高利得、高性能な地デジ用パラスタックアンテナ徹底解説
弱電界地域用の地デジアンテナ高性能モデルで、八木式アンテナの一種であるパラスタックアンテナについて、受信性能を示す素子や動作利得の解説から、人気ランキング上位商品になる高性能モデルの素子数、使用が可能なエリアなど、高い受信性能に適した使用法を解説してゆきます。
現在、日本のテレビ放送にて一般的で基本となるものは、いわゆる地上波テレビ放送である地デジ放送(地上デジタル放送)です。
地デジ放送では、日本国内の各地に設置された電波塔から地デジ電波を送信しており、国内であればほぼ全域で、地デジアンテナを設置することにより、NHK受信料を除けば無料で地デジ放送を楽しむことができます。
そして2023年(令和5年)の現在では、地デジアンテナにも、昔ながらの「八木式アンテナ」に加え、デザイン性や対候性を高めた「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」などのニューモデルも登場しております。
ただこの地デジ電波も、電波塔からの距離や地形などの環境によって、日本国内の各地域でも受信できる電波レベルに違いが生じます。そのため地デジ電波のレベルが低いエリアであれば、高性能の地デジアンテナが必要となるケースもございます。
当コラムでは、地デジアンテナの高性能機種に当たる八木式アンテナの一種「パラスタックアンテナ」を中心に、地デジアンテナの受信性能を決める「素子」「動作利得」などの要素について。また各地デジアンテナ機種ごとの受信性能や高性能モデルを、2023年現在の最新データに基づいてご説明してゆきます。
地デジアンテナの受信性能を決める「素子数」と「動作利得」とは?
地デジテレビアンテナの受信性能を決める基準は、主に「素子数」と「動作利得(利得)」になります。これらは各地デジアンテナ本体のスペック表などにも必ず記されているものですが、その具体的な意味を、以下で説明してゆきます。
地デジアンテナの「素子(エレメント)」とはどの部分か?
地デジアンテナにおける「素子(エレメント)」とは、アンテナを構成する部品の中でも、電波を受信する部分のことです。
今日の地デジアンテナ(UHFアンテナ)のうち、古典的な機種である「八木式アンテナ」は、矢印のような骨格部分に、短い横棒がいくつも装着されたものになっております。その形状から魚の骨に例えられることも多い八木式アンテナの横棒部分が「素子」にあたります。
アンテナの構造でいえば、アンテナ本体の大部分を占める、地面と水平となる横棒の部分であり、電波を導く導波器(ディレクタ)に素子が並べられています。この素子数が多いほど、電波を受け止める性能が高まり、ノイズの影響も受けにくくなります。
そのため八木式アンテナの機種名やスペック表などでは、例えば20個の素子がついているモデルは「20素子八木式アンテナ」「20素子モデル」などの表記で、素子数が明記されています。
素子アンテナの「素子数」とそれ以外のアンテナの「素子数相当」とは?
前述のように、地デジアンテナでも、開発から百年近い歴史を持つ古典的な機種の八木式アンテナでは、外部から素子が見て取れ、その「素子数」は一目瞭然となります。そのためスペック表などの「素子数」だけではなく、本体を確認することでも受信性能が判断できます。
しかし近年の地デジアンテナ人気機種で、主に長方形をした薄型の形状で、住宅の壁面などに設置される「デザインアンテナ」。円筒形のポール状をした最新の地デジアンテナ「ユニコーンアンテナ」などでは、外部から素子を見て取ることができません。
このような外見で素子が見えないタイプの地デジアンテナでは、素子数の代わりに「素子数相当」という表記で受信性能を示します。
「素子数相当」とは、デザインアンテナなど素子が見えない地デジアンテナの受信性能を八木式アンテナと比較して、八木式アンテナにおける各素子数の性能と同等という意味で表記したものです。つまり「20素子相当」のデザインアンテナやユニコーンアンテナであれば、20素子の八木式アンテナとほぼ同レベルの受信性能になります。
ただ、八木式アンテナのように素子が露出して外部から見えるタイプのアンテナは「素子アンテナ」と呼ばれ、同性能でも素子アンテナではない機種に比べると、受信性能がやや高めになるという特徴がございます。
「20素子(相当)」の地デジアンテナを例に挙げると、同じ20素子のアンテナでも受信性能は一定ではなく、さまざまな条件によってある程度の幅がでます。そして素子アンテナである八木式アンテナは20素子の範囲でも高めの受信性能を発揮するのに対し、素子アンテナでないデザインアンテナ、ユニコーンアンテナは20素子でもやや低めの性能になるため、注意が必要です。
地デジアンテナの素子については、以下の各コラム記事でも詳細を解説しております。
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地デジアンテナの「動作利得(利得、ゲイン)」とは何か?
