新築戸建て住宅に設置する地デジ、BS/CSテレビアンテナの性能や機種の選び方は? 工事の費用相場も業者別に解説(中編)
本記事では、新築戸建て住宅へとお引っ越しされる前に完成させておくべき地デジやBS/CS衛星放送のテレビアンテナ設置工事について、現場の条件ごとに適した各種アンテナの性能や機種、モデル。また機種ごとのアンテナ設置方法と、それぞれの工事費用の相場を解説してまいります。
戸建て住宅の新居を建てられた方が、お引っ越し後の快適な生活のため、あらかじめ行っておくべき工事のひとつが、テレビ放送を視聴するための各種工事です。現在では地デジ放送、衛星放送(BS放送、CS放送)の各チャンネルを視聴する方法も、アンテナの設置だけでなく、ケーブルテレビ(CATV)、光テレビの開設といった方法もございます。
ただ現在でもテレビを視聴する方法としては、衛星放送の有料チャンネルやNHKの受信料を除けば、永続的に無料でテレビ放送を視聴できるテレビアンテナが主流となっております。
ただ、テレビアンテナの取り付けでテレビ放送を視聴するためには、あらかじめテレビアンテナの設置、およびブースターや分配器などの機器を含めた、アンテナから各部屋のアンテナコンセントまでの配線を完成させておく必要がございます。
そして実際のアンテナ工事に当たっては、まず現場の電波状態や周辺環境で安定して受信できることはもちろん、新居の見た目や風雨など自然環境への強さなど、お客様のご要望に適したアンテナモデル、および住宅内での設置位置を決めることが第一歩となります。
当コラムでは、新築戸建て住宅のテレビアンテナ取り付けに関して、一般的に選択できるテレビアンテナ機種の種類、モデルと、受信性能、デザイン性や自然環境への強さなど、各アンテナ機種の特徴。一般的な本体価格や設置費用などを、2023年(令和5年)度の最新データに基づいて、徹底解説いたします。
なお「新築戸建て住宅へのテレビアンテナ設置」をテーマにして詳しくご説明すると、内容が多岐に渡るため、当コラムページでは、同テーマを「前編」「中編」「後編」の三本の姉妹記事に分けて解説いたします。本コラム記事は「中編」にあたります。
前編にあたる以下のコラム記事では、新築戸建て住宅にてテレビ放送を視聴する方法(テレビアンテナ設置、ケーブルテレビ、光テレビ)の比較や選択のポイント。また新築住宅でのテレビアンテナ工事に必要となる、ブースター、分配器など各種機器を含めたアンテナ設置、配線工事の基礎知識についてご説明しております。
新築戸建て住宅への地デジ、衛星放送テレビアンテナ設置工事費用の相場とは? 可能な工事の種類についても徹底解説(前編)
そして後編に当たる以下のコラム記事では、地デジ、衛星放送の各種アンテナを設置できる、新築住宅内の各部分についてご説明しております。
新築戸建て住宅への地デジ、衛星放送用テレビアンテナ設置工事でアンテナ取り付けが可能な住宅の位置を全解説!(後編)
各コラム記事をご確認いただくことで、戸建て物件のご新居へと引っ越される前に行っておくべき、テレビ放送をご視聴になるための準備について、ご視聴方法のご選択から、テレビアンテナ設置にあたって新築物件で必要となる配線などの各種工事。そして地デジ、衛星放送用アンテナモデルを選ぶための性能の基準や、アンテナモデルの種類と価格。新築物件で各種アンテナを設置できる位置と、各位置のメリット、デメリットまで、新築戸建て住宅へのテレビアンテナ設置について、一通りご理解いただけることと存じます。
戸建て住宅に設置できるテレビアンテナの基本性能について
新築戸建て住宅にテレビアンテナを設置する場合に、重要になるのは、やはりアンテナ本体の性能です。
地デジ、BS/CSともテレビアンテナの設置に当たっては、安定した受信を実現するアンテナ本体の受信性能はもちろん、ご新居の外観にマッチするデザイン性。風雨などに強くアンテナ寿命が長くなる対候性など、現場の条件やお客様のご要望に合致する、さまざまな要素が重要になります。
以下、テレビアンテナを選ぶに当たって重要となる、主な性能の要素についてご説明いたします。
なお、各アンテナの性能を理解する上で必要となる地デジ、衛星放送の基礎知識については、以下の各コラムをご参照ください、
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは
受信性能
地デジアンテナの場合、本体の受信性能は「素子数(相当)」と「動作利得(ゲイン)」で表されます。
