地デジアンテナを設置する高さの設定で重要となるハイトパターンとは? 地デジ電波を受信するために適切なアンテナの高さとは?
地上デジタル放送の地デジ電波、UHF周波数帯を送信する際、アンテナ位置が高くなるにつれ電波の強弱が変化するため、必ずしもアンテナの高さを上げるべきではない、ハイトパターン、ハイトパターンピッチの豆知識と、テレビ放送をご覧になるため、できるだけベストな高さを計算する方法とは? など、工事に必要なお役立ち情報を解説します。
2023年(令和5年)現在、地デジ放送(地上デジタル放送)を受信するためのアンテナには、さまざまな機種が登場しております。
屋根の上の高所に設置される、アナログ放送の時代から使われる古典的アンテナながら、現在でも地デジ電波の受信性能ではもっとも高性能を誇る「八木式アンテナ」。そして主に壁面などやや低い位置に設置されるため、受信性能はやや低くなる場合もあるものの、外観性や対候性に優れる「デザインアンテナ」。そしてポール状のスタイリッシュな形状で屋根の上などの高い位置に設置でき、八木式アンテナとデザインアンテナの長所を兼ね備える「ユニコーンアンテナ」がございます。
このような地デジアンテナの各機種について、ある程度の知識をお持ちの方であれば、地デジアンテナの受信性能に関しては、屋根の上などの高い位置に設置でき、高性能機種も多い八木式アンテナがもっとも高く、次いで同じく屋根の上や羽目板などに設置できるユニコーンアンテナ。主に壁面に設置されるデザインアンテナに関しては、住宅の見た目を乱さず風雨などにも強いといったメリットは大きいものの、受信性能では前の二機種にはやや引けを取るというイメージが強いことと思われます。
つまり地デジアンテナの受信性能は、設置位置が高いほど有利になる、というのが、一般常識として知られております。
ただ、この知識については、決して間違いではございませんが、やや不正確な部分もございます。
というのも、地デジ電波には「ハイトパターン」というものがあり、場合によっては、現在の地デジアンテナ設置位置よりやや高度を下げることで、受信感度が高まるケースもあるのです。
当コラムでは、この「ハイトパターン」をはじめ、地デジ電波を適切に受信しつつも、風雨などへの耐性や、外観性の向上など、お客様のご要望を踏まえて、最適となる地デジアンテナの設置位置を特定するための情報をご説明いたします。
地デジ放送の基礎知識と電波の特性について
各現場における地デジアンテナの適切な設置位置をご説明するには、まず地デジ放送に関する基礎知識をご理解いただく必要がございます。
ここでは、まず地デジ放送とその電波について、簡単にご説明してまいります。
地上デジタル放送の仕組みとは?
地デジ放送(地上波デジタル放送)は、日本国内の各地に設置された電波塔から周辺地域にテレビ電波を送信する、現在の日本で唯一の「地上波放送」と呼べるテレビ放送です。
その放送局には、公共放送であるNHKと、全国ネットワークを行う広域民放や、一部の都府県に存在してその都府県内を基本的な放送エリアとする地方独立局(地方チャンネル)などの民間放送局がございます。基本的に日本国内であれば、ほとんどの地域において、地デジアンテナを設置することで、無料で視聴(NHK受信料を除く)できるため、現在ではほとんどの世帯に普及しております。
今日の地デジ放送(地上デジタル放送)は、2003年(平成15年)12月1日正午より放送スタートしたものです。
当初は、1953年(昭和28年)に開始された、それ以前の地上波放送「アナログテレビ放送」との移行期間として、双方が並行して放送されておりました。その後、2011年(平成23年)7月24日に、アナログ放送は完全停波により放送終了したことで、地上波放送は地デジ放送のみとなりました。
現在の地デジ放送は、日本各地に設置された、例えば東京都墨田区の東京スカイツリーなどの大掛かりな送信所と、その他のエリアをカバーすべく各地に設置された中継局など、大小の数多くの電波塔から周辺地域に地デジ電波を発信し、日本国内の大半を放送エリアとしてカバーしているものです。