地デジアンテナの性能を示す指標で、素子の数と並んで大きな要素となるのが「動作利得」と呼ばれるものです。
電気工学で言う「利得」とは、「電気回路における入力と出力の比」を指します、英語では「gain」といい。そのまま「ゲイン」と呼ばれることもございます。地デジアンテナなどの場合は、アンテナが動作する際の利得であるため「動作利得」と呼ばれます。
地デジアンテナの動作利得は、アンテナの前方向(受信する側)における受信感度であり、アンテナが受信した電波に対し。アンテナから出力できる電波レベルの大きさを表します。すなわち、受信した電波に対する効率の良さを示すとも言えます。
地デジアンテナの動作利得を表す数値は、電波強度を示す「dB(デシベル)」になり、この数値は「基準となるアンテナ」との出力レベルを比較したものになります、つまり動作利得が「0㏈」であれば、基準アンテナと同性能ということになります。
動作利得の基準となるアンテナは「ダイポールアンテナ(ダブレットアンテナ)」と「アイソトロピックアンテナ」になります。
ダイポールアンテナとは、ケーブルの先に二本の直線のような導線(エレメント)を左右対称に設置したアンテナです。導線は前述した素子と同じ役割を果たします。八木式アンテナのような線状アンテナの基本形ともいえるもので、アンテナとしてはもっとも簡単な構造のものになります。このダイポールアンテナを基準とした利得を「相対利得」と呼び、利得の単位はダイポール(dipole)の頭文字から「dBd」、または通常の「dB」で表します。
アイソトロピックアンテナとは、点状のアンテナから上下左右の全方向に、同じ強度の電波を放射する、指向性を持たないアンテナです。実際にはこのようなアンテナは実在せず、現実のアンテナの性能を計るために仮定した、理論上のアンテナになります。このアイソトロピックアンテナを基準にした利得を「絶対利得」と呼び、アイソトロピック(isotropic)の頭文字から「dBi」と単位で表します。
この動作利得の数値が高いアンテナほど電波が受信しやすい、つまり受信性能が高いことになります。ただ動作利得の㏈数は「常用対数」の計算式で求められるため、例えば数値が二倍のアンテナは、単純に性能が二倍ということにはなりません。具体例を挙げると、動作利得が「3dB」であれば、その性能は基準アンテナの約2倍。「6dB」であれば約4倍。「20dB」であれば約100倍になります。
また実際の地デジアンテナの素子数と動作利得との関係としては、14素子(相当)以下のアンテナでは、その動作利得はおおよそ「5㏈以下」に。14素子から20素子(相当)のモデルでは、動作利得は「5㏈から10㏈」に。20素子から30素子(相当)では、動作利得は「7㏈から14㏈」に、素子数30以上のモデルでは、動作利得は「10㏈から18㏈」になります。
そして実際に設置された地デジアンテナの動作利得は、その素子数だけでなく、現場の地デジ電波レベル(強・中・弱の電界地域レベル)によっても数値が変わります。
そして動作利得に関してもっとも重要な点は、性能が高いからといって、ただ利得の数値が高いアンテナを選べばいいというものではないという点です。なぜなら、動作利得が高い(素子数が多い)アンテナは、その分、指向性も高くなるためです。
アンテナの指向性が高いとは、アンテナを向けて電波が受信できる方向が限られるということです。つまり指向性が高いアンテナほど、アンテナを電波の方向へと正確に向けることで高い受信性能を発揮する半面、アンテナの角度がわずかでもズレてしまうと、受信性能が大きく低下してしまうのです。
そのため動作利得が高い地デジアンテナを使用する場合は、設置時にアンテナを地デジ電波の方向へと正確に向ける必要がございます。
さらに台風などの豪雨や強風、また大雪や地震といった自然災害。場合によってはアンテナに鳥が留まるといったことでもアンテナの角度がずれてしまい、地デジ放送の受信が困難になることも起こり得ます。
