地デジアンテナや無線通信用アンテナの性能を示す利得、動作利得とは何か? 素子数との違いなど地デジアンテナ基礎知識も解説
地デジ用テレビアンテナやアマチュア無線用のアンテナで、電波の受信性能を示す利得(動作利得、ゲイン)についての基礎知識。同じく地デジ電波の受信性能を表す素子数との違い。地デジアンテナ製品や機種ごとの利得の違いなど、地デジアンテナ本体がもつ受信性能について詳しく解説します。
今日の地上波テレビ放送と言えば、地上デジタル放送、いわゆる地デジ放送です。地デジ放送では、アナログテレビ放送時代に比べるとより高周波数、すなわち波長の短い電波を使っているため、地デジアンテナの小型化も実現しております。
そのため、2023年(令和5年)現在の地デジアンテナには、アナログ放送時代から使用される「八木式アンテナ」も小型化や高性能化などが進んでいる他、ニュータイプのテレビアンテナとして「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」などが登場しております。
各機種のアンテナは、従来のテレビアンテナでは難しかった、住宅のデザインにマッチするデザイン性、風雨や雪などにも強い対候性なども向上しています。ただ地デジアンテナとしてもっとも重要となるのは、やはり「受信性能」だといえます。
いくらデザインや風雨などへの強さが優れていても、現場の電波環境に適さず十分な受信性能を確保できなければ意味はございません。そのため地デジアンテナの機種を選ぶ場合には、まず地デジアンテナの受信性能を示す各要素を理解する必要がございます。
そして地デジアンテナの受信性能を示す主な要素と言えば「素子数(素子数相当)」と「利得(動作利得、ゲイン)」になります。
このうち「素子数」は文字通り、地デジアンテナの内、電波を受信する部品である素子の数を示す、またはそれに換算して性能を示すもので、わかりやすい基準になります。一方、「動作利得」については、その概念や数値の意味、基準となる計算方法などがやや複雑で、ご理解いただくためには詳しい解説が必要となります。
そこで当コラムでは、説明がやや難しくなる、地デジアンテナの「動作利得」について、その概念や素子数、指向性などとの関係などを、一般の方にもわかりやすい範囲で詳しく解説。さらに2023年(令和5年)度の最新データに基づき、各地デジアンテナ機種の動作利得などの数値と、それらの機種に適した電波状態の現場もご説明してまいります。
なお当コラムは、同じく地デジアンテナの受信性能を決める要素で、動作利得にも関係の深い「素子」に関するコラム記事の姉妹記事に当たります。素子に関する基礎知識。各地デジアンテナ機種の素子数や、素子数に適した現場の電波状態などについては、以下の各コラムをご確認ください。
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地上波デジタル放送(地デジ)放送の概要
地デジアンテナの受信性能をご説明する前置きとして、まず地デジアンテナで受信する地デジ放送について簡単に解説いたします。
いわゆる「地デジ」とは「地上波デジタル放送」の愛称です。地デジ放送は2003年(平成15年)12月1日に放送をスタートし、2011年(平成23年)7月24日正午に、昭和期より続いていた従来のテレビ放送であったアナログテレビ放送が停波し、日本でただひとつの「地上波テレビ放送」となりました。
地上波放送とは、地上に設置された電波塔から、周辺地域に放送電波を送信する形式でテレビ、ラジオなどを送信する方法です。
現在の地デジでは、東京スカイツリーなど周辺一帯の都道府県をカバーする形の大規模送信所や、その他の地域を細かくカバーする大小の中継局と呼ばれる電波塔が日本各地に設置されており、国内でも人が居住している大半の地域で受信可能になっております。
地デジ放送の電波とは?
