地デジ放送用テレビアンテナ、UHFアンテナ機種による素子数の違いとは? 高性能モデルや現場ごとに必要な素子数の機種を解説
地デジ放送用のテレビアンテナであるUHFアンテナでも、UHF波(地デジ電波)を受信するパーツである素子(エレメント)について、機種ごとの素子数や素子の性能、各電界地域用や高性能モデルの素子数など、メーカー公式サイトや運営サイトの情報を元に、主に素子数を基準にした、現場の受信条件ごとのアンテナ機種のおすすめを解説します。
地上波デジタル放送(地デジ放送)を受信する地デジアンテナの受信性能は、主に「素子(エレメント)」の数で決まります。
現在の地デジアンテナ機種には、主に「八木式アンテナ」「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」のラインナップになります。そして各モデルにも、製品ごとに本体サイズや対候性など、それぞれ独自の特徴やメリットが存在しますが、どのモデルにもカタログの性能一覧には、必ずと言っていいほど「素子数(相当)」の表記がございます。
基本的に地デジアンテナは素子数(相当)の数値が高いほど高性能になり、可能となる素子数やその上限は、地デジアンテナモデルによっても異なります。ただし素子数は数値が高ければよいというものでもなく、いわゆる「電界地域」をはじめとする現場の電波状態、そしてアンテナモデルや設置位置に最適となる素子数のアンテナを選ぶ必要がございます。
なお、「素子」の基本的な解説や、素子数以外で地デジアンテナの受信性能を決める要素については、当コラムの姉妹記事となる、
UHFテレビアンテナ設置の性能を決める「素子」とは? 地デジアンテナ取り付け工事で高性能になる素子数の選び方を徹底解説
そして実際に地デジアンテナを設置する現場の電波状態など、各種の条件に合わせた素子数のモデルの選び方は、
地デジ用テレビアンテナ工事にて設置する電界地域に最適な受信性能は「何素子数」タイプか? アンテナ機器の選び方を徹底解説!
の記事をご確認ください。
各コラムの内容は関連性が高いため、一通りお読みいただくことで、素子と各地デジアンテナモデルの関係を、より深くご理解いただけることと存じます。
そして当コラムでは、現在の主な地デジアンテナモデルについて、各モデルで可能となる素子数を中心とした特徴を、2023年(令和5年)度の最新データに基づいて解説してまいります。
当コラムをお読みいただければ、ご自宅で十分な地デジ電波レベルを確保しつつ、お好みの地デジアンテナモデルをご選択いただけるようになると存じます。
地デジ放送の仕組みと地デジアンテナで受信できる周波数帯(チャンネル)とは?
地デジアンテナを設置する各ご自宅などの現場において、適切なアンテナ機種および素子数のモデルを決めるには、まず地デジアンテナが電波を受信する仕組み、特に「電界地域」について理解する必要がございます。
現在の地デジ放送(地上波デジタル放送)は、かつてのアナログテレビ放送と入れ替わることを目的に、2003年(平成15年)12月1日に放送をスタート。アナログ放送と並行する移行期間を経て、2011年(平成23年)7月24日のアナログ放送終了(停波)によって、日本で唯一の「地上波放送」となったテレビ放送です。
この転換は、アナログからデジタル技術への転換という世界的な趨勢。そして日本国内での携帯電話の普及により、必要となる周波数帯の確保を主な目的に行われました。そのため、アナログ放送時代にテレビ放送の電波として使われていた「VHF(超短波)」と「UHF(極超短波)」の電波から、地デジ放送ではUHFの一部周波数帯にまとめられました。
そのため現在の地デジアンテナは「UHFアンテナ」とも呼ばれます。またUHFの電波は、周波数帯で言えば300MHzから3,000MHz(3GHz)までになりますが、地デジ放送に使用される周波数帯は、そのうち470MHzから710MHzまでです。
なおこれらの周波数帯は、各放送局に割り当てられるため、さらに複数の「チャンネル(周波数帯)」に分けられます。チャンネル(channel)とは本来、英語で「水路」「海峡」の意味で、そこから「通信路」「テレビなどの各放送局に割り当てられる周波数帯」の意味となり、現在ではテレビの各放送局に合わせる「チャンネル番号」の意味で定着しています。
テレビ放送に割り当てられる各周波数帯(チャンネル)は、かつてのアナログ放送では、VHFは1チャンネルから12チャンネルまで。UHFは13チャンネルから62チャンネルまでに分割されていました。しかしデジタル化により放送データの圧縮が可能となった地デジ放送では、UHF帯のうち13チャンネルから52チャンネルまでがテレビ放送に用いられています。
そのため現在の地デジアンテナの性能表において「受信チャンネル(ch)」の欄は「13chから52ch」になっております。これは地デジ放送であれば、すべてのチャンネルが問題なく受信できることを意味します。
地デジ電波の性質と強・中・弱の「電界地域」とは何か?
