衛星放送用BS/CSアンテナの種類と性能とは? 地デジテレビアンテナとの違い、設置工事の方法から機種の選び方まで解説!
2023年(令和5年)現在の日本では、テレビ放送も、いわゆる地デジ(地上デジタル放送)だけでなく、衛星放送も広まっており、その普及率は70パーセント以上といわれております。
いま現在、ご自宅に衛星放送を導入しておられずとも、ご興味がおありの方も多いことでしょう。
ただ一口に衛星放送といっても、いわゆるBS放送、CS放送の他、最近では新4K8K衛星放送というものも登場しております。
そのため、各衛星放送の違い。どの放送でどのようなチャンネルが視聴できるのか。視聴料金は必要なのかなど、さまざまな疑問から、衛星放送の導入に踏み切れないという方もおられるかと存じます。
また衛星放送については基本的な知識がをお持ちで、新しく衛星放送用アンテナの設置、また古くなったアンテナの交換をお考えになっていて、高性能なBS/CSアンテナをお求めの方でも、どれも同じようなパラボラアンテナばかりで、性能の良い機種を選ぶ目安がわからない、とお悩みの方もおられることでしょう。
そこで当コラムでは、2023年度の最新情報に基づき、衛星放送を受信するための基礎知識から、さまざまな受信に対応できるBS/CSアンテナの性能の基準やその見分け方、機種のバリエーション。また設置位置などの基礎知識について、ご説明してまいります。
なお、BS/CSアンテナ、およびセットで設置されることになる地デジアンテナの各機種の特徴、設置費用などについては、以下のコラム記事で包括的にご紹介しております。
・地デジ用と衛星放送用テレビアンテナの種類と設置工事の方法とは? ご要望に適した機種の選び方を徹底解説!
衛星放送(BS/CS放送)の仕組みとは?
まず衛星放送が、宇宙空間に浮遊する人工衛星から電波を送信し、地上に設置された、パラボラアンテナと呼ばれる独自の形状を持つBS/CSアンテナで受信するということは、多くの方がご存じでしょう。
ここでは最初に、その詳しい仕組みや電波の種類、また衛星放送の種類であるBS放送、CS放送、また新4K8K衛星放送などの違いについて、ご説明してまいります。
衛星放送に使われる放送用の人工衛星は「静止衛星」になります。静止衛星は、地球の赤道上空、およそ35,786キロの地点に当たる宇宙空間を周回しています。しかし周回の速度が地球の自転に一致しているため、地球上から見上げれば、常に空の一ヵ所に静止しているように見えるため、静止衛星と呼ばれるのです。静止衛星から見れば、つねに地球の一定方向の半球側を補足していることになり、この静止衛星から地上の広範囲に向けて、常に電波を送信することが可能となります。
したがって衛星放送の特徴、メリットは、地球上の高層建築物や山地などの地形、また地上で発生した地震などの災害にも影響されず、常に地球上の広範囲に、安定して大容量の情報を送信できるという点になります。
日本における衛星放送のBS放送、CS放送とは?
日本における衛星放送といえば、BS放送、CS放送の二種類がよく知られております。
この放送の種類は、使用される人工衛星の違いになります。BS放送は「Broadcast Satellite(放送衛星)」を使用した衛星放送。CS放送は「Communication Satellite(通信衛星)」を使用した衛星放送で、それぞれの衛星の頭文字が、名称の由来になっております。
これは日本の放送法に由来する区別であり、元々がBS放送の放送衛星が、テレビなどの放送を目的とした人工衛星でした。
CS放送の通信衛星は、主に企業などによる受信を目的とした、文字通り通信のための衛星でしたが、1989年(平成元年)の放送法改正により、通信衛星を用いても、一般世帯向けのテレビなどの放送が可能となりました。
2023年現在のBS放送、CS放送はどちらもデジタル化されており、主な違いは以下の通りになります。
・BSデジタル放送
現在では東経110度に位置する人工衛星から電波を送信しており、主なチャンネルには、NHK、広域民放その他の、無料放送チャンネル。そして「wowow」「j-sports」など月額契約制の有料チャンネルが存在します。
・CSデジタル放送
CS放送は主に民間放送のチャンネルとなり、使用される通信衛星には主に東経110度、124度、128度のものがございます。