「素子(エレメント)」とは、地デジアンテナにおいて、地デジ電波を受信するパーツのことです。魚の骨のような形をした古典的な地デジアンテナの「八木式アンテナ」では、魚の小骨に当たる短い横棒が素子であり、外部からその数を見て取れることができます。
この素子の数は同じ八木式アンテナでもモデルによって異なり、その数で受信性能が決まります。各モデルのスペック表などにも「14素子」「20素子」など、素子数が明記されております。
また「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」など、外部から素子が見て取れないタイプの地デジアンテナでは、素子数を基準にした受信性能を「20素子相当」などの形で表記します。
この素子数(相当)は、アンテナを設置する現場の電界地域をはじめとする、地デジの電波状態に対応した機種を選択します。
例えば受信できる地デジ電波レベルが80㏈(デシベル)以上になる強電界地域では、8素子から14素子。80㏈から60㏈の中電界地域では、14素子から20素子。60㏈以下の弱電界地域では、20素子から26素子、また個々の素子が高性能で27素子、30素子などのモデルもある高性能アンテナ(パラスタックアンテナ)を使用します。
なお20素子(相当)のモデルであれば、工事の工夫により強電界地域から中電界地域で使用できる他、弱電界地域の一部でも設置できることがあり、標準的な受信性能モデルとして利用されております。
また地デジアンテナの受信性能を示すもう一つの基準「動作利得」とは、素子の数によってアンテナが受信できる電波レベルに対して、アンテナから出力できる電波レベルを示すもので、単に利得、または英語でゲイン(gain)とも呼ばれます。
動作利得は主に、地デジアンテナの受信感度が高まる前方の角度での受信感度を示す数値と言えます。この点に関しては、次項の「指向性」で詳しくご説明いたします。また動作利得の単位は電波の強度を示す㏈で表されますが、その数値は、基準となるアンテナとの出力レベルの差を「常用対数」の計算によって表したものになります。この点について詳しく説明すると長くなりますので、後述する別コラム記事をご確認ください。
衛星放送用BS/CSアンテナの受信性能を示す基準には、円盤状の部分である反射器(ディッシュ)で一点に集められる電波のレベルを示す「アンテナ利得(㏈)」。コンバーター部で人工衛星からの電波を、テレビ電波に適した周波数帯へと変換する効率を示す「コンバーター利得(㏈)」。コンバーターが電波の周波数帯を変換する際に、雑音(ノイズ)が発生する割合を示し、数値が低いほど高性能になる「コンバーター雑音指数(㏈)」。純粋な電波の利得「G」と、「不必要な雑音(ノイズ)の「T」の比率を表すもので、数値が高いほど利得が高く、ノイズが少ない高品質な電波を受信できることを示す「性能指数、G/T比(㏈)」。コンバーターが電波の周波数を変換する際、基準となる信号の「局発」が安定しないと変換された周波数も安定しなくなりますが、この周波数の変動を「位相雑音」というもので表した数値であり、低いほど高性能となる「コンバーター局発位相雑音」などがございます。
ただBS/CSアンテナは基本的にどれも同じ構造のパラボラアンテナになるため、メーカーごとに性能が向上する工夫を凝らしてはいるものの、基本的にはどのメーカー、モデルのアンテナであっても、各基準の性能に極端な違いは生じません。
BS/CSアンテナの受信性能に違いが生じる要素としては、ディッシュ部の大きさが挙げられます。ディッシュ部の直径が大きくなるほど受け止められる電波の量が多くなるため、必然的に受信性能が高まることになるのです。
なお一般戸建て住宅向けのBS/CSアンテナは、通常は45型(ディッシュ有効径の直径が約45センチ)ですが、衛星放送の電波状態がやや悪いエリアでは、50型、60型などやや大型のモデルが使われることもございます。
地デジ、BS/CSアンテナとも、新築住宅に設置する機種、モデルの選択にあたっては、まず現場の電波状態に適した受信性能のモデルを選ぶことが第一と言えます。
以上の各アンテナの受信性能については、以下の各コラム記事でも詳しくご説明しております。
UHFテレビアンテナ設置の性能を決める「素子」とは? 地デジアンテナ取り付け工事で高性能になる素子数の選び方を徹底解説
地デジ用テレビアンテナ(UHFアンテナ)のモデルによる素子数の違いは? 高性能モデルは何素子数か?
地デジ用テレビアンテナ工事にて設置する電界地域に最適な受信性能は「何素子数」タイプか? アンテナ機器の選び方を徹底解説!