このアンテナの指向性については「半値幅」という角度の数値で表示されます。これはアンテナの受信性能がもっとも高くある方向へと向けた場合を基準にして、その角度を左右にずらした時、受信性能が最大値の半分となる角度を表したものです。この半値幅が狭いアンテナほど受信性能が高い半面、わずかな角度のズレで受信感度が下がりやすいアンテナになります。
そのため、地デジアンテナの性能を選択する場合には、現場で受信できる地デジ電波のレベルに合わせて、指向性と受信性能のバランスを考慮したモデルを選ぶ必要がございます、
例えば、いわゆる強電界地域など、さほど高性能なアンテナでなくとも十分な地デジ受信が可能な現場であれば、素子数が少なめで動作利得の低い機種を使うことで、やや受信効率が低くなっても、指向性の低さにより受信範囲が広くなり、多少のアンテナ角度のズレなどには影響されにくくなり、総合的には安定した地デジ受信が実現できることになります。
逆に弱電界地域などになると、設置時の角度調整や、自然環境などの影響による角度のズレなどへの対策が必要となるものの、受信性能と指向性が高い高性能の地デジアンテナを設置する必要が出てまいります。
なお地デジアンテナの利得と指向性については、以下の各コラム記事にも詳しい解説がございます。
・地デジアンテナや無線通信用アンテナの性能を示す利得、動作利得とは何か? 素子数との違いなど地デジアンテナ基礎知識も解説
・地デジのテレビアンテナで受信できる方向は指向性で決まる? アプリでアンテナの方向調整に最適な角度を調べる方法も徹底解説!
アンテナ本体の受信性能以外で受信感度を決める要素
地デジアンテナの受信感度は、アンテナ本体の素子数や動作利得、モデルだけでなく、設置される環境にも大きく左右されます。
具体的には、強・中・弱の電界地域で分類される設置現場の電波レベル。そして付近に地デジ電波を遮断する高層建築や山地などが存在するといった周辺環境。アンテナを設置する高さなどの、障害物に影響されにくい位置になります。
基本的に地デジアンテナは、屋根の上などの高所に設置することで、周辺の障害物などに影響されにくくなり、受信感度では有利になります。そのためアンテナ機種では八木式アンテナ、ユニコーンアンテナが有利だといえます。
逆に壁面などやや低い位置に設置されることが多いデザインアンテナでは、障害物の影響を受けやすく、高層建築物の付近や住宅密集地などでは設置できないケースもございます。
ただこの条件については、デザインアンテナも屋根の上のマスト(支柱)に設置すれば受信感度が高まり、逆に八木式アンテナやユニコーンアンテナでも、壁面やベランダなどの低い位置に設置すれば受信感度的には不利となります。
地デジ放送の電波レベルと地デジアンテナの受信性能
現在の地デジ放送(地上デジタル放送)は、日本各地に設置された送信局、中継局などの電波塔から周辺の一帯に地デジ電波を送信し、の本国内の主要地域をカバーしている地上波放送になります。
現在の地デジ放送に使用される電波は「UHF(極超短波)」であり、その周波数帯である300MHzから3,000MHz(3GHz)のうち、デジタル化による映像データ量の圧縮により、470MHzから710MHzまでを使用しています。そのため現在の地デジアンテナは「UHFアンテナ」とも呼ばれます。
また電波塔から送信されたUHFの地デジ電波は、直進性が強いため、前述のようにビルなどの高層建築物、山地などの障害物にぶつかると遮断されてしまい、その向こう側には届きにくくなります。また地デジ電波そのものの強度も、発信元である電波塔から遠くなるほど、電波レベル(電波の強さ)が低下してゆきます。
この日本国内の地域ごとの、地デジ電波レベルのおおまなか違いを表したものが、先ほども少し記した強・中・弱の「電界地域」です。
電界地域は公式な定義ではないため、場合によっては異なることもございますが、一般的には、その地域で受信できる地デジ電波レベルが「80㏈以上」であれば強電界地域。「80㏈から60㏈」であれば中電界地域。「60㏈以下」であれば弱電界地域になります。