なお、かつてのアナログ放送と地デジ放送の仕組みの違いは、アナログ放送の時代は、テレビ放送の映像信号をそのまま電波の波長に変換して送信していたのに対し、地デジ放送ではデジタル化により、まず映像信号を「0」と「1」の情報に変換して、圧縮した情報を電波信号に変換して送信するという形になっています。
このアナログからデジタルへの放送形式の転換は、主に2000年初頭の、世界的なデジタル技術化への波と、携帯電話の爆発的な普及によるものです。それまでのアナログ放送で使用されていたテレビ電波の周波数帯は、
・NHK、広域民放用の「VHF(超短波:30MHz(メガヘルツ)から300MHz)」
・独立放送局(地方チャンネル)用の「UHF(極超短波:300MHzから3,000MHz(3GHz(ギガヘルツ)))」
というものでした。
しかし地デジ放送では、この広範な周波数帯を大きく削減し、UHF電波の中でも「470MHzから710MHz」までに圧縮しています。このことにより現在の地デジアンテナは、受信に対応できる電波から「UHFアンテナ」とも呼ばれます。ちなみにテレビ電波として使用されなくなったVHFおよびUHFの周波数帯は、現在のスマートフォン、携帯電話などの電波として利用されています。
このテレビ放送のアナログからデジタルへの転換期には、多くの住宅などで、旧来のアナログ放送用VHFアンテナから、地デジアンテナ(UHFアンテナ)への交換。またテレビ本体も旧来のアナログ放送用から、地デジ放送のフルハイビジョンに対応できる機種への買い替えが必要となりました。
ただデジタル化によって、電波に乗せる情報量を大幅に圧縮したことにより、使用する周波数帯も大きく削減したにもかかわらず、送信できる情報量は格段に増したため、地デジ放送では、アナログ放送時代に比べて格段の高画質となる2Kフルハイビジョン(FHD)放送や、データ放送や番組表、双方向性など、従来にない多機能を実現しております。
なお地デジ電波に関しての詳細は、以下のコラム記事でもご説明しております。
地デジ電波(UHF帯)の電波の性質と「電界地域」は?
かつてのアナログテレビ放送では主に超短波であるVHF帯の電波が使われていたのに対し、現在の地デジ放送は極超短波にあたるUHF帯の一部周波数帯のみになっております。
このUHFとVHFの電波の性質は、周波数帯が近いため、非常に似たものになっています。ただ正確には、VHFの電波の波長(電波が描く波の高さ)は1メートルから10メートルであるのに対し、UHF帯は10センチから1メートルと、より短い波長になっております。
電波は波長が短いほど高周波数ということになり、高周波数帯の電波になるほど、送信できる情報量が多く直進力が高まる半面、距離による減衰(電波レベルの弱まり)も大きくなり、遠距離に届きにくくなります。また直進力が高いということは、電波が建物などの障害物にぶつかった場合、その向こう側に回り込む力が弱くなります。
そのため現在の地デジ電波(UHF帯)は、かつてのアナログ放送のVHF帯に比べると、高層ビルや山地などの障害物に影響されやすく、電波塔から見てその向こう側の地域には電波が届きにくくなっています。なおUHFの電波の減衰に関しては、電波塔からの送信の出力を高める。電波塔の数を増やすなどの方法で対策が取られています。
ただ周波数が高い(波長の短い)電波は、波長に合わせた小型のアンテナでも受信できるため、地デジアンテナでは、従来の八木式アンテナでも小型化が実現している他、デザインアンテナ、ユニコーンアンテナなどニューモデルの登場にもつながっております。
なお地デジ放送の受信に関しては、かつてのVHF波のアナログ放送が、電波塔からの距離が遠くなるほど、ゴーストなど画面の乱れが生じたのに対し、地デジ放送の場合は、電波が弱まる(テレビなど受信機器に届いた時点で33㏈(デシベル)以下)ことでブロックノイズなどの画面の乱れが生じ、電波レベルが一定以下になるとまったく受信できなくなります。
このような条件から、日本国内でもその地域で受信できる地デジ電波レベルは、付近にある電波塔からの距離。また山地などの地形の影響などによって変化してまいります。この国内でのエリアによる地デジ電波レベルの違いを分類したものが「電界地域」になります。
この電界地域は主に「強」「中」「弱」で分類されますが、学術や法的な定義ではないため、やや変動することもございます。