地デジアンテナの性能を示す「利得(動作利得)とは? 素子数との違いなどの基礎知識を徹底解説!
衛星放送用BS/CSアンテナの種類と性能とは? 地デジテレビアンテナとの違い、設置工事の方法から機種の選び方まで徹底解説!
指向性
テレビアンテナにおける指向性とは、受信する電波が届く方向に対して、アンテナ本体でも特定の方向(主に正面)を向けた場合にのみ、受信性能が高まる性質のことを言います。
地上波放送である地デジ放送では、日本各地の地上に設置された電波塔から発信される電波を、衛星放送では、地上からは天空の一点に静止して見える「静止衛星」から直進的に送られる電波を、それぞれ地デジ、BS/CSのアンテナで受信することにより、各テレビ放送を視聴することになります。そのため地デジアンテナは付近の電波塔など地デジ電波が届く方向、BS/CSアンテナは人工衛星の方向へと正確に向ける必要がございます。
地デジアンテナの場合は、どのモデルも設計上、受信性能が高まるほど、指向性が鋭くなるという性質がございます。この指向性の高さには、特定の方向で受信性能が高まるだけでなく、それ以外の方向から届く余計な電波をカットすることで、安定した受信を可能にするといったメリットも存在します。
地デジアンテナの指向性は「半値幅」という数値で表されます。この半値幅とは、アンテナの受信性能がもっとも高くなる方向を基準として、そこから角度を左右にずらし、受信性能が最大値の半分まで低下する角度を示したものです。したがって素子数が多く、受信性能が高い地デジアンテナほど、半値幅が狭くなります。
そのため現場に届く地デジ電波のうち、NHK、広域民放と、一部の都府県に存在する独立放送局の地方チャンネルで、電波塔の方向が大きく異なり、両者の角度がアンテナの半値幅を越えてしまう場合には、地方チャンネルを受信するために、地方チャンネル専用の地デジアンテナを別個に設置する必要が出てまいります。
なお地デジアンテナの場合は、地デジ電波が届く方向を、半値幅に収まるようアンテナ角度を調整する必要があり、高性能な地デジアンテナほど半値幅が狭く、角度調整はやや難しくなります。しかし地デジアンテナの場合、基本的に調節するのは方位角(左右角)のみで、ミリ単位のような精密な調整は必要ございません。
一方、衛星放送を受信するBS/CSアンテナに関しては、人工衛星から直進的に送信される電波を、アンテナのディッシュ部で受け止めて反射させ、中央部にあるコンバーターに集めるといった構造上、指向性が非常に鋭く、方位角(左右角)と仰角(上下角)の双方で、角度調整を正確に行う必要がございます。
例えば日本から見て南西方向の東経110度に位置するBS放送、110度CS放送の電波を受信するBS/110度CSアンテナの場合、東経110度の方向へ正確にアンテナのディッシュ部を向ける必要があり、ミリ単位のズレでも受信性能が大きく低下することがございます。また日本国内の各地域によって、東経110度の方向は微妙に変わってまいります。
BS/CSアンテナは、南西方向を向いたベランダなど、安全に作業できる場所を確保できれば、業者に依頼せずご自分でのDIY設置も不可能ではございませんが、正確な角度調整には大変な手間がかかる面もございますので、ご自分での設置にはくれぐれもご注意ください。
総じて地デジ、BS/CSアンテナとも現場に適合する受信性能が重要ですが、特に地デジアンテナの場合、受信性能が高いモデルは指向性との兼ね合いから、選択できる機種や設置位置などに制限が生じることも考えられるため、やはり注意が必要といえます。
なお地デジアンテナ、BS/CSアンテナの指向性については、以下の各コラム記事でも詳細をご説明しております。
地デジのテレビアンテナで受信できる方向は指向性で決まる? アプリでアンテナの方向調整に最適な角度を調べる方法も徹底解説!
衛星放送用BS/CSアンテナの角度調整に重要となる「指向性」とは? 人工衛星の方向を確認するための「BSコンパス」アプリを使用する方法も徹底解説!