現在の地デジ放送、かつてのアナログテレビ放送とも「地上波放送」とも呼ばれます。
これは現在の地デジの大規模な送信所(電波塔)である東京スカイツリー、アナログ放送時代の送信所であった東京タワーなどをはじめ、日本各地の地上に設置された送信所や中継局など大小の電波塔から、周辺地域にテレビ電波を送信することに由来します。
この地デジ電波を、各住宅などに設置された地デジアンテナで受信することにより、地デジ放送が視聴できます。そして送信所、中継局などの地デジ電波塔は、日本国内の主要な市街地、住宅地などのエリアを中心に、各地に幅広く設置されているため、日本国内でも主要な地域であれば、ほぼ全域で視聴できるといっていいでしょう。
ただ地デジ電波に限らず、電波は発信元から遠ざかるほど電波の強さ(電波レベル)が弱まってゆきます。そのため近隣の中継局から離れたエリアになるほど、受信できる地デジ電波のレベルは低くなってゆきます。またUHFの電波は、アナログ放送時代の主なテレビ電波であったVHF波に比べると直進性が強いため、山地や高層建築物など地上の障害物により遮断されやすく、その影に当たるエリアではやはり地デジ電波レベルが弱まってまいります。
したがって日本国内でも、電波塔からの距離や地形の影響により、現場ごとに受信できる電波レベルに強弱が生じてまいります。この地デジ電波レベルの強度によって、おおまかなエリア分けを行ったものが、強・中・弱の「電界地域」です。
これは学問上や法的に定義されたものではないため、場合によっては異なることもございますが、一般的には、電波強度を示す単位「㏈(デシベル)」において、
・強電界地域:80㏈以上。
・中電界地域:80㏈から60㏈。
・弱電界地域:60㏈以下。
に分類されます。また国内でも一部には中継局から非常に遠い、山間部などで電波が遮断されるなどの要因によって、地デジ電波レベルが非常に弱く、地デジ受信が困難となる「難視聴地域」も存在します。
基本的に地デジアンテナは、エリアごとに、主に素子数などを基準とした、各電界地域向けの受信性能を持つ機種を使用します。
ただ例えば中電界地域でも、電波塔からの距離などエリアによって、受信できる地デジ電波が80㏈近い現場と60㏈近い現場があるなど、各電界地域内でも現場ごとの電波レベルの差があり、使用できる地デジアンテナや設置位置などの条件に違いが生じてまいります。
また前述のように、例えば強電界地域でも高層建築物など障害物の近隣では、局地的に地デジ電波レベルが80㏈以下になる現場も出るなど、実際の地デジ電波レベルは周辺環境によっても左右されます。
さらに地デジ電波レベルは一年を通して、気候、季節の影響により「6㏈」程度の変動が生じる。悪天候の際にもやや電波レベルが低下するなどの影響があるため、実際に設置する地デジアンテナの性能は、電界地域だけでなく、それらの条件を勘案したモデルを選択する必要がございます。
地デジ電波、および各電界地域についての詳細は、以下のコラムにも解説がございます。
地上デジタル放送の「地デジ電波」基礎知識
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは
現在の主な地デジアンテナ機種と素子数
ここでは2023年現在、使用される主な地デジアンテナ機種を、各モデルの素子数を中心に解説してまいります。
八木式アンテナ
主に住宅などの屋根の上に設置される、矢印状の骨組みに複数の短い横棒が装着された、魚の骨に似た外観の地デジアンテナです。アナログ放送時代から使用される古典的なテレビアンテナであるため、現在でもテレビアンテナと言えばこの形状のイメージがございます。
姉妹記事でご説明しておりますが、八木式アンテナは、素子が露出している「素子アンテナ」であるため、同素子数相当のデザインアンテナ、ユニコーンアンテナと比べても受信性能が高くなります。