ただ一般的には、電波レベルの単位「㏈」において、そのエリアで受信できる地デジ電波が「80㏈以上」である地域が強電界地域にあたり、主に電波塔が視認できるレベルの周辺で、山地などの障害物がない地域になります。
そして受信できる電波レベルが「80㏈から60㏈」のエリアが中電界地域で、主に障害物などがない強電界地域の周辺にあたります。
電波レベルが「60㏈」以下の地域は弱電界地域に当たり、主に電波塔から見て中電界地域よりさらに遠く。また強電界地域や中電界地域から山地などを隔てた向こう側のエリアに当たります。
さらに弱電界地域よりより遠距離で周辺に電波塔がない。山間部や離島部などで電波が届きにくいといった要因により、受信できる地デジ電波レベルが「33㏈」を大きく下回って地デジ受信が困難なエリアは「難視聴地域」と呼ばれます。このような地域では、パラスタックアンテナと呼ばれる高性能の地デジアンテナで受信が可能な場合もございますが、主にケーブルテレビ(CATV)を用いて、地デジをはじめとするテレビ放送を視聴しております。
基本的に、戸建住宅の現場などに地デジアンテナを設置する場合は、主にこの電界地域の「強」「中」「弱」を基準に、設置する地デジアンテナの機種や設置位置などを決めることになります。
ただこの電界地域の分類は、大まかな目安でしかございません。例えば同じ中電界地域内でも、電波塔からの距離などにより、受信できる電波レベルが「80㏈」の現場と「60㏈」の現場があり、双方では使用できる地デジアンテナ機種や設置位置が変わってまいります。
また強、中の電界地域内でも、高層建築や山林の付近に当たるなどで、局地的に地デジ電波が受信しにくくなるケースもあり、このような現場では各電界地域の基準よりも、受信できる電波レベルが低くなることもございます。
他にも地デジ電波は、一年を通した季節の変化により「6㏈」程度の変動がございます。また雨や雪などの悪天候にも影響を受け、電波レベルがやや低下いたします。
なお安定して地デジ放送が視聴できる範囲の地デジ電波レベルは、理論上、テレビなどの受信機器に届く時点で「34dBから89dB」の間が適切となります。このレベルより低い、また逆に強すぎる場合は、映像の乱れや映らないといったトラブルが生じてまいります。
そして実際的には、気候や天候、その他の電波レベルへの影響を考慮して、住宅内の受信機器に届く時点での電波レベルは、おおむね「47dBから81dB」の範疇が適切とされ、最低でも「40㏈」以上が必要となります。
なお電界地域の詳細や、各電界地域に適した地デジアンテナ機種については、以下の各コラム記事にて解説しております。
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは?
徹底解説!強・中・弱の地デジ電界地域に適したテレビアンテナ工事の選び方、調べ方とは?
「ハイトパターン」とは? 地デジアンテナと設置高度の関係
アナログテレビ放送の時代、VHF帯のテレビ電波は、アンテナを地上から高い位置に設置するほど、受信状態がよくなりました。
VHFの電波は俗に「見通し距離」と呼ばれ、アンテナを設置する現場から、電波塔迄直線で結んで地形などに遮られない状態であれば、良好に受信できます。そのため例えばVHFアンテナ設置の位置を二倍の高さにすると、補足できる電波も二倍になるとされていました。
そして現在の地デジ放送用UHFアンテナでも、基本的にはアンテナの設置位置は高所が適しているとされております。
これは前述のように、UHFの電波はVHFよりも高層建築物や地形など障害物の影響を受けやすく、障害物が近辺にある現場では受信できる地デジ電波レベルが低下してしまうため、障害物の影響を受けにくい、できる限り高所に設置するのです。
ただ地デジ電波(UHF)の場合は、VHFの電波とは異なり、ただ高所に設置すればいいというものではございません。最適な地デジの受信感度を確保するためには、ときには設置可能な高さよりやや低い位置に調整するなどして、適切な高度を特定する必要がございます。
これは、テレビアンテナの性質である「ハイトパターン」というものに由来します。
UHF帯の「ハイトパターン」とは?
