テレビアンテナへの分配器の設置で、現場の電波レベルや条件に適した選び方と注意点を徹底解説。分波器や分岐器との違いとは?
戸建て住宅などのお住まいに設置されている地デジ(地上デジタル放送)、衛星放送(BS放送、CS放送、新4K8K衛星放送)のテレビアンテナは、アンテナ本体から延びるアンテナケーブル(同軸ケーブル)によって、ご自宅の各部屋にあるテレビやレコーダーなど受信機器に接続され、地デジ、衛星放送のテレビ電波を送信していることは、皆様もよくご存じのことと思われます。
しかしテレビアンテナから伸びるケーブルは一基につき一本。一方、現在の戸建住宅ではほとんどの場合、複数の部屋に多くのテレビ、レコーダーなど、アンテナに接続される機器が設置されております。そのためアンテナからのケーブルを、どうやって複数の部屋、奥の機器に分配しているのか、疑問に思われる方もおられるのではないでしょうか?
その答えとして、現在では多くの場合、アンテナの配線部に「分配器」という装置を設置することで対応しております。分配器に接続されることで、アンテナ側からのケーブルは、複数のケーブルに分けられ、各部屋へと電波を分配することにより、ご自宅の複数の部屋や機器にテレビ電波を送信することが可能となっているのです。
この分配器は、モデルによって分配できる数が異なり、その住宅で必要となる分配数のものが使用されます。そのためご自宅で設置するテレビの数を増やしたい場合には、分配器を分配数が多いものに買い換えられて、自分で付け替えればいいのではないかと思われる方もおられるでしょう。
しかしご自宅にて、アンテナ工事の専門業者が設置した分配器は、ただテレビ電波を分配するだけでなく、分配するテレビ電波レベルと分配数との関係、またBS/CSアンテナの電源との関係など、アンテナ配線に関係するさまざまな設定との兼ね合いから、適した分配数、その他の性能を持つ機種が選ばれております。
したがって、ご自宅で安易に分配数の多いものに交換された場合、類似した機器である「分波器」「分岐器」との混同をはじめ、適切でない機種の使用や、アンテナ配線の他の機器との兼ね合いなどから、テレビ放送が映らくなるなど、さまざまなトラブルも予想されます。
当コラムでは、テレビアンテナの分配器を使用するにあたり、分配器の基礎知識および、分配器を使用する上での主な注意点についてご説明してまいります。当コラムをお読みいただければ、分配器を設置、交換する際に、適切な機器の選択や、正しいご使用方法を選んでいただけることと存じます。
なお、住宅のテレビアンテナと屋内のテレビアンテナを接続するアンテナ配線部の全体像。また分配器をはじめとする配線部の機器については、以下のコラム記事で総合的に解説しております。
・戸建ての家へのテレビアンテナ設置と配線、周辺機器の取り付け工事を行う費用の相場とは? 料金の安い業者の選び方も解説
テレビアンテナに接続する分配器とはどのような機器か?
すでにご説明した通り、分配器とは、アンテナからテレビ電波を送ってくる一本のケーブルと、電波を送り出す複数のケーブルを接続する分配のポイントとなる装置です。この機器を経由することで、テレビ電波は複数のケーブルへと等分に分配されます。
分配器の用途は、主に地デジ、BS/CSのテレビアンテナから、住宅内の各部屋に設置されたアンテナコンセントまで、アンテナ配線部で各部屋までケーブルを分配するために使用されます。また室内のアンテナコンセントから先で、複数のテレビ、レコーダーなど機器にケーブルを接続するためにも、分配数の少ないものが使用されることもございます。
分配器の形状は、主にアンテナからのケーブルを接続する一個の入力端子と、ケーブルを接続して電波を送り出す複数の入力端子から成り立っており、見た目は長方形の箱型に、複数の端子やネジで本体を固定する小さな輪などがついた、シンプルな形をしております。ただ室内でケーブルを分配するタイプには、ケーブルとの一体型やブースター内蔵型などもございます。