デザイン性
デザイン性にも配慮された近年の戸建て住宅では、住宅の外部に設置されるテレビアンテナにも、外観性が求められることが多くなります。
地デジアンテナでは、アナログテレビ放送の時代から使われる古典的モデル、八木式アンテナは受信性能は高い半面、屋根の上に立てる昔ながらの形状により、住宅の外観性や景観を乱してしまう面もございます。そのため国内の景観地域などでは、八木式アンテナの設置が制限されるケースもございます。
住宅の外観を乱しにくい、デザイン性に優れた地デジアンテナとしては、薄型で壁面やベランダ、また条件が整っていれば屋内空間にも設置できるデザインアンテナ。ポール状で住宅の装飾にも見えるユニコーンアンテナがございます。ただこれらのアンテナは、受信性能では八木式アンテナに一歩及ばない面もございます。
BS/CSアンテナはパラボラアンテナであるため、基本的な構造、形状はどのメーカー、モデルの製品もほぼ同じとなります。そして本体色は太陽光に影響されにくい白色系が中心になりますが、近年では太陽光への耐性が強い塗料を用いた黒などのカラーバリエーションもございます。そのため目立たない色を用いることで、住宅のデザイン性にマッチさせることもできます。
地デジ、BS/CSのアンテナとも、使用する機種に加え、姉妹記事の後編でご説明する、戸建住宅への設置位置を工夫することで、住宅の外観や景観に対する影響を、大きく抑えることが可能になります。
対候性
テレビアンテナではデザイン性と並んで、受信性能以外で重要となる性能が対候性、すなわち風雨や大雪、また海沿いの潮風など、自然環境への耐性になります。テレビアンテナは屋外でも、主に屋根の上など高所に設置されるため、風雨や積雪などの影響を受けやすく、自然環境の厳しい現場では、経年劣化により寿命が短くなる。アンテナトラブルが発生しやすくなるなどの問題が生じてまいります。
特に地デジアンテナでは、旧来の八木式アンテナが、その形状や屋根の上への設置から自然環境に影響されやすく、環境の厳しい現場では老朽化しやすく寿命が短くなる傾向がございます。一方、薄型で壁面やベランダに設置されるデザインアンテナ。ポール状で風雨を受け流しやすいユニコーンアンテナは、外観性だけでなく、対候性が高く寿命が長くなるといった点も大きなメリットになります。
また八木式アンテナでも近年では、素材の改良による軽量化や構造の強化、防水、防さび性能の向上や、素子部を短くするといった工夫により、対候性を高めた高耐風、塩害用、雪害用などのモデルが存在します。
BS/CSアンテナは、ディッシュを持つ性能から風雨などに影響されやすく、さらにミリ単位の角度のズレが受信性能を低下させるという弱点もございます。ただBS/CSアンテナにも、ディッシュ部に無数のパンチングホールを設置する工夫の他、各部分の構造の強化により、高い耐風性能を実現したモデルも用意されております。
このようなアンテナ機種を選ぶことにより、自然環境が厳しいエリアでも、アンテナの経年劣化やトラブルのリスクを抑えることが可能となっております。
新築戸建て住宅に設置される主な地デジアンテナ機種とは?
ここでは現在、戸建住宅でのアンテナ設置に使用される主な地デジアンテナ機種と、それぞれの特徴についてご説明してゆきます。
八木式アンテナ
すでに少しご説明しておりますが、八木式アンテナとは、矢印型の骨組みに短い横棒の素子が複数ついた、魚の骨に似た形状の古典的な地デジアンテナです。八木アンテナ、八木・宇田アンテナなどとも呼ばれます。
主な設置方法は屋根の上に「屋根馬」という土台の金具をワイヤーで固定し、そこに立てたマスト(支柱)の先に設置するという形です。他にも専用の固定具を取り付けて、壁面や軒先、ベランダの内外、また軒下に吊り下げる形の設置も可能です。
八木式アンテナの特性は、前述のように素子数の幅が広いことから、さまざまな電界地域に対応できる点です。通常モデルの八木式アンテナでは、強電界地域向けの8素子、中電界地域から弱電界地域向けの14素子、20素子などのモデルがございます。
また特に八木式アンテナのような素子が露出したアンテナは「素子アンテナ」と呼ばれ、そうでない機種に比べて受信性能がやや高いという特性がございます。さらに主に屋根の上に設置されることでも、周辺の障害物などに影響されにくくなり、後述の高性能アンテナを含めて、地デジアンテナ機種の中ではもっとも高い受信性能を誇るという点になります。
さらに昔ながらのアンテナ機種で設計などが完成されているため、本体価格や設置費用ももっとも低価格になります。BS/CSアンテナを設置する場合も、同じマストの下部に設置できるため、シンプルでまとまりのいい設置が可能となります。