東経110度の通信衛星を用いたCS放送のサービスは「スカパー!」として知られ、大半が有料チャンネルながら、BS放送を超える多チャンネルが特徴です。映画、テレビドラマ、アニメ、時代劇、スポーツ、お笑いなど、各ジャンルで細分化された数多くの専門チャンネルが存在し、お好みのチャンネルと契約することで、さまざまな番組が視聴できることが最大の魅力です。
東経124度・128度の通信衛星を用いたCS放送は「スカパー!プレミアムサービス」のサービスであり、同じく大半が有料チャンネルながら、より多チャンネルであり、全チャンネルがハイビジョン放送である点が特徴です。
・新4K8K衛星放送
新4K8K衛星放送とは、2018年(平成30年)にスタートした衛星放送の4K8K放送です。これは従来のBS放送、CS放送と別個のものではなく、それぞれに4K放送、8K放送のチャンネルが追加されたものになります、
従来の2Kフルハイビジョン放送(FHD)に比べると、4Kは4倍、8Kは16倍の高精細画質となり、他にも色彩や色調の表現。動画のなめらかさ、音質などが向上し、従来のハイビジョンテレビより大画面により、より鮮やかでリアルな映像と音声を視聴できます。
ただ新4K8K衛星放送を視聴するためには、4K、8K対応のテレビ、チューナーだけでなく、BS/CSアンテナや、場合によってはブースター、分配器などの機器も、4K8K用のものに交換する必要が生じます。
この点については、詳しくは次の「衛星放送の電波」の項でご説明いたします。
衛星放送の電波とは?
宇宙空間に位置する放送衛星、通信衛星から送信される放送用の電波は、長距離を移動するため、直進性が強い高周波数、すなわち波長が短い電波が用いられます。具体的には12GHz(ギガヘルツ)前後のマイクロ波の一種、SHF(センチメートル波)であり、その波長の長さはおおよそ25ミリ前後になります。
このような高周波数で直進性が高い電波を用いることにより、エネルギーを集中させやすくなり、受信用のアンテナも小型化できます。半面、波長の短さから電波がほとんど回折(回り込み)しないため、遮蔽物に影響され、遮断されやすいという面もございます。
そして人工衛星が発信する電波は、ちょうど日本列島の中心から全体を照らすライトを当てるような形で、日本国内の全域に送信されております。日本国内でも中心部では人工衛星からの距離が近く、ちょうどライトの中心部を当てられるように、受信できる電波レベルが強くなります。しかし国内でも北部や南端部、離島部など中心部から離れたエリアでは、ライトで照らされる端の部分のように人工衛星との距離が遠くなるため、受信できる電波レベルもやや弱くなります。
また従来のBS放送、CS放送の電波は、人工衛星から右回りの螺旋を描いて送信される「右旋円偏波」という電波が使用されてきました。
ただ2018年に導入された新4K8K衛星放送のチャンネルをBS放送、CS放送にそれぞれ追加する際、この右旋の電波では周波数帯が足りなくなったため、一部のチャンネルを除いて、新たに右回りの螺旋となる電波「左旋円偏波」が導入されました。
現在の新4K8K衛星放送では、無料放送であるBSのNHK、各広域民放の4Kチャンネルは右旋の電波で、その他BS、CSの4K、8Kチャンネルは左旋の電波で送信されております。ただ左旋の電波は従来の右旋よりも高周波数帯になるため、従来の2K対応BS/CSアンテナでは受信できず、4K8K対応型のBS/CSアンテナが必要となります。
衛星放送の電波については、以下のコラム記事でも詳細を解説しております。
各衛星放送に対応する主な衛星放送用アンテナの種類
衛星放送用のアンテナは、基本的にどれも同じ構造のパラボラアンテナですが、受信できる衛星放送の別に、以下の種類が存在します。
なお衛星放送用のパラボラアンテナは、受信する放送の電波を送信する人工衛星の方向へ正確に向ける必要があるため、基本的に角度の異なる人工衛星の放送を受信するためには、別個の衛星放送用アンテナが必要となります。
ただ同じ東経110度に位置する人工衛星を用いたBS放送、CS放送は、一台のBS/110度CSアンテナで受信することが可能です。
・4K8K対応BS/110度CSアンテナ
現在の主要なBS/CSアンテナであり、BS放送、および同じ東経110度に位置する通信衛星を用いたCS放送「スカパー!」。そして左旋の電波による新4K8K衛星放送をすべて受信できます。現在のBS/CSアンテナは大半がこのモデルになります、
・2K対応BS/110度CSアンテナ