地デジ放送に使用されている電波は、UHF帯と呼ばれる極超短波の中でも、470MHz(メガヘルツ)から710MHzの周波数帯です。
かつてのアナログ放送は、主な放送であるNHK、広域民放では、VHF帯の超短波である30MHzから300MHzまでの周波数帯。そして一部の都府県などで個々に存在し、その都府県内を放送エリアとする独立放送局の地方チャンネル(東京都の東京MX、兵庫県のサンテレビなど)では、UHFでも300MHzから3,000MHz(3GHz(ギガヘルツ))の全周波数帯を使用していました。
地デジ放送では放送信号をデジタル化することにより、アナログ放送時代に比べて使用する周波数帯を大きく削減しました。
一方、アナログ放送時代の主な電波であったVHFに比べると、地デジ放送のUHF帯は周波数が高い(波長が短い)ため、送信距離が長くなると減衰(電波レベルの弱まり)も大きくなります。この電波の減衰しやすさについては、電波塔からの電波出力を高めることである程度、対応が可能です。
また電波は周波数が高いほど直進性も高くなるため、地デジ電波のUHF帯は、かつてのVHFのテレビ電波に比べると、ビルなどの高層建築物や山地などの障害物にぶつかった場合、向こう側に回り込む力が弱い。つまり障害物の陰にあたる場所では受信が困難になりやすいという特性がございます。
その他、地デジ電波の詳細については、以下のコラム記事にも解説がございますので、よろしければご確認ください。
地デジ電波の「電界地域」とは?
地デジ放送は前述の通り、日本国内の各地に設置された大小の電波塔から、周辺一帯に地デジ電波を送信することで、日本国内でもほとんどのエリアをカバーしています。ただ高層ビルなどの障害物に弱く、やや減衰しやすいといった地デジ電波(UHF波)の特性により、地デジ放送を視聴できるエリアでも、受信できる電波レベルには違いが出てまいります。
この日本国内でも、受信できる地デジ電波のレベルでおおまかなエリア分けを行ったものが強、中、弱の「電界地域」です。
電界地域はそのエリアに地デジ電波を送信する電波塔からの距離と、山地など地形の関係から決まり、一般的な基準では、電波レベルを表す「㏈(デシベル)」単位で、そのエリアで受信できる地デジ電波レベルが、
・80㏈以上:強電界地域(電波塔が視認できる近隣エリアで、地形による障害物が存在しない地域)」
・80㏈から60㏈:中電界地域(強電界地域の周辺で障害物などに影響されない地域)」
・60㏈以下:弱電界地域(中電界地域のさらに周辺にあたる地域)」
となります。ただこの電界地域に正式な定義はなく、慣習的に使用される基準であるため、異なる場合もございますのでご注意ください。
他にも日本国内の一部には、弱電界地域よりさらに電波塔から遠い地域や、離島部、山間部などで地デジ電波がほとんど受信できず、地デジ放送が視聴できない地域もいくつか存在します。このような地域は地デジの「難視聴地域」と呼ばれ、該当地域では主にケーブルテレビ(CATV)などのサービスを利用してテレビ放送を視聴しています。
また電界地域は地デジ受信レベル別の大まかな地域を示す目安にすぎず、それぞれの電界地域内であっても、基準の数値内での電波レベルの差が生じることはもちろん、近隣の高層建築物や地形などの影響により、局地的には受信できる地デジ電波レベルが、電界地域の下限より低くなることもございます。
そして地デジアンテナ設置に関しても、各電界地域に適したアンテナ機種や取り付けの工法がございます。特に弱電界地域など受信できる地デジ電波が弱いエリアでは、安定した地デジ受信のため、地デジアンテナ工事にさまざまな工夫が必要となってまいります。
なお地デジ電波や電界地域の詳しい解説は、以下の各コラム記事にもございます。よろしければご確認ください。
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは
徹底解説!強・中・弱の地デジ電界地域に適したテレビアンテナ工事の選び方、調べ方とは?
地デジアンテナ各種における「素子」の概要
上記のような性質を持つ地デジ電波を、安定して受信するためのテレビアンテナが、各種の地デジアンテナになります。
そして地デジアンテナの受信性能を示す主な指標が「素子(エレメント)」の数と、本コラムのテーマである「動作利得(利得)」です。
素子については、こちらの姉妹記事に詳しい解説がございますので、ここでは概要のみご説明いたします。
地デジアンテナの「素子」とは?