他にも国内の一部には、周辺地域に中継局がない。また山間部などで地デジ電波が届きにくいといった要因から、地デジ電波がほとんど受信できない、地デジ放送の「難視聴地域」も存在します。
また各電界地域内でも実際に受信できる電波レベルは、電波塔からの距離や障害物などの周辺環境によって範囲内での差があり、さらに障害物の付近などでは、例えば強電界地域のエリア内であっても、局地的に80㏈以下になるなどのケースもございます。他にも特定エリアの地デジ電波レベルは一定ではなく、一年の気候や悪天候などによる影響を受け「6㏈」前後の変動が生じてまいります。
なお、動作利得や指向性も踏まえて、各電界地域に適した地デジアンテナの素子数は、強電界地域で4素子や8素子から14素子(相当)。中電界地域では14素子から20素子。弱電界地域では20素子から27素子以上の高性能モデルになります。
ちなみに素子数としては20素子の地デジアンテナモデルが、アンテナや機器の調整で強電界地域から、弱電界地域でも比較的、電波状態がよいエリアにまで対応でき、指向性も適度なものになるため、標準機種として幅広く使われております。
その他、地デジ電波や各電界地域に関する詳細は、以下のコラム記事でも解説しております。
地デジアンテナ設置に重要となる「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」とは
八木式アンテナの高性能機種「パラスタックアンテナ」とは
2023年現在、一般の戸建て住宅に設置される主な地デジアンテナ機種は、前述した「八木式アンテナ」「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」の三機種になります。ただ各機種の中でも素子数をはじめさまざまなモデルが存在します。特に地デジアンテナの高性能機種として知られるのが、八木式アンテナのバリエーションである「パラスタックアンテナ」です。
ここでは主に受信性能を中心に、パラスタックアンテナをはじめとする各種高性能アンテナについて解説してまいります。
「八木式アンテナ」と「パラスタックアンテナ」とは?
八木式アンテナとは、前述のように矢印型の骨組みに、短い横棒の素子(エレメント)がいくつもついた、アナログテレビ放送の時代から使われる古典的なテレビアンテナです。
八木式アンテナの特徴は、これもご説明した通り、設置できる素子数が幅広く、そのためモデルによって受信性能が豊富となり、すべての電界地域に対応できるという点です。主なモデルとしては、強電界地域向けの4素子や8素子。中電界地域から弱電界地域向けの14素子や20素子などのモデルがございます。
設置位置は、主に戸建て住宅の屋根の上に立てられたマスト(支柱)の先端ですが、他にも、専用の設置具により、ベランダの内外や壁面への固定。軒先から逆さに吊り下げるといった工法もございます。ただ前述の通り、設置位置の低さは受信感度に影響してまいります。
八木式アンテナの特徴は、素子アンテナであり素子数の多いモデルも存在すること。さらに設置位置も高く取れることから、受信性能が高くなる点です。それゆえ2023年現在でも、地デジアンテナの各機種では、もっとも受信性能が高い機種となっております。
それでいて設計そのものはシンプルな古典的モデルであるため、本体価格や設置位置はもっとも低価格になります。
ただデメリットとしては、その古典的な形状と、屋根の上に設置されて他機種よりやや大型になることから、住宅の見た目や景観を乱してしまう。さらに風雨などの自然環境にも影響されやすくなり、経年劣化が進行しやすく耐用年数がやや短くなるなどの点がございます。
パラスタックアンテナとは? 通常の八木式アンテナとの違い
八木式アンテナは基本的に、地面と水平に立てられる中心の支柱、導波器(ディレクタ)や、矢印の先に当たる反射器(リフレクター)に、短い横棒に当たる素子を一個ずつ並べるように設置されております。このため魚の骨のような形状と呼ばれます。このような通常の八木式アンテナでは、素子数がもっとも多いもので、20素子程度になります。