新4K8K衛星放送がスタートする2018年以前に設置された主なBS/CSアンテナです。
左旋の電波には対応できないため、右旋電波で送信されるBSの一部4Kチャンネルを除き、新4K8K衛星放送は受信できません。それ以外の点は、4K8K対応のモデルと大きな違いはございません。
・124度128度CSアンテナ/マルチアンテナ
これは前述した、東経124度、128度に位置する通信衛星を利用するCS放送「スカパー!プレミアムサービス」を受信するために必要となるパラボラアンテナで、BS/110度CSアンテナとは別個に設置する必要がございます。
他にも角度の異なる複数のコンバーターを一体化することで、一基で新4K8K衛星放送を含むBS放送と、110度、124度、128度のCS放送をすべて受信できるマルチアンテナも存在しますが、三方向の人工衛星からの電波を受信するため、精密な角度調整が必要となります。
・CSアンテナ
主に110度CS放送を受信するためのアンテナで、BS放送には対応していないモデルです。
基本的にはマンションなどに設置される大型の共同受信用アンテナで、CS放送のみを受信したい場合に利用されます。
BS/CSアンテナの構造
ここからは、衛星放送の電波を受信するための、衛星放送用アンテナについての解説になります。
BS/CSアンテナは、いわゆる「パラボラアンテナ」として知られています。パラボラアンテナとは、放物曲面をもった皿状の円盤である反射器(放物面反射器)で電波を受け止め、反射させた電波を反射器の中央に一点集中させ、中央に取り付けられた受信装置で電波を集めるという構造のアンテナです。
なお「パラボラ(parabola)」とは、反射器の内側の線である「放物線」の意味になります。またアンテナ本体の大半を占める反射器が皿のような形であることから、英語で皿を意味する「dish」に由来して「ディッシュアンテナ」とも呼ばれます。
パラボラアンテナは主に、現在の地デジ電波としても用いられる「UHF波(極超短波)」よりも周波数の高い(波長の短い)電波、主にSHF波に対して利用されます、そのため12GHz前後の電波を使う衛星放送には適しているといえます。
一般的なBS/CSアンテナの構造は、やはり反射器が中心となります。BS/CSアンテナの場合、反射器部分は「ディッシュ」と呼ばれることが多くなります。そしてディッシュの下部から、「アーム」と呼ばれる金属上の支柱がディッシュの中央へと伸び、中央部に電波を集める「一次放射器」と一体化した「コンバーター(変換器)」が設置されております。
このコンバーターから同軸ケーブル(アンテナケーブル)が伸び、屋内へと衛星放送の電波を送ることになります。ちなみにディッシュの背面には、アームを固定し、さらにアンテナを設置するマスト(支柱)にアンテナを固定する、設置金具部分が取り付けられています。
BS/CSアンテナでは、衛星放送用の静止衛星から送信される電波をディッシュ部で受け止めて反射させ、一次放射器で受け止めてコンバーター部で、テレビ放送に適したMHz(メガヘルツ)の周波数帯へと変換します。これは周波数が高い12GHz帯の電波をそのままケーブルで送信すると、減衰量が非常に大きくなるためです。
ちなみにコンバーターで変換された衛星放送の電波は、
・右旋円偏波(2K衛星放送およびBS放送の一部4Kチャンネル):1032MHzから2072MHz。
・左旋円偏波(新4K8K衛星放送の大半):2224MHzから3224MHz。
の周波数帯に変換されます。
こうして変換された衛星放送の電波は、アンテナケーブルと、ブースター、分配器など必要な機器を経由して、各部屋のテレビ、レコーダーなどのBS/CSチューナーに送られ、映像へと変換されて、衛星放送が視聴できるという仕組みになります。
また上記のように左旋の電波は、コンバーターで変換された後も、従来の右旋(2K衛星放送)の電波より周波数帯が高くなります。
そのため従来の2K用の電波のみに対応するブースター、分配器などの機器では、4K8Kの電波を適切に送信できず、これらの機器、場合によってはケーブルも、左旋の電波に対応できる4K8K(3442MHz)対応型に交換する必要が生じてまいります。
なおBS/CSアンテナのコンバーター部は、周波数を変換する電子機器になるため、その作動には電源が必要となります。