一方でデメリットとしては、現在の地デジアンテナの中では大型で屋根の上に設置されるため、風雨や雪、また鳥が留まるなどの影響を受けやすく、経年劣化が進行しやすい。それに伴うトラブルも生じやすいという点がございます。ただこれらの問題については、設置エリアの環境に合わせて、前述した高耐風や雪害用、塩害用モデルを使用することで、ある程度の軽減が可能です。
またその形状から住宅のデザイン性や景観を乱しやすく、景観地域などの条例によって設置できないこと。またアンテナの一部が隣家の敷地にはみ出す「越境問題」が生じることなどもございます。
他にも片流れ屋根など特殊な形状の屋根では、屋根の上への設置が難しいこともある。屋根の上に太陽光パネルを設置している場合は、パネルに影を落として発電に悪影響を与える。屋根の上など高所に設置されるため、メンテナンスなどを専門の業者に依頼する必要がある、などの点が挙げられます。
八木式アンテナの一般的な価格は、素子数や、素材の違いによる対候性などによって異なってまいりますが、通常の14素子モデルで3,000円程度、20素子モデルで4,000円程度から、耐久性の高いモデルでは12,000円程度になってまいります。
また半値幅の一例として、実際の国産有名メーカーの機種における数値では、14素子モデルで34度から57度、20素子モデルで28度から52度になっております。
総じて、八木式アンテナをおすすめできるケースとしては、
・主に中電界地域から弱電界地域で、安定した地デジ受信性能を重視したい。
・アンテナ取り付け工事の費用を安く抑えたい。
といった場合になります。
八木式アンテナについては、以下のコラム記事でも詳細をご説明しております。
地デジテレビアンテナの長老「八木式アンテナ(八木アンテナ)」とは?
高性能八木式アンテナ(パラスタックアンテナ)
八木式アンテナでも、より高い受信性能をもつ高性能モデルは「パラスタックアンテナ」と呼ばれます。基本的な構造は八木式アンテナと同じですが、素子部分に「Ⅹ」字型の固定具を配置して、複数の素子を設置したものになっています。
パラスタックアンテナではこのⅩ字型の器具を1素子として数えますが、個々の素子の性能は通常の八木式アンテナより格段に高くなります。さらに素子数も、27素子、30素子などの多素子モデルがございます。また5素子などのモデルでも通常の八木式アンテナと大差ない受信性能を発揮し、アンテナ本体を小型化できるため、コンパクトな八木式アンテナを設置したい場合にも利用されます。
パラスタックアンテナのメリットは、地デジアンテナの中では最強と言える受信性能になります。そのため弱電界地域の中でも特に電波状態が悪いエリアをはじめ、隣接都府県の地方チャンネルを受信したい場合にも利用されます。
その他のメリット、デメリットは、通常の八木式アンテナほぼ同じですが、価格的には高性能な分、やや高価になります。
一例をあげると5素子モデルで3,000円から8,000円程度。14素子、20素子モデルで6,000円程度から、27素子、30素子では12,000円程度からとなり、ステンレス製など高品質素材のモデルでは、30,000円から50,000円程度のモデルもございます。
特に27素子、30素子などの高性能モデルは素子数が多い分、本体が大型化して重量も重くなるため、設置の条件が厳しくなり、風雨などの影響もより受けやすくなります。そして受信性能が高い分、指向性も鋭くなり、半値幅が狭くなるため、設置時には緻密な角度調整が必要となり、風雨などの影響によるアンテナ角度のズレで受信感度が下がりやすいといった弱点もございます。
やはり国産有名メーカーのモデルにおける、実際の半値幅の例を挙げると、5素子モデルで35度から56度。14素子モデルで26度から43度。20素子モデルで18度から35度。27素子モデルで15度から40度。30素子モデルで18度から29度になります。
基本的にパラスタックアンテナは、地デジの電波状態がかなり悪いエリア向けのアンテナと言えます。
なおパラスタックアンテナについては、以下のコラム記事で詳細を解説しております。
デザインアンテナ
デザインアンテナは、アンテナの本体部を主に長方形で薄型のケースに収めた地デジアンテナです。平面アンテナ、壁面アンテナ、薄型アンテナ、フラットアンテナ、ボックスアンテナ、ケースアンテナなどの別名もございます。
主な設置位置は住宅の壁面やベランダの内外ですが、現場の電波状態や住宅の建材などの条件が適していれば、屋根裏、天井裏空間など、屋内への設置も可能となります。場合によっては八木式アンテナと同じく、屋上のマストに固定されることもございますが、この場合、デザインアンテナのメリットがやや損なわれる問題も生じます。