分配数は「2分配器」から「8分配器」まで、7分配を除いた6種類のものが存在しており、設置する現場に応じて、必要な分配数に予備の1出力端子を加えたものが使われます。
そして分配器を設置する際に、もっとも重要な注意点は、分配器は入力された電波レベル(強度)を、分配される数で等分に分配するという点になります。テレビ電波の強度は主に「㏈(デシベル)」の単位で表されますが、例えば180㏈のテレビ電波を3分配器に通した場合、3分配器では3本に分配されたケーブルの個々の電波レベルは約60㏈に、4分配器であれば45㏈になります。
現実には電波が接続端子や分配器を通る際、抵抗により微妙な減衰(弱まり)が発生するため、理論上の㏈数よりもわずかに低下します。
そのためアンテナ配線内に分配器を設置する際には、この性質を踏まえた、電波レベルの判断が重要になってまいります。
戸建て住宅のアンテナ配線とケーブル分配の構造
ここでは分配器を含む、一般的な住宅のテレビアンテナ配線についてご説明いたします。
住宅に設置されるテレビアンテナは、まず地デジ放送を受信する地デジアンテナの設置を基本として、必要に応じて衛星放送を受信するBS/CSアンテナも追加で取り付けます。また地デジ放送では、NHK、広域民放を送信する電波塔と、東京MX、千葉テレビなどの地方チャンネルを送信する電波塔の方向が大きく異なることがあり、一基の地デジアンテナでは地方チャンネルを受信できない場合もございます。
この場合には必要に応じて、地方局専用の地デジアンテナを別個に設置するケースもございます。
そして地デジとBS/CSアンテナなど、住宅に2基以上のテレビアンテナを設置する場合には、それぞれのケーブルを「混合器」という機器に接続し、地デジ、BS/CS、また地方チャンネルの電波を、一本のケーブルにまとめます。ケーブルを一本化することで、その先のアンテナ配線や機器の設置を最小限に抑え、アンテナ工事費用やトラブルのリスクを軽減することができます。ただ混合器は、地デジアンテナ一基のみ設置する場合や、後述する混合ブースターを設置する場合には必要ございません。
次に現在では、ほとんどの場合「アンテナブースター」が設置されます。ブースター(増幅器)とは、アンテナが受信したテレビ電波を、必要なレベルまで増幅する装置のことです。中電界地域や弱電界地域など、受信できる地デジ電波レベルが低いエリアのほか、住宅内で三台以上のテレビを設置する場合にも、ブースターの設置は必須となります。
ブースターは電波の増幅レベルが低い室内用ブースターを用いる場合の他には、ノイズを避けるためアンテナの真下、または屋根裏空間などアンテナに近い位置へと設置されます。またブースターは電子機器であるため電源が必要となります。
ブースターの種類には屋外用、室内用の設置位置の他、地デジのみ対応のUHFブースター。地デジと衛星放送に対応して混合器の役割も果たすUHF・BS/CS混合ブースター。さらにその4K8K対応型がございます。
以上、アンテナ本体とブースター、また混合器は、近い位置に設置され、電波を受信して必要な電波レベルを確保し、ケーブルを一本にまとめる装置であるため、ほぼ一式と考えてもいい機器となります。
そしてこれらの機器から延びるケーブルを接続し、各部屋へとテレビ電波を分配するのが分配器の役割です。分配器は屋根裏や天井裏の、点検口に近い位置で、壁や柱などに固定されるほか、住宅内に設置された、電話回線やインターネット回線などの配線部を集積するマルチメディアボックス(情報分電盤、弱電盤)など、交換やメンテナンスが行いやすい場所に設置されます。
そして分配器から延びるケーブルは、個々の部屋のアンテナコンセントに接続されます。
なおブースターや分配器については、以下の各コラム記事でも詳しくご説明しております。
テレビアンテナの「ブースター」徹底解説・後編(機種選び・設置編)
地デジ用と衛星放送用、両方のテレビアンテナ設置で工事コスト軽減のため必要な機器、混合器、分波器とは何なのか?
分配器を使用する分配、使用しない分配とは?