BS/CSアンテナの電源は、屋内へと電波を送信するアンテナケーブル(同軸ケーブル)からアンテナ側へ逆に通電される形で、電波を必要なレベルに増幅するためやはり電源部を持ち、配線部の途中に設置されるブースター。またはテレビやレコーダーなどの受信機器のチューナー端子から供給されています。
BS/CSアンテナの詳細や4K8K放送に対応できる機器、およびアンテナへの給電については、以下のコラム記事に詳細がございます。
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BS/CSアンテナと地デジアンテナの違い
衛星放送に対して、より一般的なテレビ放送と言えば、地デジ(地上波デジタル放送)です。
地デジ放送は日本国内でも各地の地上に設置された、大規模な送信局や大小の中継局などの電波塔から、周辺地域に地デジ電波を送信する形式のテレビ放送です、
使用される電波はUHF(極超短波)のうち、470MHzから710MHzまでの周波数帯になり、放送されるチャンネルはNHK、広域民放、および一部都府県にそれぞれ存在する独立放送局の地方チャンネルです、
また地デジ放送はNHKの受信料を除けば。地デジアンテナの設置により基本的に無料で視聴できます。
ただし地デジ電波は、電波塔からの距離や周辺の地形、建築物などの影響により、各地域で受信できる電波レベルが変動し、エリアごとの電波レベルによって強・中・弱の電界地域に区分されます、
地デジアンテナは、各電界地域向けの受信性能や外観性、対候性などに違いで「八木式アンテナ」「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」のモデルがあり、機種については現場に適合する受信性能と、お客様のご要望によって選択されます。
このように地デジアンテナとBS/CSアンテナは、受信する電波の種類や方向がまったく異なるため、それぞれ別個の機種となり、地デジ、衛星放送の双方を受信できるアンテナは存在しません。ただ地デジアンテナとBS/CSアンテナは「混合器」を用いてアンテナ配線を一本化するため、同じマストなど近い位置にセットで設置されることが多くなります。
地デジ放送及び、各種地デジアンテナについては、以下の各コラム記事をご参照ください。
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BS/CSアンテナの設置位置
BS/CSアンテナを含むパラボラアンテナは、非常に指向性(特定の方向のみで受信性能が高まる性質)が高いため、BS/CSアンテナでは、BS放送の放送衛星、およびCS放送の主な通信衛星が位置する東経110度の方向へと正確に向ける必要がございます。そしてこの設置角度に、ミリ単位のズレが生じただけでも、受信性能が大きく低下することがございます。
またBS/CSアンテナと人工衛星を結ぶ空間の間に、高層建築や山地はもちろん、樹木などの障害物がある場合も、人工衛星からの電波が遮られて受信不能になることがございます。衛星放送の電波は波長が短く直進性が高い高周波数帯で、その波長の幅は25ミリ程度であるため、この幅を超える大きさの障害物には影響を受けてしまいます。
そのためときには、アンテナを向けた方向の樹木に葉が茂る、洗濯物が干されるといったことでも影響を受けてしまいます。
ちなみにアンテナと障害物の高さの関係については、アンテナを設置した位置から計った障害物の高さより、障害物とアンテナとの距離が1.5倍以上、離れていれば影響は受けません。一例として、アンテナを向けた方向に、アンテナより10メートル高い建築物がある場合、障害物とアンテナの間に15メートル以上の距離があれば、その障害物による影響は受けなくなるのです。
そのため、BS/CSアンテナを設置する際には、アンテナを正確に東経110度の方向へと向けることができ、現在、その方向に障害物がないだけでなく、将来にわたって障害物の発生が想定されにくい位置に設置する必要がございます。
角度調整や障害物を避ける意味で適しているのは、戸建て住宅であれば、やはり屋根の上などの高所で、配線の利便性から、できるだけ地デジアンテナに近い位置と言えます。ただBS/CSアンテナは指向性も高く、風雨などの影響を受けてわずかでもアンテナ角度がずれると、衛星放送を受信できなくなることも考えられます。
そのため衛星放送の受信環境に問題がなければ、ベランダの手すり部や壁面など、風雨を避けやすく、トラブルの際の角度調整も行いやすい場所に設置するのもひとつの方法と言えます。