さらに設置位置も、主に屋根の上に立てられたマスト(支柱、ポール)の先端になるため高さを確保でき、地デジ電波を遮断してしまう周辺の障害物に影響されにくくなり、受信感度もより高まります。
八木式アンテナはそのシンプルな設計から、設置できる素子数の範囲も幅広く、強電界地域向けの4素子や8素子から、中電界地域向けの14素子から20素子。弱電界地域向けでは最大28素子のモデルなど幅広い地域に対応できます。ただ素子数が多くなるほど、本体部に多数の素子を設置する必要があるため、本体のサイズは大型になってゆきます。
また通常の八木式アンテナの素子部分にⅩ型の金具を取り付け、複数の素子を設置した「パラスタックアンテナ」というモデルでは、個々の素子が高性能となる上、30素子モデルも実現できます。このパラスダックアンテナは、14素子程度でも八木式アンテナ通常モデルとほぼ同等の受信性能を発揮し、アンテナ本体のサイズを抑えられる利点もございます。ただ通常の八木式アンテナに比べると、指向性(特定の方向のみで受信性能が高まる性質)が非常に高くなるため、設置には電波の方向へ向けた緻密な角度調整が必要となります。
このように八木式アンテナは、他の地デジアンテナモデルに比べて設置できる素子数の上限が多く、アンテナ取り付け位置も高くなることから、2023年現在でも地デジアンテナの中では、もっとも高い受信性能を誇るモデルです。
設置位置に関しては、屋根の上に立てる他にも、専用の設置具を使用してベランダの内外や壁面に固定する。軒先から逆さに吊り下げるといった工法もございますが、設置位置が低くなると受信感度がやや下がるケースもございます。
他にも古典的モデルであるため、現在の地デジアンテナでは、本体価格や設置位置がもっとも低価格になるメリットもございます。
一方でデメリットとしては、昔ながらの形状と大きさから、屋根の上で目立ってしまい、住宅の見た目や景観に悪影響を与える。設置位置と形状から風雨などにも影響されやすいため、経年劣化が進みやすく耐用年数がやや短くなる。景観地域などでは条例により設置できないことがある。越境問題が生じやすいなどの点が挙げられます。
デザインアンテナ
デザインアンテナは、八木式アンテナに続いて2009年(平成21年)頃に普及しはじめた、第二世代といえる地デジアンテナです。
主に薄型、長方形のボックス形状で、カラーバリエーションも豊富でデザイン性に優れ、壁面に設置することで目立たず住宅のデザインにマッチするのが最大の特徴です。
そのメリットはスマートなデザインで壁面に設置されるため、住宅の外観や景観を乱さず、太陽光パネルにも影響を与えない点。それに加えて風雨などにも影響されにくく、耐用年数が長くなる。その他、八木式アンテナの形状に伴う問題が生じない点です。現在ではコンパクトモデルなども登場しており、メリットの豊富さから、現在の地デジアンテナでは一番人気のモデルになっております。
ただ受信性能に関しては、素子数相当で主に20素子相当から、最大でも26素子相当のモデルまでになります。さらに同素子数相当でも素子アンテナである八木式アンテナに比べると、やや性能が低くなってまいります。
そして主な設置位置も、屋根の上よりはやや低い壁面が選ばれることが多いため、周辺の障害物に影響を受けやすく、高層建築物の近辺や住宅密集地といった条件では設置できないケースもあるなど、受信性能では八木式アンテナに及びません。
他にも本体価格や設置工費が八木式アンテナよりやや高価になる。壁面設置の場合は、壁に固定具を設置するためのビス穴を開ける必要があるなどのデメリットもございます。