この八木式アンテナの基本構造を元に、素子部分に工夫を凝らすことで、より高い受信性能を実現したのが、八木式アンテナの高性能モデル「パラスタックアンテナ」です。
パラスタックアンテナの特徴は、通常の八木式アンテナでは、横に一本渡した短い横棒になる、導波器の素子部分に「Ⅹ」型の器具を設置し、その先端に複数の素子を設置することで、各素子の性能を格段に高めたものになります。
パラスタックアンテナでは多くの場合、導波器部分に設置されたX型の素子部を1素子と数えますが、個々の素子の性能が高くなるため、実質的には同素子数であっても、通常の八木式アンテナの二倍以上の素子が設置されていることになります。
「パラスタック」の名前の由来は「パラレル(水平)」と「スタック(垂直)」を組み合わせたもので、特に高性能モデルでは、通常の八木式アンテナを垂直に2基、水平に2基の計4基を組み合わせたものと同等の性能になります。
パラスタックアンテナには、主に14素子、20素子、27素子、30素子などのモデルがございますが、同素子数であっても通常の八木式アンテナよりは受信性能が格段に高くなります。またパラスタックアンテナであれば5素子程度のモデルでも十分な受信性能を発揮するため、アンテナ本体をコンパクト化したい条件の設置現場で使用されます。
パラスタックアンテナでは、弱電界地域のかなり受信レベルが低いエリアでも地デジの受信が可能となる他、東京都の東京MXなど、特定の都府県に存在する「独立放送局」が、その都府県内を受信エリアとして送信する「地方チャンネル」を、隣接する都府県などのエリアで受信できるケースもございます。
このようにパラスタックアンテナは、受信性能に極めて優れる地デジアンテナです。ただその弱点としては、X型の素子に加え、高性能モデルほど素子数が多くなるため、本体も大型化して重量が増してしまう点。そして前述のように、素子数(受信性能)に比例して、指向性も高くなってゆくため、設置時に極めて正確な角度調整が必要で、アンテナ角度のズレなどのトラブルに弱いという点がございます。
参考の一例として、ある有名メーカーの八木式アンテナ(通常モデル)と高性能アンテナ(パラスタックアンテナ)について、素子数ごとの動作利得と、指向性を示す半値幅。そして本体の重量、サイズを、スペック表に基づいて紹介してゆきます。
・八木式アンテナ
14素子モデル:動作利得8.0㏈から12.5㏈/半値幅34度から57度/重量0.85キロ/サイズ518×340×1014(高さ×幅×奥行ミリ)
20素子モデル:動作利得8.5㏈から13.8㏈/半値幅28度から52度/重量0.98キロ/サイズ518×340×1374
・パラスタックアンテナ
5素子モデル:動作利得7.2㏈から10.5㏈/半値幅35度から56度/重量0.54キロ/サイズ276×377×560
14素子モデル:動作利得10.6㏈から13.5㏈/半値幅26度から43度/重量1.54キロ/サイズ518×389×1151
20素子モデル:動作利得11.3㏈から14.5㏈/半値幅18度から35度/重量2.06キロ/サイズ518×427×1838
30素子モデル:動作利得13.2㏈から16.1㏈/半値幅18度から29度/重量3.2キロ/サイズ518×405×2791
上記をご確認いただければ、通常の八木式アンテナに比べて、パラスタックアンテナは同素子数モデルでも動作利得が高くなる半面、半値幅が狭くなり、サイズや重量もややかさむことがお分かりになるでしょう。
このため高性能パラスタックアンテナの設置工事では、通常の八木式アンテナに比べて太いマストやより多くのワイヤーを使用し、しっかりと固定することで、アンテナ角度のズレなどを防止する必要がございます。したがって本体価格が通常モデルより高価になることも含め、設置工費もやや高額になってまいります。
なお八木式アンテナの詳細については、以下のコラム記事でもご説明しております。
地デジテレビアンテナの長老「八木式アンテナ(八木アンテナ)」とは?
パラスタックアンテナ以外のアンテナに高性能モデルは存在する?