素子(そし)とは、テレビアンテナに限らず各種アンテナにおいて、電波を受信する部分のことです。
地デジアンテナで言えば、古典的なアンテナ機種である「八木式アンテナ」において、矢印型の骨組みに取り付けられている短い横棒のことです。この素子の数が多いほど、地デジアンテナの受信性能が高く、ノイズの影響も受けにくくなります。
八木式アンテナのような素子が外部から見えるアンテナは「素子アンテナ」といい、アンテナ性能は、例えば20個の素子を持つアンテナであれば「20素子」などの表記で表されます。また外部から素子が見えないデザインアンテナ、ユニコーンアンテナでは、受信性能を素子数に換算した「素子相当」という表記で受信性能を表します。
ちなみに素子アンテナである八木式アンテナは、そうでないアンテナ機種に比べると、例えば同じ20素子(相当)の範囲でも、やや高めの受信性能を発揮します。
地デジアンテナの素子に関しては、冒頭でご紹介した、当コラムの姉妹記事である三本のコラム記事でもご紹介しております。詳しくはそちらの記事もご確認ください。
地デジアンテナの「動作利得(利得)」とは?
そして上記の「素子数」と並んで、地デジアンテナの性能を決める重要な指標が「動作利得(利得)」です。一般的には利得(りとく)というと、ビジネスなどで得られる「利益」。または利益を得ることを示す言葉になりますが、地デジアンテナの場合はやや異なります。
地デジアンテナの動作利得とは、電気工学における「利得(gain)」とほぼ同じ意味になります。電気工学上の利得とは「電気回路(増幅機など)における電流、電圧などの入力と出力の比」を指します、
地デジアンテナの利得とは、素子数に応じてアンテナが受信できる電波のレベルに対して、アンテナから出力できる電波レベルを示します。
具体的には受信した地デジ電波に対し、出力できる効率の良さを示し、アンテナの前方(電波を受信できる方向)の受信感度を示す数値と言えます。地デジアンテナが動作(電波を受信)する際の利得であるため「動作利得」ともいい、英語の「gain」からそのまま「ゲイン」と呼ぶこともございます。
この動作利得は、電波の強度を示す「dB」で表記されます。ただ注意すべき点は、この㏈数は単純に出力できる電波レベルではなく「基準となるアンテナ」との出力レベルを、常用対数の計算で表したものになります。
この基準であるアンテナは、以下の二種類になります。
「アイソトロピックアンテナ」
アイソトロピックアンテナとは、実在するアンテナとの性能を比較するための、指向性のない理論上のアンテナです。
テレビアンテナに限らず、総合的なアンテナは電波を受信するだけでなく、放射する機能もございます。そしてさまざまなアンテナの基準となりうるアンテナの条件は「電波を全方向へと同じ強度で放射する」「周波数に依存しない」の二点です。
電波を全方向へ均等に放射するためには宙に浮いた球形である必要があり、周波数に依存しないためには、周波数に合わせたアンテナ本体の大きさ(長さ)を持たない点状である必要がございます。
つまり形を持たない点のようなアンテナということになり、もちろんこのようなアンテナは、現実には存在しません。ただ実在するアンテナとの性能の比較に便利であるため、存在するものと仮定して扱われるのです。
指向性とは、アンテナ本体の前方においてのみ、電波の受信や送信性能が高まる性質をいいます。「アイソトロピック」とは「等方性」という意味になり、つまりまったく指向性のないアンテナを示します、指向性のないアイソトロピックアンテナの電波放射性能(受信用アンテナであれば受信性能)は、点であるアンテナを中心に囲むボール状の形になります。
逆に指向性のある現実のアンテナの電波放射(受信)性能は、このボールの体積はそのまま、アイソトロピックアンテナの点を出発点に、ボールを圧迫して楕円状にし、特定の一方へ突出させた形になります。この突出の度合いが長いほど、アイソトロピックアンテナに比べて、特定方向のみで受信(送信)性能が高くなる、つまり指向性が高いことになります。
アイソトロピックアンテナを基準とした地デジアンテナの利得を「絶対利得」と呼び、スペック表などでは「アイソトロピック(isotropic)」の頭文字をとって「dBi」という単位で表します。
「ダイポールアンテナ」
ダイポールアンテナとは、ケーブルの先端に、日本の直線状の「導線(エレメント)」を左右対称に設置した実在するアンテナです。