テレビアンテナの「ハイトパターン」とは、地デジアンテナを設置する高度によって、地面から高くなるにつれて山と谷を描くように、一定の間隔で受信できる地デジ電波レベルが強くなったり弱くなったりする特性のことです。
なぜこのような現象が起こるかというと、地デジなど電波塔から送信される電波を受信するためのアンテナは、電波塔から直接、アンテナに届く電波(直接波)と、いったん地面にぶつかって反射した電波(大地反射波)の双方を受信することになります。
正確にご説明するとやや難しくなるのですが、この電波塔からの直接波と、地面に当たって跳ね返り、地面から登るような形になる大地反射波が、アンテナに届く時点で合わさった合成波となり、互いに打ち消し合うなどの形で複雑に影響し合い、アンテナの設置高度が高くなるにつれて、一定の間隔で波のように、地デジ電波レベルが強くなる高度と、弱くなる高度が交互に現れるのです。
このハイトパターンが生じる間隔のことを「ハイトパターンピッチ」といい、これは電波の周波数が高くなるほど狭くなり、正確な感覚の幅は、電波塔と地デジアンテナとの距離によっても変わってまいります。
UHF波を用いる地デジ放送では、このハイトパターンピッチが2、3メートル程度と短くなることもございます。例えばハイトパターンピッチが3メートルの場合は、地面から徐々に高度を上げるほど電波状態が強くなり、3メートルの時点でいったん最高レベルになります。
しかし3メートルの位置からさらに高度を上げてゆくと、逆に電波レベルが徐々に弱まってゆき、4.5メートルの時点で電波レベルがもっとも弱くなります。そして4.5メートルを超えると徐々に電波レベルは回復してゆき、6メートルにいたると再度、電波レベルはもっとも強くなります。以降、高度が3メートル上がるごとに、同じ電波レベルの強弱を波のように繰り返してゆくことになります。
つまりこの場合は、周辺の障害物などの影響を除けば、地上から3メートル、6メートル、9メートルなど、3の倍数メートルの地点が、地デジアンテナ設置に適した高さになるのです。逆に7.5メートルや10.5メートルなど、ハイトパターンピッチで谷に当たる高度になってしまうと、いくら高い位置でも受信感度は低くなってしまいます。
そのため地デジアンテナの設置に当たっては、周辺の障害物などの影響を考慮した高度も必要ですが、現場のハイトパターンピッチを把握して、ピッチの山になる高度に合わせるため、場合によっては地デジアンテナの高さをやや下げるなどの微調整が必要となるのです。
ちなみにアナログ放送時代のVHFの電波では、周波数の低さからこのハイトパターンピッチの間隔が長く、25メートルや30メートルなどになりました。このピッチを超える高さに当時のVHFアンテナを設置することは、現実的にはまず不可能であったため、実質的にはアンテナ高度を高くするほどピッチの山に近づき、受信できるVHF電波レベルが強くなったというわけです。
地デジアンテナの指向性と電波の方向
地デジアンテナの設置位置を決める要素は、設置する高度やハイトパターンの他、現場へと届く地デジ電波の方向も重要になります。
なぜならば、現在の地デジアンテナはどの機種もすべて「指向性アンテナ」にあたるためです。
指向性とは、アンテナ本体を特定の方向へと向けることで、受信感度が高まる性質のことをいいます。そしてこの指向性は、アンテナの受信性能が高くなるほど強くなります。つまり受信性能が高い地デジアンテナほど、電波塔の方角など、電波が送られてくる方向へと正確に向ける必要があり、その角度がずれてしまうと、受信感度も大きく低下してしまうのです。
ちなみにアンテナの指向性は「半値幅」という数値で表されます。半値幅とは、まずアンテナをもっとも受信性能が高くなる角度へと向け、その後、アンテナを左右にずらすことで、受信性能がちょうど半分になる角度の範囲で表されます。