上記のように分配器によって各部屋へとアンテナケーブルを分配する方法は、分配器を中心とした星の形に見えることから「スター配線」方式と呼ばれます。そのメリットは、分配器から各部屋まで、ケーブルの長さによって減衰量の差は生じるものの、ほぼ均等なレベルの電波を配分できるという点です。
それにより、住宅内の一部屋のみで受信不良によりテレビ画面が乱れるなどのトラブルが生じにくい。また配線の構造がわかりやすいため、メンテナンスが簡単になるなどのメリットがあり、現在では主流の配線方式になっております。
ただ戸建て住宅の場合には、もうひとつ「送り配線」方式といわれる電波の分配方式がございます。
これは分配器を用いず、アンテナやブースターから延びるケーブルを、まず一番近い部屋のアンテナコンセントに接続し、電波を供給した後、アンテナコンセントから近くの部屋へとケーブルを接続して、残りの電波を次の部屋に送る。以降、同じように末端の部屋まで順番に配線を繰り返す、つまりアンテナから一本の配線を各部屋に送っていく形での電波の分配方法です。
送り配線方式のメリットは、分配器やケーブルの長さが必要ないため、工事の手間や機材のコストが少なく済み、工事費用が安くなるという点です。逆にいうとスター配線の場合は、分配器や、分配器から各部屋に送る分の長さのケーブルが必要となるため、工事費用がやや高くなるのがデメリットといえます。
ただ送り配線方式の場合は、アンテナから一筋にケーブルが伸びる形になり、その途中で各部屋に電波を供給することに加え、ケーブルの長さやアンテナコンセントを経由することでも電波の減衰が生じるため、ケーブルの先に行くほど電波レベルが低下するというデメリットがございます。また送り配線の一部で断線などのトラブルが生じると、その先の配線すべてに電波が供給できなくなってしまいます。
そのため送り配線は、アンテナコンセントの設置数が多い住宅や、地デジ電波より周波数が高く、減衰しやすい衛星放送、特に新4K8K衛星放送には不向きな配線と言え、近年では使用されることが少なくなっております。ただコストの低さから、地デジアンテナのみの設置で、アンテナコンセントが少ない住宅などには、現在でも採用されることがございます。
既存のお住まいでBS/CSアンテナやアンテナコンセントの増設など、各種工事をお考えの際には、まずご自宅のアンテナ配線の分配方法が、スター配線方式であるか送り配線方式であるかを確認される必要がございます。
分配器の価格、設置費用と設置時の注意点とは?
分配器の価格は、その分配数および、性能や品質などによって変わってまいります。2分配器の安いものであれば、100円ショップなどにて100円で買えるものもあり、分配数が多いものでも、インターネットショップやホームセンターなどでは1,000円以下で購入できます。
ただこういった製品は品質的にあまり信頼性はなく、一時的な使用の場合のみにおすすめできる商品になります。アンテナの配線部などで長期にわたり使用する分配器については、日本の大手アンテナメーカーである「DXアンテナ」「マスプロ電工」「日本アンテナ」「サン電子」などから販売されている製品がおすすめといえます。
このような有名メーカー製の、本体のみのシンプルな分配器の場合、一般的な価格は「2分配器:4,000円程度」「3分配器:5,000円程度」「4分配器:6,000円程度」「5分配器:7,000円程度」「6分配器:8,000円程度」「8分配器:16,000円程度」になります。
他にも、4K8K対応型か否か、後述する「1端子通電型」「全端子通電型」の違いなども、価格に反映されてまいります。
なおアンテナ工事の専門業者に、分配器の設置工事を依頼する場合、分配器などの機材費を含め、分配数によって「5,000円から30,000円強」の工事費用が必要です。
以下の項では、ご自宅で新しく分配器を設置、または既存の分配器の老朽化、アンテナコンセント(分配数)を増やすなどで、分配器を交換する場合の注意点について、項目別にご説明してまいります。
分配器の注意点1:ご自宅の電波レベルに合わせた必要最小限の分配数を
前述のように、分配器はアンテナ側から届いたテレビ電波レベルを、分配する数によってそれぞれ何分の一に分ける形で、個々の出力端子のケーブルへと分配します。
地デジ電波の場合、アンテナからテレビ、レコーダーなどに届いた時点の電波レベルが「34㏈から89㏈」であれば、安定した視聴が可能になります。ただ実際には、アンテナで受信できるテレビ電波は、季節の気候や天候によってやや㏈数が変動するため、実際にはテレビなどに届く時点で「46㏈から81㏈」の間、最低でも「40㏈以上」が必要となります。逆に機器に届いた電波レベルが「90㏈」以上と強すぎる場合も、映像の乱れなどが生じてまいります。