デザインアンテナのメリットは、その名の通りカラーバリエーションも豊富でデザイン性が高いため、壁面などに設置しても住宅のデザインに調和し、外観性や景観を乱さないという点です。さらに薄型で壁面に設置されることから風雨などにも影響されにくく、経年劣化を軽減でき、寿命が長くなるという点も挙げられます。
他にもベランダなどへの設置であれば、ご自宅でのメンテナンスも行いやすい。太陽光パネルにも影響を与えず、越境問題もまず発生しないなどのメリットもございます。またデザインアンテナにはコンパクトモデルもあり、基本的には強電界地域向けの機種になりますが、窓際などへの室内設置も可能になります。
一方、デメリットとしては、受信性能が主に20素子相当、26素子相当のモデルか、強電界地域向けの小型モデルしか存在しない上、同素子数相当でも八木式アンテナに比べるとやや受信性能が低いなど、基本的に強電界地域から中電界地域向けの機種になる点です。
さらに設置位置が屋根の上より低くなるため、周辺の障害物などにも影響を受けやすく、高層建築物の近隣や住宅密集地などでは壁面への設置が難しくなることもございます。
またアンテナの設置費用が八木式アンテナに比べるとやや高額になる。壁面設置の場合は、壁に固定具を取り付けるため、壁面にビス穴を開ける必要が出るなどの点もデメリットと言えます。ただビス穴については、他のアンテナ機種であっても、壁面設置する場合には同じ問題が生じてまいります。
本体価格の具体例としては、20素子相当モデルで6,000円からブースター内蔵型で15,000円程度。26素子相当で8,000円からブースター内蔵型で18,000円程度となります。また半値幅の例では、20素子相当モデルで75度から86度。26素子相当モデルで71度から82度と、八木式アンテナに比べてやや広めになっております。
基本的にデザインアンテナは、
・強電界地域から中電界地域で、住宅の外観を乱さず、アンテナトラブルに強く寿命も長い地デジアンテナを設置したい。
方におすすめの機種と言えます。
デザインアンテナおよび後述するユニコーンアンテナについての詳細は、以下の各コラム記事をご参照ください。
地デジ用テレビアンテナ一番人気のデザインアンテナとは? 価格から工事費用、料金相場、失敗しない業者の選び方まで徹底解説!
台風対策に最適!地デジ「デザインアンテナ」と「ユニコーンアンテナ」とは?
この最小デザインアンテナがすごい!スカイウォーリーミニ(マスプロ電工)
ユニコーンアンテナ
ユニコーンアンテナとは、直径14センチ、高さ70センチ程度のほぼ円筒形のアンテナ本体を、マストの先に設置した形状の地デジアンテナです。日本三大アンテナメーカーのひとつである「マスプロ電工」社が2017年(平成29年)に発売開始した、2023年現在の地デジアンテナ最新機種であり、主な設置位置は屋根の上、また屋根の張り出し板(破風板)や壁面の高所になります。
ユニコーンアンテナは現在20素子相当モデルのみながら、落ち着いた白と黒のカラーバリエーションとスタイリッシュな形状から、高所に設置しても住宅のデザインや景観を乱さない。さらに風雨を受け流す形状により、厳しい気候環境にも強く、経年劣化を抑えられて寿命が長くなり、トラブルも発生しにくい。また太陽光パネルにも影響しにくく越境問題もほぼ発生しないなど、デザインアンテナと同じメリットをもつアンテナになります。
一方で屋根の上などの高所に設置できるため、周辺の障害物からの影響を受けにくく、住宅密集地などの条件でデザインアンテナが使用できない現場に設置しても、安定した受信が可能になることが多い。さらにマストの部分にBS/CSアンテナを設置できるなど、八木式アンテナのメリットをも兼ね備えたアンテナでもあります。
ただデメリットとしては、受信性能が20素子相当で、素子が露出しないタイプのアンテナであるため、八木式アンテナの20素子モデルからそれ以上のモデルに比べると受信性能が及ばず、基本的に強電界地域から中電界地域用のアンテナになること。また最新機種であることから、地デジアンテナの中ではもっとも設置費用が高額になることが挙げられます。
実際の販売価格では、店舗によって10,000円から15,000円程度になることが多いようです。また半値幅は83度から93度と、地デジアンテナモデルの中では広めになっております。
基本的にユニコーンアンテナは、主に強電界地域から中電界地域で、住宅の外観性やアンテナ本体の対候性を重視したいが、周辺環境からデザインアンテナの設置が難しく、また一定の受信性能も確保したい方におすすめの機種と言えます。
ユニコーンアンテナについての詳細は、以下のコラム記事に解説がございます。
地デジアンテナの最先端、ユニコーンアンテナとは? 特徴、メリット、工事費用の相場まで徹底解説!