通常は中心部から上下に二本、まったく同じ棒状の銅線が出ている形のアンテナになり、導線は素子と同じ役割を果たしています。
実在するアンテナとしてはもっともシンプルな構造であり、八木式アンテナの基本形とも言えます。このダイポールアンテナの送信(受信)性能を形状で表すと、縦にしたダイポールアンテナを中心にした、穴が小さいドーナツ状の広がりになります。
そして指向性のある地デジアンテナの受信性能は、一方をドーナツの中心(ダイポールアンテナ)に接して、指向性に応じてドーナツの形からはみ出す楕円形になります。ダイポールアンテナを基準とした利得は「相対利得」と呼ばれ、単位は「ダイポール(dipole)」の頭文字に由来する「dBd」か、または通常の「dB」で表されます。
いずれのアンテナが基準であっても、基準アンテナの受信(発信)性能の形と、地デジアンテナの受信性能の先端が一致している場合、つまり性能が同じであれば、動作利得は「0」となります。そして実際の動作利得は、基準アンテナの受信性能の形から、突出した部分によって測られます。
現実の地デジアンテナの指向性は、アンテナの形状などの工夫によって決まりますが、基準アンテナに比べると、一方向のみへの受信性能を高める形になります。いわばアンテナの全性能を一方向に集中する形で、その方向への受信性能を高めているため、地デジアンテナは指向性が高くなるほど、受信性能も高まるといえます。
そして例えば動作利得が「3db」と「6db」の地デジアンテナを比べた場合、数値が2倍のアンテナは、性能も2倍ということにはなりません。動作利得の㏈数は「常用対数」の計算式で割り出されます。具体例を挙げると、動作利得が「3dB」の地デジアンテナは、基準アンテナに比べた性能が約2倍。同じように「6dB」では約4倍。「20dB」では約100倍となります。
地デジアンテナの動作利得と指向性、素子数との関係
以上が、地デジアンテナの性能を示す「素子数」と「動作利得」の概要になります。
簡単に言えば、素子数は地デジアンテナ本体の受信性能を決めるもの。動作利得は、アンテナの受信性能を一方向に集中することで、受信性能を高めた数値を表したものといえるでしょうか。したがって地デジアンテナの元となる受信性能を決める素子数が多くなるほど、動作利得をより高めることも可能になります。
ただ。前述のように動作利得の高さは、アンテナの指向性と比例します。つまり動作利得(指向性)が高い地デジアンテナは、アンテナの正面を地デジ電波が届く方向へと正確に向けることで受信性能が高くなる分だけ、少しの角度がずれが生じても、受信性能が大きく低下してしまうことになってしまいます。
この地デジアンテナの指向性は「半値幅(はんちはば)」という数値で表示されます。半値幅とは、地デジアンテナを電波の方向へ向けて、もっとも高い受信性能を発揮する角度を基準にして、アンテナの角度を左右にずらし、受信性能が最大値から半減する角度を表したものです。つまりこの半値幅が狭い地デジアンテナほど指向性が高く、受信性能も高くなる半面、角度のズレが生じると受信感度が低下しやすいということになります。
なお、地デジアンテナの素子数(相当)と動作利得との関係としては、
・14素子以下(強電界地域から中電界地域向け):動作利得はおよそ「5㏈以下」。
・14素子から20素子(中電界地域向け):動作利得はおよそ「5㏈」から「10㏈」。
・20素子から30素子(弱電界地域向け):動作利得はおよそ「7㏈」から「14㏈」。
・30素子以上(弱電界地域でも電波状態が悪い現場向け):動作利得はおよそ「10㏈」から「18㏈」。
になります。
そして素子数が多く、動作利得が高い高性能の地デジアンテナになるほど、指向性も高くなり、地デジアンテナ取り付けの際に、正確な角度調整が難しくなります。したがって地デジアンテナを選択する際には、ただ素子数や利得の数値だけで高性能なものを選ぶのではなく、現場の電界地域など電波状態を確認し、現場に適した性能のモデルを選ぶ必要がございます。
この現場ごとの電波状態を確認するための、アンテナ工事専門業者による電波調査、および設置となることが多いお見積もりについては、以下の各コラム記事で詳細を解説しております。
地デジ放送、衛星放送(BS/CS)テレビアンテナ工事の現場で必要な「電波調査」の方法とは?