そのため、現在の分配器で個々の分配先に届く電波レベルが必要最小限の場合、分配器を交換して分配数を増やしてしまうと、分配先の電波レベルが不足して、すべての部屋でテレビ映像が映らなくなるという事態も起こり得ます。
したがって新規アンテナ設置などの場合に分配器を設置する際には、必要な分配数に予備の一端子を加えたのみの、必要最小限の分配数を選ぶ必要がございます。また分配器を交換して電波の分配数を増やす場合も、まずテレビアンテナとブースターから送られる電波レベルを確認し、追加する分配数に合わせて、ブースター側で増幅する電波レベルを増強するなど、個々の分配先に十分なレベルのテレビ電波が届くよう、アンテナ配線全体を視野に入れた調整が必要となります。
分配器の注意点2:衛星放送、特に新4K8K衛星放送には対応型の分配器を
現在の分配器は、大半が地デジおよび衛星放送の電波に対応できる機器になっております。ただ2018年(平成30年)にスタートした衛星放送の4K8K放送である「新4K8K衛星放送」では、従来の2K衛星放送よりも、周波数帯の高い電波が使用されています。
これは従来の2K衛星放送で使用されていた電波「右旋円偏波」では、追加される4K8Kチャンネルに割り当てられる周波数帯が不足したため、BS放送のNHK、広域民放の4Kチャンネルを除いた多くの4K8Kチャンネルに、新しく導入された「左旋円偏波」を割り当てたことによるものです。
衛星放送の電波は、12GHz(ギガヘルツ)帯の電波を、受信したBS/CSアンテナのコンバーターで、ケーブルでの送信に適した周波数帯に変換しております。この際、従来の右旋円偏波は「1032MHz(メガヘルツ)から2072MHz」に。4K8K放送の左旋円偏波は「2224MHzから3224MHz」の周波数帯に変換されるのです。
左旋円偏波は、2018年以前の2K対応BS/CSアンテナでは受信できないため、新4K8K衛星放送のチャンネルをすべて受信するためには、2K4K8K(左旋円偏波)対応のBS/CSアンテナが必要です。ただ現在のBS/CSアンテナは、ほぼすべてが2K4K8K対応となっております。
ただこの他にも、2K衛星放送時代の旧来の分配器やブースター、また場合によってはアンテナケーブルも、左旋円偏波が変換された2224MHzから3224MHzの電波には対応できないことがございます。
そのため、BS放送の一部チャンネルを除いた新4K8K衛星放送をご視聴になるためには、4K、8Kテレビと対応のBS/CSアンテナだけでなく、分配器やブースターなども「4K8K(3442MHz)対応」の機器を設置する必要がございます。また既存のアンテナ配線で新4K8K衛星放送をご覧になる場合には、分配器その他の交換が必要になるケースもございます。
新4K8K衛星放送のご視聴に必要となるBS/CSアンテナやアンテナ本体などの設備については、以下の各コラム記事をご確認ください。
「新4K8K衛星放送」ご視聴に必要な機器・完全チェック解説! テレビで全4K8Kチャンネルを見るための機材とは?
「新4K8K放送」を視聴するためのアンテナ工事、配線について徹底解説!
分配器の注意点3:BS/CSアンテナへの給電方法により分配器の機種を使い分ける
先ほども少しご説明しましたが、衛星放送の受信では、人工衛星から送信される12GHz帯の電波から、BS/CSアンテナのコンバーターにて周波数の変換を行っております。これは12GHz帯の電波をそのままケーブルで送信すると、減衰量が非常に大きくなるためです。
そしてコンバーターも周波数を変換する電子機器であるため、ブースターと同じく電源が必要となります。コンバーターの電源は、設置されたブースターの電源部。または各部屋にあるテレビ、レコーダーなど受信機器の入力端子から、アンテナケーブルを通じてアンテナ側へと供給されております。
そしてテレビ、レコーダーから給電する場合には。給電方法に応じて、分配器を「1端子通電(電流通過)型」「全端子通電(電流通過)型」で使い分ける必要が生じてまいります。「1端子通電型」の分配器は、出力端子側から入力端子側へと通電ことができる出力端子が1端子のみ。「全端子通電型」は、すべての出力端子から入力端子側に通電できる分配器になります。
1端子通電型の分配器は、BS/CSアンテナへの給電をブースターから行う。または屋内にある特定のテレビ、レコーダー一台から常に給電し続ける「常時給電」を行う場合に利用されます。
常時給電の場合は、給電するテレビなどの機器を、1端子通電型分配器の通電可能な出力端子に接続し、そのテレビでBS/CSアンテナの電源設定を「オン」にすることで、アンテナ側へと常に給電し続けることになります。したがって給電していない屋内のその他のテレビ、レコーダーにも衛星放送の電波が届き、視聴できることになります。