現在の地デジアンテナの受信性能は、主に、八木式アンテナで言えば短い横棒の部分に当たる、電波を受信するパーツの数である「素子(エレメント)数」もしくはそれに準ずる「素子数相当」の数値で表されます。
現在の地デジアンテナ標準機種である「20素子」以下の素子数であれば、ほぼ電波の方向を向いていれば、さほど厳密な角度の調整は必要ございません。ただパラスタックアンテナと呼ばれる、性能の高い素子を用いた、30素子などの高性能モデルであれば、指向性も非常に高まるため、設置時には緻密な角度調整と、風雨などによるアンテナ角度のズレが生じない頑丈な固定が必要となります。
ちなみに地デジアンテナ各モデルの正面(電波側に向ける方向)は、八木式アンテナであれば、導波器(ディレクター)の先端で反射器(リフレクター)がない側、形状で言えば矢印型の先端、または魚の骨型の頭の側とは反対の側になります。
デザインアンテナは平面型の表の部分。ユニコーンアンテナではポール状の裏側に当たる平面になった面の反対側になります。
このような性質のため、地デジアンテナは住宅の屋根の上への設置であれば、角度調整も比較的、簡単になります。ただ壁面などへ設置する場合は、電波が届く側の壁面を選ぶ必要がございます。
たとえばデザインアンテナの壁面設置で、住宅のちょうど北側に電波塔が位置している場合が、北側の壁に設置することが最適となります。逆に南側の壁では、住宅そのものに電波が遮断されてしまい、どれだけ高性能なデザインアンテナモデルであっても、安定した地デジ受信は難しくなります。また東側、または西側の壁にデザインアンテナを設置したい場合は、デザインアンテナの左右片側の身を固定して、扉を開くような設置方向により、電波の方向へと向けることになります。
なおアンテナ設置の現場に地デジ電波が届く方向は、必ずしも電波塔の方角とは限りません。地デジ電波が高層建築物にぶつかって反射し、方向が変わった「反射波」が十分な電波レベルで現場に届く場合もあり、この反射波を地デジ受信に使用できるケースもございます。
地デジ電波の「水平偏波」と「垂直偏波」とは?
日本各地の電波塔から送信される地デジ電波のうち、およそ90パーセントは、地面と水平の波長で送信される「水平偏波」になります。ただ残りの約10パーセントの電波塔では、地面から垂直の波長となる「垂直偏波」で送信されます。
地デジ電波塔の付近に携帯電話などの基地局があり、それぞれの電波の周波数が近い場合、電波が入り混じってしまう「混信」が発生し、地デジの受信不良などさまざまなトラブルの原因となります。ただ水平偏波と垂直偏波など、波長の角度が異なる電波は、混信しにくいという性質がございます。そのため携帯電話の基地局などに近く、混信のリスクが生じる地域の地デジ電波塔では、垂直偏波を使用することで混信を避けているのです。
そして地デジアンテナの側でも、水平偏波、垂直偏波それぞれに合わせた対応が必要となります。
基本的に地デジアンテナは電波の波長に合わせた角度に設置すれば問題なく受信できるため、八木式アンテナであれば、設置する角度を90度変えることで、双方の電波に対応できます。
デザインアンテナも同じ方法で両方の電波に対応可能ですが、設置方向を90度傾けることで、デザインアンテナのメリットであるデザイン性に問題が出ることもございます。そのためデザインアンテナには水平偏波用の他、垂直偏波用の機種も用意されています。
ユニコーンアンテナについては、2023年現在では、水平偏波用のモデルしか存在しません。
なお水平偏波、垂直偏波についての詳細は、以下のコラム記事でもご説明しております。
アンテナ設置に適した設置位置のまとめ
上記の事項をまとめると、地デジ電波の受信に適したアンテナ設置位置の特定方法は、主に以下の通りとなります。