設置位置については壁面の他、ビス穴を開ける必要のないベランダの柵や手すり。八木式アンテナと同じく屋根の上のマストに固定する。また現場の電波状態や住宅の建材などの条件が整えば屋根裏、天井裏などの屋内空間にも設置可能です。ただこれらの設置位置も受信感度に大きく影響するため注意が必要です。
ユニコーンアンテナ
ユニコーンアンテナは、2017年(平成29年)に大手アンテナメーカー「マスプロ電工」さんが発売した、2023年現在の最新モデルにあたる第三世代の地デジアンテナです。
形状は長さ70センチ程度で、ほぼ円筒形のアンテナ本体部を、マストの先に直立させて設置するものになります。本体部には反射が少なく落ち着いたウォームホワイトとブラックブロンズの二色がございます。その受信性能は20素子相当で、主な設置位置は、屋根の上に立てる。また固定具により屋根の張り出し部である破風板や、住宅の壁面の高所になります。
ユニコーンアンテナのメリットは、スタイリッシュな外観から住宅の外観や景観を乱さない。ポール状の形状で風雨を受け流すため経年劣化が進みにくく、耐用年数が長くなる。景観地域などにも設置できて越境問題も生じにくい。太陽光パネルの邪魔にもなりにくい。マスト部分にBS/CSアンテナをセットで設置できるなどの点がございます。
特に受信性能については20素子相当ながら、設置位置を高くできるため周辺の障害物に影響されにくく、受信感度が安定します。そのため高層建築の近隣や住宅密集地など、周辺環境の影響によってデザインアンテナが使用できない現場でも、ユニコーンアンテナは設置できるケースが多くなります。
総合的にユニコーンアンテナは、八木式アンテナとデザインアンテナのメリットを兼ね備えた機種と言えます。
ただデメリットとしては、受信性能では八木式アンテナの20素子モデルからそれ以上の高性能機種には及ばないため、弱電界地域などでは使用できないケースが多い。地デジアンテナでは本体価格、設置費用がもっとも高額といった点がございます。
室内アンテナ
これは住宅の外部に設置するテレビアンテナとは違い、室内に設置できる小型サイズの地デジアンテナです。
窓際などに置いて使用する卓上型と、シート状のアンテナ部分を壁や窓などに貼り付けるペーパータイプがございます。また小型のデザインアンテナには室内用スタンドが付属した屋外・屋内兼用モデルもございます。
室内用アンテナは安いものでは1,000円台から、ブースター内蔵型など高性能モデルでも10,000円強と低価格であり、アンテナを室内に置いてテレビ、レコーダーと接続するだけと、設置も非常に簡単で、ご自宅でも可能となります。
ただ室内アンテナは室外用モデルに比べると受信性能が非常に低く、室内専用モデルは素子数表示がないものが多くなります。屋外・屋内兼用モデルでも4素子相当などのモデルが主となります。そのため基本的に強電界地域でしか使用できず、周辺環境などによっては受信が安定しない場合もございます。また基本的に室内アンテナは一台のテレビ、レコーダーにしか接続できません。
室内アンテナは、あくまで電波状態のよいエリアで、一時的な使用などに用いる簡易的なアンテナと考えるのがよろしいでしょう。
なお上記の各地デジアンテナについては、以下のコラム記事にも詳細がございますので、よろしければご確認ください、
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まとめ
各地デジアンテナモデルごとの特徴と、可能となる素子数、設置に適した条件などは以上の通りです。
電界地域をはじめとする実際の設置現場ごとの、具体的な素子数、アンテナモデルの選び方は、前述した姉妹記事でご説明しておりますので、そちらをご参照ください。
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