場合もある点等です。
デメリットは、個々のアンテナの形状から、全体的に風の影響を受けやすくなるため、しっかりとした固定が必要となる。また全体の重量も増加するため、ベランダの柵など耐荷重が低い位置には設置できない場合もあることです。
デザインアンテナとBS/CSアンテナ
デザインアンテナとBS/CSアンテナを同時設置する場合は、デザインアンテナは壁面設置が主になるため、それぞれの外観性や、電波を受信できる位置などから、近い位置に設置できないケースもあるため注意が必要です。基本的にBS/CSアンテナは、アンテナケーブルをまとめやすくするため、デザインアンテナが設置された場所のできるだけ近くに設置されることになります。
この機種でのセット設置のメリットは、ベランダ内外に設置する場合などは、双方のアンテナを近い場所に設置しやすく、外観性に配慮できる上、風雨などにも影響されにくく、配線などもまとめやすくなる点です。
デメリットとしては、デザインアンテナを八木式アンテナと同じく、マストに設置してBS/CSアンテナとまとめる場合では、風に影響されやすくなるなど、デザインアンテナのメリットがやや低くなる点になります。
また前述のように、デザインアンテナを屋根裏空間に設置することも可能ですが、この場合、BS/CSアンテナは屋外に設置する必要があるため、BS/CSアンテナに関しては屋根裏設置のメリットが得られない、配線がやや面倒になるなどの問題も生じます。
デザインアンテナの屋根裏設置に関しては、以下のコラム記事もご参照ください。
徹底解説!屋根裏や天井裏にテレビアンテナは設置できる?
ユニコーンアンテナとBS/CSアンテナ
ユニコーンアンテナでは、アンテナ本体部を支えるポールの部分にBS/CSアンテナも設置できるため、八木式アンテナと同じくシンプルで扱いやすいアンテナ設置が可能となります。
主なメリットも、障害物を避けてBS/CSアンテナの調整も行いやすく、受信性能が高まる。一度のアンテナ設置で手間やコストが軽減できるなど、八木式アンテナの場合と同様になります。
デメリットとしては、BS/CSアンテナと合わせて設置するため、デザイン性が高い、風雨に強い、太陽光パネルに影響しにくいなどの、ユニコーンアンテナのメリットがやや低下してしまう。また重量もやや増えるため、破風板など耐荷重の低い位置には設置できない場合もあるなどの点が挙げられます。
まとめ
新築住宅に新しくテレビアンテナを設置される、老朽化した既存の地デジアンテナを交換されるなどの場合は、思い切って地デジとBS/CSアンテナのセット設置をおすすめいたします。
あらかじめ地デジとBS/CSアンテナをセットで設置しておくことで、のちに追加設置する場合にくらべて、最適な設置や配線を選べることに加え、4K8K対応機器への交換など、余計なコストも不要となります。
当あさひアンテナでは、地デジの八木式アンテナ(高性能タイプ含む)、デザインアンテナ(小型モデル含む)、ユニコーンアンテナや、大型、高耐風モデルを含むBS/CSアンテナ設置工事について、国内一流メーカーの最新アンテナ本体価格を含む工事費でご提供しております。
基本アンテナ設置工事費は、各税込み価格で、標準モデルの八木式アンテナでは15,000円、デザインアンテナは20,000円、BS/CSアンテナは15,000円からになっております。
実際のアンテナ設置に当たっては、知識と経験、高い技術を誇る弊社の職人が、現場の電波状態を勘案し、可能な限りお客様のご要望を反映する、お得な工事をご提案いたします。また現地の電波調査、お見積もりも、出張料、キャンセル料など含む完全無料で実施いたします。さらに工事後には、業界最長クラスの「10年保証」をご用意し、万が一のトラブルにも末永くご対応しております。
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