ただ近年では節電のため、住宅内のテレビ、レコーダーなどで衛星放送を受信するときのみに、BS/CSアンテナ側へと通電する形式が主流となっております。この場合は機器側の電源設定を「オート」に設定することで、個々のテレビやレコーダーの電源を入れた、または衛星放送を受信するときのみ、アンテナ側へと給電する形式になります。
この場合、1端子給電型の分配器では、給電できる端子に接続されたテレビやレコーダーの電源が入っていない場合、アンテナ側に給電できないため、それ以外のテレビなどで衛星放送を視聴できなくなります。そのため全端子通電型の分配器を設置し、住宅内のすべての機器から、必要なときのみBS/CSアンテナ側へ給電できる設備を整える必要があるのです。
ただ1端子通電型の分配器は、全端子通電型よりも低価格になるため、ご自宅にBS/CSアンテナを設置しない。またBS/CSアンテナへの常時給電方式を採用する、ブースターから給電するなどの場合には、1端子通電型の分配器を使用することがございます。
ご自宅で使用される分配器については、BS/CSアンテナを設置するかどうか、またBS/CSアンテナへの給電方法、将来的なBS/CSアンテナ設置や分配数の増設なども考慮して、1端子通電型か全端子通電型かをお選びになる必要がございます。
なおBS/CSアンテナの電源設定については、以下のコラム記事でも詳しくご説明しております。
BS/CSアンテナには電源が必要? テレビから衛星放送用アンテナに電源設定を行う方法
分配器の注意点4:使用しない予備の出力端子はダミー分配器で蓋をする
前述の通り実際の住宅では、例えば住宅内のアンテナコンセントが4カ所である場合には、5分配器を設置するなど、必要な分配数に予備の1端子をプラスした分配器が使用されます。そして普段は使用されない予備の出力端子には「ダミー抵抗器(終端抵抗器)」という、いわば端子のフタのようなものを設置しておく必要がございます。
これは、使用されない出力端子からの電波漏れや、外部からの電波混入を防止するためです。分配器に外部からの電波が混入すると画面が乱れる原因になるほか、テレビ電波が漏れると、ご自宅のスマートフォンや無線LANなどの電波障害の原因となってまいります。
特に新4K8K衛星放送の電波は、前述のように周波数帯が高いため、無線LANやスマートフォンなどの電波と競合しやすく、電波障害(通信障害)の原因にもなってまいります。したがって新4K8K衛星放送をご視聴になるお住まいでは、分配器の予備出力端子にダミー抵抗器を設置することが必須となりますので、ご注意ください。
分配器の注意点5:分配器のカスケード接続(タコ足配線)はできるだけ避ける
「カスケード(cascade)」とは、主に水が階段のように落ちる小さな滝を意味する英語です。それに由来し、主にLAN配線などで、接続を中継するハブ同士を配線内に複数、設置する「タコ足配線」に似た配線を「カスケード接続(多段接続)」と呼びます。
アンテナ配線では、分配器によって分配されたケーブルの先を、別の分配器で分配する。さらにその先にも分配器を設置するといった形が、カスケード接続に該当します。
しかしすでにご説明した通り、テレビアンテナの分配器では、送信される電波は分配する数によって、元の電波レベルより何分の一の形で、等分に分配されます。したがって分配器の先に分配器を接続すると、何分の一になった電波レベルを、さらに何分の一に分配することになり、テレビなど機器に届く電波レベルが、必要なレベルに届かないことも十分に考えられます。
そのため分配器のカスケード接続は、基本的には避けたほうがよろしいでしょう。また各部屋のアンテナコンセントの先で、テレビとレコーダーなど、複数の機器にテレビ電波を送りたい場合には、必要最小限の分配数の分配器を用いる。後述するケーブル一体型やブースター内蔵型の分配器を使用する。また一台の機器の入力端子にアンテナコンセントからのケーブルを接続した後、同じ機器のアンテナ出力端子から、短いケーブルでもう一台の機器の入力端子に接続するなどの接続方法をおすすめいたします。
分配器の注意点6:アンテナコンセントの先で分配する場合には適した機種を
前項の話と重なりますが、アンテナ配線で分配器により各部屋のアンテナコンセントへ分配された電波を、室内で別々のテレビ、レコーダーなどに分配したい場合には、それに適した分配器を使用する必要がございます。