地デジ・衛星放送テレビアンテナ工事の費用がいくらかわかる「見積もり」の方法は? 会社ごとのアンテナ工事相場と優良業者の選び方を徹底解説!
各電界地域に適した地デジアンテナ機種ごとの動作利得と素子数
ここでは、各電界地域に適した地デジアンテナの動作利得と素子数、そして2023年現在の主な地デジアンテナにおける、動作利得や素子数の数値を解説してまいります。
まず地デジ電波に関する補足ですが、ある地域の地デジ電波レベルは電界地域の基準だけでなく、春夏秋冬の気候などに影響を受けて、一年を通して「6㏈」程度の変動が生じます。また雨や雪などの悪天候の際にも電波レベルが少し低下します。
そして地デジ放送が視聴可能な電波レベルは、テレビやレコーダーなどの受信機器に届いた時点で「34dB」から「89dB」の間です。この数値より電波レベルが低い場合だけでなく、高すぎる場合も画面の乱れなどのトラブルが生じてまいります。
ただ実際的には、上記の季節や気候による電波レベルの変動もあるため、安定した地デジ受信のため必要な電波レベルは、テレビなどの機器に届く時点で「47dB」から「81dB」の間が適切となり、最低でも「40㏈以上」が必要となります。
地デジアンテナモデルとその受信性能
ここでは、各地デジアンテナ機種ごとの動作利得、素子数などの受信性能と、そのほかの特徴。そしてそれぞれに適した電界地域について解説してまいります。
なお、各電界地域に適した素子数(相当)と動作利得の基準は、以下の通りになります。
・強電界地域:4素子、8素子から14素子、動作利得5dB。
・中電界地域:14素子から20素子、動作利得5㏈から10dB。
・弱電界地域:20素子から27素子。動作利得7㏈から14dB。
・弱電界地域でも電波レベルが低い地域:高性能モデルの27素子から30素子以上。動作利得10㏈から18㏈。
「八木式アンテナ」
八木式アンテナは、先ほども少しご説明しましたが、矢印型の骨組みに、横棒に当たる多数の素子(エレメント)が設置された、魚の骨に例えられる地デジアンテナです。アナログテレビ放送時代から使われる古典的アンテナでもあります。
その特徴は素子アンテナであることに加え、モデルごとに素子の数を調整できる。さらに主な設置位置が屋根の上などの高所で、周辺の障害物に影響されにくいという点から、現在の地デジアンテナではもっとも受信性能が高くなる点です。また古典的アンテナであるため、本体価格や設置費用も、地デジアンテナ他機種に比べてもっとも低価格になります。
主な設置位置は屋根の上のマストに固定する他、固定具を使用してベランダの内外や壁面への設置。軒先から吊り下げる設置も可能です。
通常型の八木式アンテナには、強電界地域向けの4素子や8素子。中電界地域から弱電界地域向けの14素子や20素子などがございます。
またパラスタックアンテナと呼ばれる弱電界地域向けの高性能モデルも存在します。この機種については後述します。
通常型の八木式アンテナの受信性能は、国内の一流メーカーのモデルを例に挙げると、8素子モデルで動作利得は5.0㏈から9.9㏈。半値幅は42度から63度。14素子モデルで動作利得は8.0㏈から12.5㏈。半値幅は34度から57度。20素子モデルで動作利得は8.5㏈から13.8㏈。半値幅は28度から52度になります。
八木式アンテナはパラスタックアンテナを含め、屋根の上に設置できることも含めて受信性能が高い上に幅広いのが特徴で、素子数などのモデルを選択することで、強・中・弱さまざまな電界地域に対応できます。
一方でデメリットとしては、その形状と設置位置から住宅のデザイン性やや景観を乱しやすい。風雨や雪などの影響で老朽化が進みやすく、寿命の低下やアンテナトラブルの要因にもなりうるなどの点が挙げられます。
なお八木式アンテナの詳細は、以下のコラム記事でも解説しております。
地デジテレビアンテナの長老「八木式アンテナ(八木アンテナ)」とは?