・その他の地デジアンテナ
地デジアンテナでは、上記の主な3機種の他にも、いくつかのタイプがございます。
その中のひとつ、室内アンテナは、その名の通り、室内に設置することを前提としたアンテナであり、窓際などに置く卓上タイプや、薄型のシートを壁や窓などに貼り付けるペーパータイプが存在します。
取り付け方も室内でテレビなど受信機器に接続するだけと、非常に簡単です。また価格的にも1,000円台からブースター内蔵の高性能モデルでも10,000円台と低価格ですが、このようなモデルは通常の屋外設置型モデルに比べると受信性能が非常に低く、基本的に強電界地域でしか使用できません。また受信感度も安定しないことがあるので、基本的には簡易的な地デジアンテナと考えたほうがよろしいでしょう。
他にも、屋外に設置される地デジアンテナモデルでは、先端がドーム状や円盤状などになった無指向性アンテナも存在します。このようなアンテナは「UFOアンテナ」などの別名もあり、一基で360度、全方向からの地デジ電波を受信できるため、設置位置の幅が広がる他、ノイズ除去などの機能も備えております。その半面、受信性能がやや低くなり、電波状態のよい地域でしか使用できないといったデメリットも存在します。
新築戸建て住宅に設置される主な衛星放送用BS/CSアンテナとは?
衛星放送用のBS/CSアンテナも、すでに少しご説明した通り、皿のような円盤状のディッシュ(反射器)で人工衛星からの電波を受け止めて中央部に集める形で反射させ、アームによって固定されたコンバーター部の一時放射器に集める仕組みのパラボラアンテナです。
人工衛星からの電波は長距離を直進するため、12GHz(ギガヘルツ)帯と非常に周波数が高い電波になり、そのままケーブルで送信すると減衰が激しいため、コンバーターにより右旋円偏波は1032MHz(メガヘルツ)から2072MHz、左旋円偏波は2224MHzから3224MHzの周波数帯に変換して送信します。そのためBS/CSアンテナにはコンバーターを作動させるための電源が必要となり、主に配線部のブースター、またはテレビ、レコーダーなど受信機器の入力端子から、アンテナケーブルを通じて給電する形になります。
衛星放送用のパラボラアンテナには、東経110度に位置するBSデジタル放送用の放送衛星、および110度CSデジタル放送(スカパー!)の通信衛星からの電波を受信するための「BS/110度CSアンテナ」。また東経124度、128度の通信衛星からの電波を受信する、124度128度CSデジタル放送(スカパー!プレミアムサービス)用の「プレミアムサービス専用アンテナ」。そしてこれらすべての衛星からの電波を受信できる「マルチアンテナ」の3種類がございます。
ただ、現在の主な衛星放送はBS放送と110度CS放送(スカパー)であるため、一般的に使用されるBS/CSアンテナは、BS/110度CSアンテナになります。それ以外で特に「スカパー!プレミアムサービス」のチャンネルをご覧になりたい方が、専用アンテナまたはマルチアンテナを設置することになります。
また2018年(平成30年)には、衛星放送の4K8K放送である「新4K8K衛星放送」が、BS放送、CS放送にそれぞれ4K、8K放送のチャンネルを追加する形でスタートしております。この新4K8K衛星放送では、従来の衛星放送に使用されていた電波「右旋円偏波」では新規チャンネルに割り当てられる周波数帯が不足したため、BS放送のNHK、広域民放にあたる無料4Kチャンネルを除く、大半の4K8Kチャンネルで「左旋円偏波」という新しい電波が導入されました。
そのためすべての4K8Kチャンネルを受信するためには、BS/CSアンテナも、右旋と左旋、両方の電波を受信できる2K4K8K対応BS/CSアンテナが必要となります。現在のBS/CSアンテナはほぼすべて2K4K8K対応型ですが、2018年以前に設置されたBS/CSアンテナは、多くが右旋の電波しか受信できない2K対応型になるため、4K8K放送をすべて受信するためには、4K8K対応アンテナへの交換が必要となります。
また新4K8K衛星放送の受信のためには、4K8K対応BS/CSアンテナや4K8Kテレビの他、配線に設置されるブースターや分配器、また場合によってはケーブルも、4K8K(3442MHz)対応型に交換する必要がございます。