このような場合、分配器の入出力端子から直にケーブルが伸びている、ケーブル一体型の分配器を使用すれば、端子部での電波の減衰を抑えられ、無駄無く室内の各機器へと電波を分配できます。ただ室内でケーブル一体型の分配器を使用する場合は、ケーブルが短いと接続が難しくなる一方、長すぎても電波の減衰を招くため、アンテナコンセントからテレビなどの設置位置まで、適切な長さの製品を選択する必要がございます。
他にも価格はやや割高になりますが、ブースター内蔵型の分配器を使用すれば、分配による電波レベルの低下を補強することができます。
いずれにせよ各部屋のアンテナコンセントの先でテレビ電波を分配する場合には、必要最小限の分配や適切な機器の使用で、できるだけ電波レベルを無駄にせず、場合によっては電波を増幅する必要もございますので、どうかご注意ください。
分配器の注意点7:購入時に分波器、分岐器と間違えない
アンテナ配線に使用される機器には、分配器と名称、形状が酷似した「分波器」「分岐器」という機器があり、購入の際に間違えられることが多くなっております。分波器、分岐器は、使い方も分配器によく似ておりますが、性能はまったく異なるため、分配器として使用することはできません。分配器をお求めの際には、お間違えのないようくれぐれもご注意ください。
分波器は、見た目は2分配器やケーブル一体型のものとほぼ同じです。しかしその用途はまったく異なり、地デジとBS/CSアンテナを設置した現場で、混合器(混合ブースター)によって一本のケーブルにまとめられた地デジ、衛星放送の電波を、テレビなど機器の直前であらためて二本のケーブルへと分離させ、地デジ、BS/CSそれぞれのチューナー端子へ接続するための機器になります。
分岐器は、1個の入力端子(IN)と複数の出力端子を持ち、入力されたテレビ電波をそれぞれの出力端子から送り出すという、分配器とほぼ同じ役割の機器であり、見た目も分配器とほとんど変わりがございません。分岐器が分配器と異なる点は、出力端子に、メインの「OUT」が1個と、1個から4個の「分岐端子、枝分かれ(BL)」端子が存在することです。
そして入力された電波を、出力端子から均等に分配する分配器とは異なり、分岐器では、例えば入力された電波のうち、90パーセントをOUT端子から出力し、残りの10パーセントを分岐端子で分配するといった形になります。
この分岐器は、一般の戸建て住宅で使われる機器ではなく、大型マンションやビルなど、一棟に数多くの部屋がある建築物で、屋上に共用テレビアンテナを設置して、建物内の各部屋に電波を送る場合に使用されます。
このような建物では、屋上のテレビアンテナから一階まで太い同軸ケーブルを通し、そこから各階、各部屋へと、ケーブルを複雑に分岐させて、テレビ電波を送信する配線が行われます。そのためケーブルの長さによる電波の減衰も考慮して、各階に必要な電波レベルを厳密に計算し、無駄なく分配できるよう、中心のケーブルから必要なレベルのみの電波を分ける分岐器が使用されるのです。
なお、分配器と分波器、分岐器については、以下のコラム記事でも詳しくご説明しております。
テレビアンテナの電波を各部屋に分岐する方法は? 分配器と分波器の違い・接続方法や選び方
アンテナ工事の「分配器」とは何?「分波器」「分岐器」との違い
分配器の注意点8:分配器の寿命は10年程度。適切な交換を
住宅のアンテナ配線に接続された分配器は、常にテレビ電波を各部屋へと分配し続ける他、場合によってはテレビなど機器側からBS/CSアンテナへ通電する経路にもなります。そのため分配器の内部回路は、長年の使用により消耗してまいります。
分配器の寿命は、大手メーカーによる高品質な製品でも、一般的には「10年程度」と考えられております。実際には分配器に大きなトラブルが発生することもなく、10年を大きく超えて使い続けられるケースもございます。ただ基本的には、設置から10年以上が経った分配器は、アンテナ機器や配線のメンテナンスを行われた際などに、交換を考えられることがおすすめといえます。
まとめ
以上のように分配器は、複数台のテレビが設置される現在の戸建住宅において、アンテナ配線に必須の機器であると言えます。その設置方法も、アンテナ配線のうち、アンテナ側からのケーブルと各部屋のケーブルを中継する部分に取り付ける、比較的、簡単なものになります。
しかし分配器の設置については、類似した機器である分波器、分岐器と間違えないことはもちろん、アンテナやブースターから送られる電波レベルに適した分配数。送信するテレビ電波の種類。またテレビ側からBS/CSアンテナへの給電方法などによって、適切な機器を選択する必要がございます。
なお分配器および、分配器の先で接続されるアンテナコンセント(テレビコンセント)については、以下の各コラム記事で詳細をご説明しております。
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