通常、地デジアンテナの「高性能モデル」といえば、素子自体の性能が高いパラスタックアンテナを指します。
ここでは、パラスタックアンテナを含む八木式アンテナ以外の、地デジの「デザインアンテナ」「ユニコーンアンテナ」と、衛星放送用の「BS/110度CSアンテナ」について、受信性能を中心に、簡単に説明してまいります。
地デジ:デザインアンテナ
デザインアンテナは、主に長方形の薄型アンテナで、2009年(平成21年)頃に広まった地デジアンテナの第二世代です。
主な設置位置は戸建て住宅などの壁面やベランダの手すり部分。また屋根の上のマストへの固定。他にも現場の電波状態や住宅の建材などの条件が揃えば、屋根裏や天井裏などの屋内空間にも設置できます。
デザインアンテナは、その名の通りデザイン性が高くカラーバリエーションも豊富で、設置場所も壁面などになるため、住宅のデザインにマッチして外見や景観を乱さないことが最大の特徴です。
さらに形状と設置位置から風雨などの自然環境に影響されにくく、耐用年数が長くなりトラブルなどが発生しにくい。太陽光パネルにも影響を与えないなどの点が挙げられます。現在では強電界地域向けで屋内設置も可能なコンパクトモデルも登場しております。
このようにメリットが多いことから、現在ではデザインアンテナは人気ナンバーワンの地デジアンテナモデルです。
ただ受信性能に関しては、主なモデルで20素子相当。そして最高でも26素子相当のモデルになります。しかも同素子数(相当)でも八木式アンテナ(素子アンテナ)に比べると受信感度は微妙に低くなります。他にも主な設置位置が壁面など低めになるため、周辺環境(障害物など)の影響を受けやすく、やはり受信感度が低くなる傾向がございます。
そのためデザインアンテナは基本的に、強電界地域から中電界地域向けのモデルとなり、該当する高層建築の付近、住宅密集地などの条件では設置できない場合もございます。26素子相当のモデルであれば、弱電界地域でも比較的、受信レベルが高いエリアであれば設置できるケースもございますが、確実に使用できるとは限りません。
デザインアンテナでも八木式アンテナと同じく、屋根の上のマストに設置すれば周辺環境の影響は少なくなりますが、半面、デザインアンテナのメリットがやや減少してしまう面もございます。他にもデメリットとしては、本体価格や設置工費が八木式アンテナよりやや高額。壁面設置では固定具を取り付ける際に、壁にビス穴を開ける必要が生じるなどの点が挙げられます。
デザインアンテナと、後述するユニコーンアンテナの詳細は、以下のコラム記事でも解説しております。
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地デジ:ユニコーンアンテナ
ユニコーンアンテナとは、国内の大手アンテナメーカー「マスプロ電工」社が2017年(平成29年)に発売開始した、長さ約70センチの、ほぼ円筒形のスタイリッシュな地デジアンテナになります。
2023年現在、最新モデルとなる第三世代モデルであり、アンテナ本体部をマストの先に固定して設置します。主な設置位置は、マストで住宅の屋根の上に立てる。また固定具により屋根の張り出し部(破風板)や壁面の高所に設置されます。
ユニコーンアンテナのメリットは、落ち着いたブラックとホワイトのカラーバリエーションもあるスタイリッシュな外観から、住宅のデザインや景観を乱さない。その形状から風雨などを受け流しやすく、経年劣化やトラブルの発生を抑えて耐用年数が長くなる。また太陽光パネルの邪魔になりにくいなどの点が挙げられます。
受信性能に関しては20素子相当のみになり、基本的に強電界地域から中電界地域用になります。ただ設置位置を高くとれるため周辺の障害物による影響を避けやすく、安定した受信感度を実現できます。
したがって周辺環境の影響によりデザインアンテナでは安定した受信ができず、設置できない現場でも、ユニコーンアンテナであれば設置できるケースもございます。
このようなメリットから、八木式アンテナとデザインアンテナの長所を兼ね備えるといわれるユニコーンアンテナですが、やはり素子アンテナである八木式アンテナに比べると、同じ20素子モデルから、高性能のパラスタックアンテナに比べると受信性能では及ばず、弱電界地域などでは、比較的、受信レベルが高いエリアを除けば使用できないことが多くなる。また最新機種であるため本体価格や設置工事費用ももっとも高額になるというデメリットがございます。
ユニコーンアンテナについては、以下のコラム記事でも詳しくご紹介しております。
地デジアンテナの最先端、ユニコーンアンテナとは? 特徴、メリット、工事費用の相場まで徹底解説!