前述の通り、BS/CSアンテナは人工衛星からの直進的な電波をディッシュで受け止め、的確に反射しなければならないため、受信する電波によって東経110度や124度、128度へと正確に向ける必要があり、ミリ単位の角度の狂いでも受信感度が大きく低下いたします。
したがって戸建て住宅では、それぞれの人工衛星の方向(南西から南南西)へとBS/CSアンテナを正確に向けることができる位置を選んで設置する必要が生じます。
またBS/CSアンテナはどれも基本的な構造が同じため、メーカー、モデルによる受信性能にさほどの差はございません。受信性能はディッシュ部の直径で決まり、戸建住宅では主に45型が用いられます。
ただ日本国内でも人工衛星からの距離が遠くなる北部や南端部、離島部などではやや電波レベルが弱まるため、50型、60型、75型など大型のモデルが選ばれることもございます。大型モデルでは悪天候により衛星放送の電波が乱れる「降雨減衰」「降雪減衰」にも強くなりますが、半面、風雨などの影響を受けたアンテナ角度のズレなど、トラブルが生じやすくなる面もございますので注意が必要です。
他にも前述のように、外観性に配慮したカラーバリエーション。構造の工夫で耐風性能を高めた高耐風モデルなどが存在するため、ご自宅でBS/CSアンテナを設置できる位置をご判断の上、受信環境やご要望に適したモデルを選ばれることをおすすめいたします。
BS/CSアンテナや各モデルについての詳細は、以下の各コラム記事をご参照ください。
台風対策に最適! 究極の高耐風BS110度CSアンテナ「BC453SG」(DXアンテナ)
雨や雪が降ると衛星放送(BS放送、CS放送)のテレビ番組が映らなくなる原因「降雨減衰」「降雪減衰」とは? BS/CSアンテナによる対策は?
BS/CSアンテナには電源が必要? テレビから衛星放送用アンテナに電源設定を行う方法
「新4K8K衛星放送」ご視聴に必要な機器・完全チェック解説! テレビで全4K8Kチャンネルを見るための機材とは?
まとめ
新築戸建て住宅に設置できる地デジアンテナ、衛星放送用BS/CSアンテナの性能や種類、および各アンテナモデルとそれらの特徴。各アンテナの設置に適した条件などは、以上の通りになります。
冒頭でも申しあげた通り、当コラムは「新築戸建て住宅への各種テレビアンテナ設置」についてご説明する、3本のコラム記事のうち「中編」にあたるコラムです。
まず戸建て住宅で地デジやBS放送、CS放送の各チャンネルを視聴する各種の方法。そして新築戸建て住宅でのテレビアンテナ設置に関して、必要となる基本的な配線や機器などの工事については、以下の「前編」を。当コラムでご説明した各種テレビアンテナを、実際の戸建て住宅で設置できる場所やそれぞれのメリット、デメリットについては「後編」をご確認ください。
新築戸建て住宅への地デジ、衛星放送テレビアンテナ設置工事費用の相場とは? 可能な工事の種類についても徹底解説(前編)
新築戸建て住宅への地デジ、衛星放送用テレビアンテナ設置工事でアンテナ取り付けが可能な住宅の位置を全解説!(後編)
当あさひアンテナでは、本コラムで解説した各種テレビアンテナについて、国産有名メーカーの高性能最新機種をご用意し、アンテナ本体価格および基本的な設置具、ケーブルなどの部材、防水加工などをセットにした、標準機種の基本設置工事価格(税込み)を、八木式アンテナ、BS/CSアンテナでは15,000円、デザインアンテナは20,000円からでご案内しております。
他にもユニコーンアンテナやデザインアンテナ最小モデル「スカイウォーリーミニ」。高性能パラスタックアンテナ。BS/CSアンテナでは各種ディッシュサイズや高耐風モデル「BC453SG」など、さまざまなモデルをご用意しており、お客様のあらゆるご要望に対応いたします。
また各種アンテナの設置完了後は、業界最長クラスとなる「10年保証」もご用意し、長期にわたるご安心をお約束いたします。
新築戸建て住宅のお住まいにおいて、現場の条件やご要望に適したテレビアンテナモデル、設置位置の選択などに関するご相談は、当あさひアンテナのフリーダイヤル(0120-540-527)。またはメールフォーム、LINEアカウントまで、どうぞお気軽にお寄せくださいませ。