また住宅内に東経110度の方向に向いた窓などがある場合は、BS/CSアンテナの室内設置も不可能ではございません。ただこの場合、アンテナを三脚などの専用台に設置して窓際に置く必要があり、窓ガラスなどの素材によっては衛星からの電波が遮断される場合もあるため、視聴する際には窓を開ける必要が出ることもございます。
他にも室内設置であるため、アンテナに手などが触れることで角度がずれて受信困難になるなどのトラブルも考えられるため、室内設置にはさまざまな条件や注意が必要となってまいります。
なお人工衛星から送られる時点での衛星放送の波長の幅は、約25ミリと短いものであるため、豪雨や降雪により、波長の幅に近い雨粒や雪が降り注ぐ状態になると、電波が吸収される、乱反射するなどにより電波状態が悪化し、衛星放送の受信不良が起こることがございます。
これを「降雨減衰」「降雪減衰」といい、衛星放送では避けられない問題になります。基本的には、降雨、降雪減衰による受信不良については、天候の回復を待つことになります。
BS/CSアンテナの設置位置に関しては、以下の各コラム記事も参考になると思われます。
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地デジアンテナの受信性能を示す要素
BS/CSアンテナの性能でも、衛星放送の電波を受け止める「受信性能」に関わる部分や、性能を示す基準には、以下のものがございます。
ディッシュ部の直径
BS/CSアンテナの受信性能は、電波を受け止めるディッシュ部の大きさによって変わってまいります。
通常の一般戸建て住宅向けのBS/CSアンテナは、主に45型(ディッシュ部の直径が45センチ)になります。ただ50型とやや大型のモデルもある他、アパートなど小規模の集合住宅で共同受信用に使用される60型、75型などが、戸建て住宅に設置されることもございます。
なお90型以上のモデルもございますが、これらはマンションなど大型の集合住宅で共同受信用に用いられるもので、価格も10万円以上となるため、戸建住宅に使用されることはまずございません。
BS/CSアンテナの仕組みから、ディッシュ部が大きくなるほど集められる電波のレベルが高くなり、したがって受信性能も高まります。性能の数値的には、BS/CSアンテナが大型になるほど、後述の「利得」と呼ばれる数値が高くなります。
45型より大型のBS/CSアンテナは、日本国内でも中心部から遠くなる、東北部や南端部、離島部などで、人工衛星からやや距離があり、電波の強さがやや弱まるエリアで使用されます。他にも、大型のBS/CSアンテナは、降雨減衰、降雪減衰にも強くなります。
また個人ユーザーの感想ながら、大型のBS/CSアンテナを使用することで、衛星放送の画質、音質が向上するといわれることもございます。
ただ大型のBS/CSアンテナは風雨などの影響を受けやすくなり、アンテナ角度のズレなどのトラブルも発生しやすくなるというデメリットもございます。BS/CSアンテナのサイズを決める際は、現場の電波レベルや気候などの環境から、メリットとデメリットも考慮する必要があると申せます。
アンテナ利得/コンバーター利得
アンテナの「利得(動作利得)」とは、アンテナが電波を受信できる効率を示す数値です。英語で「gain(ゲイン)」と呼ばれることもございます。地デジアンテナの場合は、指向性が高まるほど、その方向への利得も高くなるという特徴がございます。
ただBS/CSアンテナの場合、利得と呼ばれる数値には二種類あり、どちらも「㏈」の単位で表されます。
ひとつは「アンテナ利得」と呼ばれるものです。これはアンテナのディッシュ部で、どれだけの電波を一点に集められるかを意味する数値です。この数値が高いほど受信性能が高いと言え、ディッシュ部が大型であれば数値も高くなります、
もうひとつは「コンバーター利得」と呼ばれるもので、人工衛星から送信される約12GHz帯の電波を、テレビ電波向きの周波数帯へと変換する際の効率を示します。この数値は、BS/CSアンテナからの電波を多くのテレビなど受信機器へと分配する場合には有利となりますが、ブースターで増幅するという方法もあるため、一般住宅の場合は、さほど重視する必要はございません。
ちなみに、国内のある有名アンテナメーカーによる4K8K対応BS/CSアンテナのアンテナ利得、コンバーター利得の数値は、ディッシュサイズのモデル別に、以下の通りになっております。
・「45型」アンテナ利得、BS:33.9㏈、CS:34.3㏈(標準)/コンバーター利得、53㏈。(標準)