・1:現場に十分なレベルで届く地デジ電波の方向を特定する。
・2:周囲の障害物などに影響を受けにくいアンテナ設置の高度を決定する。
・3:現場のハイトパターンを測定し、もっとも受信感度が高まる設置高度に微調整を行う。
以上の条件に加えて、お客様のご要望なども踏まえ、素子数などによる受信性能を含めて、現場に適した地デジアンテナ機種、モデルや設置位置の選択を行うことになります。
そのためテレビアンテナ設置業者は、実際のアンテナ設置工事の前に、必ず現地の電波調査を行うのです。
業者が行う地デジアンテナの電波調査や見積もり、また現場の電波状態に適した素子数モデルの地デジアンテナなどについての解説は、以下の各コラム記事にある情報をご確認ください。
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各地デジアンテナ機種の設置位置とハイトパターン、電波レベルの関係
ここでは2023年現在、地デジアンテナとして使用される「八木式アンテナ」「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」の3モデルについて、ハイトパターンや現場の電波レベルに関係する受信性能や設置位置を中心にご説明してゆきます。
八木式アンテナ
すでに少し説明しておりますが、八木式アンテナは、矢印のような骨組みに、地デジ電波を受信する部分である短い横棒「素子(エレメント)」をいくつも設置した、魚の骨に似た形状の地デジアンテナです。アナログテレビ放送時代から使用されていた、古典的なテレビアンテナでもあります。
このように素子が露出したアンテナは「素子アンテナ」と呼ばれ、素子が外部から見えないデザインアンテナ、ユニコーンアンテナなどのモデルに比べると、同素子数(相当)であってもやや受信性能が高くなるという特徴がございます。さらに八木式アンテナは、モデルごとに、設置する素子の数によって受信性能を調整でき、各電界地域に幅広く対応できます。
総じて八木式アンテナは、現在でも地デジアンテナの中では受信性能がもっとも高い機種になります。素子別の主なモデルとしては中電界地域を中心に多くのエリアで使用できる20素子の他、強電界地域向けの4素子や8素子。中電界地域向けの14素子などの他、弱電界地域向けの高性能モデルも存在します。
高性能モデルは、各素子部分にⅩ型の器具と複数の素子を設置した形の「パラスタックアンテナ」と呼ばれるモデルです。Ⅹ型の個々の素子が通常モデルより高性能となる上、27素子や30素子などの多素子モデルもあり、弱電界地域でも対応できます。半面、パラスタックアンテナは前述のように指向性が高くなる他、本体のサイズが大型になるというデメリットもございます。
設置位置に関しては、住宅の屋根の上に立てたマスト(支柱)の先端に固定することが主になり、周囲の障害物に影響を受けにくく、ハイトパターンピッチへの調整も行いやすくなります。他にも専用の器具によりベランダの内外、壁面などに設置する。軒先から吊り下げるなどの設置方法もございますが、ハイトパターンや周辺環境に合わせた調整などがやや難しくなります。
その他のメリットとしては、古典的な機種であるため、地デジアンテナ機種の中では、本体価格や設置費用がもっとも低価格であるという点が挙げられます。
逆にデメリットでは、屋根の上の設置位置と形状から、住宅のデザイン性や景観を悪化させることがある。また風雨などの自然環境に影響を受けやすく、経年劣化が進行しやすいことにより、耐用年数が比較的、短くなるなどの点が挙げられます。
八木式アンテナ、パラスダックアンテナについては、以下の各コラム記事でも詳細を解説しております。
地デジテレビアンテナの長老「八木式アンテナ(八木アンテナ)」とは?