衛星放送:BS/CSアンテナ
いわゆるBS放送、CS放送として知られる衛星放送は、地上からおよそ36,000キロ上空の宇宙空間、赤道の周回軌道に位置し、地上からは常に天空の一点に静止して見える「静止衛星」から、地球上の広範囲に電波を送信するテレビ放送です。
放送衛星を使用するBS放送と、通信衛星を用いるCS放送の主なサービス「スカパー!」とも、東経110度に位置する人工衛星を使用するため、一台のBS/110度CSアンテナにより、双方の放送を受信可能です。
このBS/CSアンテナは、皿のような形状の「ディッシュ」を東経110度の方向へと正確に向け、受け止めた衛星からの電波を、アームによって固定されている「コンバーター」へと集め、テレビ電波に適した周波数の電波に変換したのち、ケーブルによって屋内のテレビなど受信機器に送ることで、衛星テレビ放送を視聴できる仕組みになっております。
このような構造のアンテナは「パラボラアンテナ」と呼ばれ、ディッシュで電波を受け止めるため、素子は存在しません。
さらに基本的なアンテナの構造も一種類になるため、BS/CSアンテナであれば、どのメーカー製やモデルのアンテナであっても受信性能に大きな違いはなく、地デジアンテナでいう「素子数」のような、機種やモデルごとの受信性能を示す明確な指標はございません。
BS/CSアンテナ本体の受信性能は、ディッシュ部の大きさによって変わってきます。一般戸建て住宅向けのBS/CSアンテナは、ディッシュの直径が45センチである45型が通常のモデルになります。
日本国内の中心部であれば、45型のBS/CSアンテナで十分な受信性能を発揮します。ただ日本国内でも北部や南端部、離島部などでは衛星からの距離がやや遠くなるため、衛星方法の電波レベルもやや低下します。また衛星からの電波は波長が非常に短いため、豪雨や降雪の際には電波の減衰や乱れが生じて受信不良となる「降雨(降雪)減衰」が生じることもございます。
ただ家庭用のBS/CSアンテナにも、50型、60型、75型などのやや大型モデルがあり、ディッシュの大きさに合わせて受信できる電波レベルが強くなるため、衛星放送の電波が弱いエリアや降雨減衰が生じた場合も、安定した受信が可能となります。
しかしBS/CSアンテナも指向性が高いため、人工衛星の位置する東経110度方向からミリ単位でも角度がずれると、受信性能が大きく低下してしまいます。そしてBS/CSアンテナも大型になると、そのぶん風雨などに影響されやすくなり、アンテナ角度のズレなども発生しやすくなるため、設置時には注意が必要となります。
なおBS/CSアンテナには90型、120型などの超大型も存在しますが、これらはマンションなどの集合住宅に設置される共同受信用であり、一般住宅ではまず使用されません。
他にもBS/CSアンテナのバリエーションとしては、「新4K8K衛星放送」に対応できる現行の2K4K8K対応モデルと、4K8K放送がスタートする2018年(平成30年)以前の2K対応モデル。基本の本体色である白系以外に、太陽光に強い塗料を使用した黒などのカラーバリエーション。さまざまな工夫により耐風性能を高めた高耐風モデルなどがございます。
衛星放送および各種BS/CSアンテナの詳細は、以下の各コラム記事をご参照ください。
台風対策に最適! 究極の高耐風BS110度CSアンテナ「BC453SG」(DXアンテナ)
まとめ
地デジアンテナの受信性能を決める「素子」と「動作利得」。そして設置位置によっても受信性能が左右されること。地デジアンテナの高性能モデルにあたる「パラスタックアンテナ」の特性についてはご理解いただけたでしょうか?
安定した地デジ受信を実現できる地デジアンテナ工事については、ただ高性能の地デジアンテナを設置すればいいというものではございません。設置する現場の電界地域や周辺環境などに最適となるアンテナの機種、モデルを選択する必要がございます。
当あさひアンテナでは、地デジアンテナ、BS/CSアンテナとも、高性能のパラスタックアンテナや大型BS/CSアンテナを含めた、さまざまなエリアやご要望に対応できるアンテナ機種を、国産一流メーカーのモデルでご用意しております。そして業者ならではのスケールメリットにより、高品質アンテナ本体込みのアンテナ工事価格を、業界最安に挑む価格でご提供いたします。
さらに現地出張しての電波調査やお見積もりも、出張料、キャンセル料もご無用の完全無料で実施いたします。
実際の工事にあたっては、綿密な電波調査に基づいて、高性能アンテナの設置を含めた、現場の条件に最適かつ、お客様のご要望に可能な限り対応できるアンテナ工事をご提案。施工についても、例えばパラスタックアンテナでは太いマストと多数のワイヤーを用いた固定による頑丈な設置により、可能な限りアンテナのズレを抑えるなど、高品質な工事をお約束いたします。
ただどのように綿密な施工でも、想定外の災害などによる万が一のトラブルが生じないとは限りません。その万が一に備えて、弊社では業界最長となる、アンテナ施工日からの「10年保証」もご用意して、アンテナ工事の品質に万全の体制を整えております。
高性能の地デジアンテナ設置が必要となる現場をはじめ、さまざまなテレビアンテナ工事のご要望については、当あさひアンテナのフリーダイヤル(0120-540-527)。もしくはメールフォーム、LINEアカウントまで、お気軽にご相談いただければ幸いに存じます。