・「50型」アンテナ利得、BS:34.8㏈、CS:35.2㏈(標準)/コンバーター利得、53㏈。(標準)
・「60型」アンテナ利得、BS:35.9㏈、CS:36.5㏈(標準)/コンバーター利得、53㏈。(標準)
・「75型」アンテナ利得、37.4㏈以上。コンバーター利得、BS帯域:52±4㏈、CS帯域:52±6㏈。
コンバーター雑音指数
コンバーター雑音指数とは、コンバーターが受信した電波の周波数帯を変換する際、内部の回路で雑音(ノイズ)を発生させる割合を示します。ノイズは映像の乱れなどの原因となるため、この数値が小さいほどノイズが少なくなり、受信する衛星電波の減衰が生じやすい降雨、降雪の際にも比較的、安定した受信ができる可能性が高くなります。
上記した国産有名メーカーの4K8K対応BS/CSアンテナモデルでは、45型、50型、60型のコンバーター雑音指数は「0.45㏈(標準)」。75型で「1.2㏈以下」になります。BS/CSアンテナで受信できる電波レベルが高まるほど、雑音指数もやや大きくなることになりますが、いずれにせよこの数値では、ほぼ悪影響はございません。
性能指数、G/T比
性能指数、またはG/T比とは、BS/CSアンテナの総合的な性能を示す数値と言えます。
「G/T比」の意味を簡単に説明すると、「G」がBS/CSアンテナの純粋な衛星電波の利得を示し、「T」は不必要な雑音(ノイズ)を示します。このふたつを比較した数値がG/T比(性能指数)になります。性能指数は、数値が高いほど利得が高く、ノイズの発生が少ない、つまり純粋な衛星放送の電波とノイズとの差が大きいことになり、品質のいい電波を受信する性能が高いということになります。
上記の国内有名メーカー、4K8K対応BS/CSアンテナ各モデルの性能指数は、以下の通りになります。
・「45型」BS:14.8㏈、CS:15.2㏈。(標準)
・「50型」BS:15.7㏈、CS:16.1㏈。(標準)
・「60型」BS:16.8㏈、CS:17.4㏈。(標準)
・「75型」14.1㏈以上。
コンバーター局発位相雑音
BS/CSアンテナのコンバーターが、受信した12GHz帯の電波をケーブルで送信しやすい周波数へと変換する際、基準となる信号を「局発」といいます。この局発の信号が安定しないと、変換された衛星放送の電波(映像信号)も安定しなくなります。
コンバーター局発位相雑音は、この周波数の変動を「位相雑音」という形式で表した数値であり、この数値が低いほど高性能と言えます。
BS/CSアンテナはどれも受信性能に大きな差はない?
上記の数値などが、BS/CSアンテナの性能を示す数値になります。ただ実際のところは、ディッシュ部のサイズと、その影響を受ける数値を除いて、BS/CSアンテナの性能は、各メーカーの製品やモデルごとに大きな違いはございません。
地デジアンテナであれば、昔ながらの形状で、素子数の異なる幅広い受信性能のモデルが存在することから、強電界地域から弱電界地域まで幅広いエリアに対応できる八木式アンテナ。またデザイン性や風雨への耐性に優れる半面、受信性能は八木式アンテナよりやや低く、主に強電界地域から中電界地域で使用されるデザインアンテナ、ユニコーンアンテナなど、さまざまな性能や形状の機種。モデルが存在し、設置する現場の条件や、お客様がもっとも重要視される性能などによって、適したモデルを選択することができます。
ただBS/CSアンテナは、アウトドア用などの特殊な機種を除けば、基本的にパラボラアンテナの一種類のみになります。したがって構造的にはどれもほぼ同じアンテナとなり、大きな性能の差は生じにくいのです。もちろん各メーカーによって、コンバーターの設計に改良を重ねるなどの工夫で性能指数を向上させ、映像や音声の乱れなどをより発生しにくくしたモデルも存在します。
ただ特別な工夫などのない一般的なBS/CSアンテナであっても、受信性能が特に低いということはなく、設置する環境に適した機種であれば、衛星放送の受信に大きな問題が出ることはほとんどございません。
ご自宅に設置するBS/CSアンテナをお選びになる場合は、もちろん受信性能や価格も重要ですが、その他の要素も踏まえた、総合的な性能や品質のコストパフォーマンスで決めることが適切と言えます。
優れたBS/CSアンテナモデルを選択するための要素
ここでは受信性能以外で、高品質なBS/CSアンテナのモデルを選ぶためのポイントをいくつかご説明します。