「高性能八木式アンテナ(パラスタックアンテナ)」
パラスタックアンテナとは、基本構造は八木式アンテナと同じものですが。本体の横棒に当たる導波器(ディレクター)部分に、通常の短い横棒の素子ではなく、Ⅹ字型のホルダーに複数のエレメントを取り付けた高性能素子を設置したものです。
パラスタックアンテナは設置される素子数も多くなり、Ⅹ型ホルダーの一個を一素子として、14素子から27素子、30素子などになります。個々の素子が高性能で数も多いことにより、通常の八木式アンテナと比べても素子数以上の高い受信性能を発揮します。
パラスタックアンテナの受信性能は、やはり国産有名メーカーのモデルを一例とすると、20素子モデルで動作利得は11.3㏈から14.5㏈。半値幅は18度から35度。30素子モデルで動作利得13.2㏈から16.1㏈。半値幅は18度から29度になります。
したがって弱電界地域内で地デジ電波レベルが低いエリアでも、安定した地デジ受信を実現できる半面、半値幅が狭くなる(指向性が高い)ため、アンテナ設置時の角度調整が難しくなります。特にパラスタックアンテナは大型で重量も増すため、風雨などによる角度のズレが乗じないよう、角度調整だけでなく、太いマストや多数のワイヤーを使用した、頑丈な固定が必要となります。
その他のメリット、デメリットは八木式アンテナとほぼ同様ですが、高性能である分、価格はやや高額になります。
パラスタックアンテナについての詳細は、以下のコラム記事でもご説明しております。
「デザインアンテナ」
デザインアンテナは、アナログ放送から地デジ放送への転換期に普及した、主に長方形の薄型で、住宅の壁面やベランダ内外などに設置される地デジアンテナです。その特徴から平面アンテナ、壁面アンテナ、フラットアンテナ、ボックスアンテナなどの別名もございます。
その特徴は、形状や設置位置に加え、カラーバリエーションも豊富なことから、住宅のデザイン性や景観を乱さず、風雨などの自然環境にも影響を受けにくい。そのためトラブルが発生しにくく寿命も長くなる点です。また電波状態が良いエリアで、住宅の屋根材や断熱材の素材が電波を遮断しにくいものであれば、屋根裏などの屋内設置が可能なケースもございます。
このようにメリットの豊富さから、現在の地デジアンテナ機種では、人気ナンバーワンになっております。
ただ受信性能では、主に「20素子相当」と最大「26素子相当」のモデルのみになります。さらに素子アンテナではない点や、設置位置がやや低くなる点なども、受信感度の面ではやや不利となります。
国産有名メーカーのデザインアンテナよる受信性能の一例では、20素子相当モデルの動作利得は7.8㏈から9.8㏈、同機種のブースター内蔵モデルでは25㏈から33㏈。半値幅は75度から86度。26素子相当の動作利得は8.4㏈から10.2㏈。ブースター内蔵モデルで26㏈から34㏈。半値幅は71度から82度になります。
総じてデザインアンテナは半値幅が広い分、動作利得がやや低くなり、それを補足するために、電波レベルを増幅させるブースターの設置が推奨される他、ブースター内蔵モデルなどもございます。主な使用エリアは強電界地域から中電界地域ですが、高層建築物の付近、住宅密集地などの周辺環境では十分な受信性能が発揮できず、設置できないケースもございます。
他にも八木式アンテナよりも本体価格や設置工費がやや割高となる。壁面に設置する場合は、壁に固定具を取り付けるため、住宅の壁面にビス穴を開ける必要が出る点などがデメリットといえます。
デザインアンテナに関しての詳細は、後述のユニコーンアンテナも含め、以下の各コラム記事にて解説しております。
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「ユニコーンアンテナ」