デザインアンテナ
デザインアンテナは、アナログ放送から地デジ放送への過渡期である2009年(平成21年)頃より急激に普及した、地デジアンテナの第二世代といえるモデルです。形状は主に長方形などデザイン性に優れた薄型で、カラーバリエーションも豊富です。
主なメリットは、住宅の壁面などに設置されることで、目立たず住宅の見た目や景観にもマッチする。設置位置と形状から風雨などの気候にも影響されにくく、耐用年数が長くなるなどの点で、現在の地デジアンテナではもっとも人気の高い機種になります。
しかし受信性能に関しては、主に「20素子相当」と、最大で「26素子相当」のモデルになります。さらに同素子数相当でも素子アンテナである八木式アンテナに比べると、やや性能が低くなってまいります。そのため基本的に強電界地域から中電界地域向けの地デジアンテナモデルになります。
設置位置もデザイン性を活かすため、住宅の壁面やベランダの手すり部などになりますが、設置できる場所は、地デジ電波が届く方向に向いた壁面や、ハイトパターンに合わせた高度などの条件により限られてまいります。
また設置位置から周辺の障害物などにも影響を受けやすく、高層建築や山地などの周辺、住宅密集地などの条件では設置できないケースも生じてくるなど、設置できる条件がやや厳しくなるといった面もございます。
それ以外の設置位置としては、八木式アンテナのように屋根の上のマストに固定することで、角度調整やハイドパターンに合わせた高度の調整は行いやすくなりますが、デザインアンテナのメリットがやや低下するという面もございます。また現場の電波状態、住宅の屋根材、断熱材などが電波を通しやすいとうった条件が整えば屋根裏、天井裏などの屋内空間にも設置できます。
他のデメリットとしては、八木式アンテナに比べると、本体価格や設置工費がやや割高である。壁面への設置では、壁に固定具を取り付けるため、壁面にビス穴を開ける必要があるなどの点がございます。
デザインアンテナと、後述するユニコーンアンテナの詳細は、以下の各コラム記事にも解説がございます。
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台風対策に最適!地デジ「デザインアンテナ」と「ユニコーンアンテナ」とは?
ユニコーンアンテナ
国内の大手アンテナメーカー「マスプロ電工」さんが、2017年(平成29年)に発売開始した、2023年現在、地デジアンテナの最新鋭モデルに当たる第三世代、それがユニコーンアンテナです。
マストの先に約70センチ程度の、ほぼ円筒形のアンテナ本体を設置した形状の、非常にスタイリッシュなアンテナで、カラーバリエーションは反射が少ないウォームホワイトとブラックブロンズの二色になります。
主な設置位置は、マストを利用して屋根の上に立てる。また専用の固定具によって、屋根の張り出し部である破風板や、住宅の壁面でも屋根に近い、高い位置になります。また受信性能は「20素子相当」のみになります。
ユニコーンアンテナのメリットは、そのデザイン性から屋根の上などに設置しても、住宅の見た目や景観に悪影響を与えにくい。またその形状から風雨を受け流すため、経年劣化が進みにくく、耐用年数が長くなるといった点が挙げられます。
そして地デジ電波の受信に関しては、20素子相当ながら、設置位置が高いため障害物に影響されにくく、現場のハイトパターンにも対応して受信性能が最大になる位置に設置しやすくなります。
そのため基本的には強電界地域から中電界地域向けのモデルになりますが、高層建築の付近や住宅密集地などの条件により、デザインアンテナが設置できない現場であっても、ユニコーンアンテナでは設置できるケースもございます。
総じて八木式アンテナとデザインアンテナのメリットを兼ね備えた機種と言えるユニコーンアンテナですが、デメリットには、受信性能では八木式アンテナの20素子モデルや高性能機種には及ばず、弱電界地域では使用できないことが多くなる。さらに地デジアンテナ機種の中では本体価格や設置費用が、もっとも高額になるという点がございます。
ユニコーンアンテナについては、以下のコラム記事でも詳細を解説しております。
地デジアンテナの最先端、ユニコーンアンテナとは? 特徴、メリット、工事費用の相場まで徹底解説!
まとめ
地デジアンテナの設置位置を決定する要素は、現場の地デジ電波強度(電界地域)と電波が届く方向、そして周辺環境とハイドパターンによる適切な設置高度になります。これらの要素は個々の現場によってさまざまに変わってまいりますが、すべてを総合することで、各現場で設置できる地デジアンテナ機種や、適した受信性能(素子数)モデルなども決まってまいります。
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