・アンテナ本体の生産メーカー
現在では各種BS/CSアンテナも国内外、大小さまざまなメーカーから発売されております。
ただ設計力や技術力が低いメーカーのBS/CSアンテナは、基本的な受信性能などが極端に低いことはなくとも、設計や組み立ての技術、生産管理体制などがさほど高くないケースもあり、使い続けることでコンバーター部分などをはじめとする電子部品や、固定部の経年劣化が進みやすく、故障や角度のズレなどの思わぬトラブルが発生することも考えられます。
知名度のないメーカーのBS/CSアンテナが必ずしも低品質とは限りませんが、設計や部品、組み立てなどの品質管理が厳しく、総合的に高品質なアンテナ本体をお求めになるには、やはり国産の大手メーカー製BS/CSアンテナを選ばれるのが確実と言えます。
日本国内での大手アンテナメーカーには、日本における三大アンテナメーカーと呼ばれる「マスプロ電工」「DXアンテナ」「日本アンテナ」をはじめ「サン電子」「HYSエンジニアリングサービス」などがございます。
・アンテナ各部の材質
BS/CSアンテナの本体、ディッシュ部やコンバーターアームなどは、主に金属製となります。
ただアンテナの各部を接続する金具やネジ、またアンテナをマストなどに固定する金具部分などの材質は、メーカーごとにサビにくく頑丈となるよう、さまざまな合金などを採用しております。このような部分の品質が低いと、経年劣化により、アンテナ角度がずれる、またアンテナ全体に歪みが生じるなどして、アンテナトラブルや故障につながります。
アンテナの部材、特に接続部などにどのような素材が使用されているかも、注目すべき点のひとつと言えます。
・付属品
BS/CSアンテナには、同じメーカーの同モデルでも、アンテナ本体のみと、ケーブルや設置具、結束バンドなどの基本的な部材をセットした製品が販売されていることがございます。中には簡単なインジケーター(BS/CSアンテナが受信する電波レベルを確認できる装置)が付属していることもあり、アンテナ工事業者に依頼せず、ご自宅でBS/CSアンテナを設置される場合には、非常に便利となります。
このような部材セットの製品は、アンテナ本体のみと比べると価格はやや割高になりますが、部材を別途に購入する場合よりは割安となることが多く、お得な製品になります。ただ半面、付属する設置具がご自宅での設置位置に適合しないなど、不必要な部材が付属する製品では、割高分が無駄な費用となりますのでご注意ください。
・その他アンテナモデルごとの工夫
優れたBS/CSアンテナは、受信性能以外の部分でもさまざまな工夫が凝らされております。
例えば角度調整部分に各地域別などの目盛りが施されており、人工衛星の方向に向けた角度調整が行いやすい、コネクター部分に設置する防水キャップがケーブルに通しやすい。設置時の組み立てがワンタッチで行いやすい。コンバーターアームやマストへの取付金具が強化されておりアンテナのズレその他のトラブルが生じにくいなど、アンテナの設置時や調整時に便利となる、また経年劣化を抑えて寿命を延ばすため、アンテナメーカーごとに独自の仕様や工夫が見られます。
一般の戸建住宅向けのモデルには、本体のカラーバリエーション。また高耐風モデルなどがあり、これらの機種について詳しくは後述いたします。またマンションなどに設置される、大型の共同受信用BS/CSアンテナでは、降雪の多い地域向けに、アンテナ本体についた雪を溶かす融雪機能、および雪に影響されにくいさまざまな工夫を凝らしたモデルもございます。
このようなポイントに着目するのも、より優れたBS/CSアンテナをお選びになるためには重要と言えます。
BS/CSアンテナのバリエーション
上記のような性能差や、細部の違いとは別に、見た目でもわかりやすいBS/CSアンテナのバリエーションには、以下のものがございます。
・カラーバリエーション
通常、BS/CSアンテナの本体カラーには、白系統が選ばれます。
これは、BS/CSアンテナは直射日光を受けやすい環境に設置されるため、日光の熱で本体の金属が膨張し、ゆがみが生じて受信性能が低下する。また紫外線による各部の劣化などを防ぐため、太陽光を反射しやすい白色が選ばれます。
しかし近年では、たとえ日光や紫外線に強い塗料が開発されており、このような塗料を用いることで、本体色はブラックその他でも、白色のモデルと同じく太陽光に影響されにくいカラーバリエーションが登場しております。