ユニコーンアンテナは、約70センチのポール状のアンテナを、マストの先に固定したスタイリッシュな地デジアンテナで、カラーバリエーションにも反射の少ないウォームホワイトとブラックブロンズがございます。この機種は、2017年(平成29年)に国内の大手アンテナメーカー「マスプロ電工」さんが発売開始した2023年現在の最新鋭モデルになります。
受信性能は20素子相当で、動作利得は5.5㏈から6.2㏈。半値幅は83度から93度で、指向性が低く角度調整に余裕が出る半面、動作利得もやや低くなり、この機種を選ぶ場合はブースターの設置が推奨されます。
基本的に強電界地域から中電界地域向けの機種であり、設置位置は屋根の上にマストで固定する。屋根の張り出し部である破風板や、壁面でも高い位置に固定具を取り付けての設置になります。
ユニコーンアンテナの主な特徴は、その形状から優れたデザイン性で住宅の外観や景観を乱さない。さらに高所に設置しても風雨などを受け流せるため、経年劣化やトラブルに強い点です。そして受信性能は20素子相当で、指向性が低い分、動作利得もやや低いながら、設置位置を高く取れるため、障害物の影響を避けて受信感度が高まるという点も挙げられます。そのため障害物の存在や住宅密集地などでデザインアンテナが設置できない現場でも、ユニコーンアンテナは設置できるケースもございます。
総じて八木式アンテナとデザインアンテナの長所を兼ね備えていると言えるユニコーンアンテナですが、デメリットとしては、八木式アンテナの20素子モデルや、高性能パラスタックアンテナには受信性能が及ばず、弱電界地域では使用できない場合が多い。最新機種になるため本体価格や設置費用が、地デジアンテナではもっとも高額になる点が挙げられます。
ユニコーンアンテナについては、以下のコラム記事でも単独でその詳細をご説明しております。
地デジアンテナの最先端、ユニコーンアンテナとは? 特徴、メリット、工事費用の相場まで徹底解説!
まとめ
やや説明が複雑となる、地デジアンテナの「動作利得」について、ご理解いただけたでしょうか?
基本的には、詳しい概念までは把握しなくとも、地デジアンテナの正面側を電波の方向へと正確に向けた場合の、地デジ電波の受信効率を示し、この性能が高くなるほど、指向性が高くなる(角度調整が厳しくなる)というご理解で十分とも言えます。
したがって強電界地域など、地デジ電波の受信環境が十分な地域であれば、さほど利得が高い地デジアンテナを使わずとも十分な受信感度を確保できるため、利得がやや低い分、指向性も低くなり、アンテナ角度のズレなどにも影響されにくいアンテナモデルの方が適しているということもできます。
再掲になりますが、当コラムは「動作利得」と関係の深い「素子」について解説した以下の各コラム記事の姉妹記事に当たります。
素子に関する以下のコラム記事もご確認いただくことで、地デジアンテナの受信性能についても、より分かりやすくなると思われます。
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当あさひアンテナでは、地デジアンテナをはじめとする各種アンテナ設置に関して、出張料、キャンセル料なども含めた完全無料で、現場の電波調査とお見積もりを実施しております。
電波調査とお見積もりに関しては、以下の各コラム記事をご確認ください。
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またアンテナ工事そのものも、国産一流メーカー製のアンテナ本体や設置の基本部材、防水加工などをセットにした、業界災厄に挑み続ける設置工事費用でご用意。電波調査の結果に基づき、お見積もりの際には、現場に最適の素子数、動作利得のアンテナ機種はもちろん、現場の条件で可能な限り、お客様のご要望にお応えするアンテナ工事をご提案いたします。
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