BS/CSアンテナのカラーモデルも、受信性能などについては同タイプの白色モデルとまったく変わらないため、住宅の外観性にこだわる方は、設置位置の外壁の色などに適したカラーのモデルをお選びになるとよいでしょう。
・高耐風モデル
BS/CSアンテナに限らず、屋外に設置されるテレビアンテナにとって風雨や雪などの自然環境は大敵になります、
厳しい自然環境はアンテナ本体の経年劣化を進める他、特にBS/CSアンテナは、ディッシュが風の影響を受けやすく、またわずかな角度のズレが受信不良につながるため、風雨などへの対策が重要となります。
各アンテナメーカーも、対候性を高めたさまざまなBS/CSアンテナを開発しておりますが、その代表格と呼べるのが「DXアンテナ」社製の45型4K8K対応BS/110度CSアンテナ「BC453SG」になります。
この「BC453SG」は、主に以下の三点の工夫により、従来型のBS/CSアンテナに比べ、耐風性能を格段に向上させております。
・ディッシュ部に無数のパンチングホールを設置し、風を通す構造にすることで強風に対する耐風性能を格段に強化。
・アンテナを固定するマストを太いものにし、取付金具も三本歯形などに強化して左右への角度のズレを防止。
・コンバーターアームの根本をボルト二本止めにし、ディッシュ下部とアームを樹脂プラケットで固定してコンバーターのブレを防止。
これらの仕様により「BC453SG」の耐風性能は、受信可能風速(強風の中で衛星放送が受信できる風速)50m/s。復元可能風速(受信不良は発生しても風がおさまれば受信性能が回復する風速)60m/s。破壊風速(アンテナの一部に破損が生じる可能性が出る風速)70m/sになっております。同社製の通常モデルBS/CSアンテナでは、受信可能風速20m/s、復元可能風速50m/s、破壊風速60m/sであり、全体的な耐風性能、特に受信可能風速がかなり向上していることがわかります。
「BC453SG」の受信可能風速とされる50m/sは、人が屋外に出ることは危険とされる暴風レベルの風速であり。電柱や街灯、樹木などが倒れ、住宅などの外装が吹き飛ばされるレベルの風速です。そのため現実にこの風速の台風が発生した場合は、アンテナの設置部分から破壊される、また飛来物によるダメージなども考えられますが、実際には日本国内で30m/s以上の強風が発生することは滅多にございません。
気候が穏やかなエリアであれば通常モデルのBS/CSアンテナでも受信には十分に使用できますが、台風などのが多いエリアにお住まいの方や、風雨によるトラブルのリスクを軽減したい方には、「BC453SG」がおススメのモデルであるといえます。
高耐風BS/CSアンテナ「BC453SG」については、以下のコラム記事でも詳細をご説明しております。
台風対策に最適! 究極の高耐風BS110度CSアンテナ「BC453SG」(DXアンテナ)
BS/CSアンテナの種類・まとめ
BS/CSアンテナについては、同じサイズのモデルであれば、特に大きな性能差は生じません。
しかし設計や製造、材質などの品質的には、やはり国産の大手メーカーによる製品がおすすめだといえます。また各メーカーで工夫を凝らし、耐風性能などに特化したモデルも存在しますので、ご要望に応じた性能を持つモデルを選ばれるのもよろしいでしょう。
当あさひアンテナでは、BS/CSアンテナについては、一般戸建て住宅向けの45型をはじめ、50型、60型、75型、90型、120型と、集合住宅用の共同受信モデルを含め、国産大手メーカー製の2K4K8K対応型で幅広くご用意しております。
一般戸建て住宅向けのBS/CSアンテナ標準モデルであれば、アンテナ本体価格や基本部材、防水加工をセットにして、15,000円(税込み)からの標準設置費用でご提供しております。さらに前述の高耐風モデル「BC453SG」やカラーバリエーションモデルもご用意しております。
また各種地デジアンテナとのセット設置や、2K4K8K衛星放送対応型のブースター、混合器を含む配線工事、機器の交換なども、高品質、低価格の工事費用でご対応いたします。さらに工事後には、業界最長クラス、工事完了日からの「10年保証」もご用意しております。
BS/CSアンテナの設置や交換、地デジアンテナとのセット設置をはじめとする各種テレビアンテナ工事のご相談は、当あさひアンテナのフリーダイヤル(0120-540-527)。またはメールフォーム、LINEアカウントまで、どうかお気軽にご連絡ください。