受信感度とは?アンテナからスマホ、Wi-Fiまで無線電波の強さ(dB)の目安から測定・受信の改善方法までプロが徹底解説
「自宅でテレビの映りが突然悪くなった。画面がモザイクのように乱れる」
「スマートフォンの電波が弱くて、通信が途切れてしまう」
「Wi-Fiの速度が遅くてイライラする」
高度情報化社会と言われる現代社会、このような経験は、多くの方が一度は感じたことのある悩みではないでしょうか。
実は、これらの問題の多くは「受信感度」という、目には見えない電波の強さが関係しています。
電波と言えば、テレビやスマートフォン、Wi-Fiなど、現代の情報インフラの根幹を支える存在です。しかし電波は目に見えないため、受信感度と言われても、一般の方にとっては専門的でよくわからないと感じられるかもしれません。
そこでこの記事では、スマートフォンやWi-Fiなど無線通信に関する知識を持つプロのライターが「受信感度」の基本から、ご家庭でもできるテレビアンテナやスマートフォン、Wi-Fiの具体的な受信感度の改善方法までを徹底的に解説します。
特にスマホやWi-Fiなどとは異なる専門知識が必要な地デジ放送、衛星放送の受信や対応するテレビアンテナについては、アンテナ工事の専門業者「あさひアンテナ」の専門スタッフに取材を行い、プロの現場経験と専門知識に基づく、確かな情報をまとめています。
この記事をお読みいただくことで、テレビ受信やスマートフォン、Wi-Fiで、なぜ受信・通信トラブルが起きるのかについての原因がわかり、ご自身の状況に合った最適な解決策を見つけることができます。
記事の性質上、いくつか専門用語も出てきますが、それぞれの用語についてもひとつひとつ丁寧に解説しますので、一般の方でもわかりやすくお読みいただけます。
お客様のお住まいにて、安定したテレビのご視聴から、スマートフォンやWi-Fiによる高速で安定した通信まで、ストレスのない快適な環境を手に入れるために、ぜひ最後までお読みください。
受信感度の基本|「良い・悪い」を判断する3つの重要指標
テレビからスマートフォンやWi-Fiまで、受信感度の良し悪しを判断するためには、まずその評価基準となる指標を知ることが大切です。
これからご紹介する3つの指標を理解することで、お使いの機器のスペックを正しく比較することや、通信トラブルの原因を特定することに役立ちます。
専門用語もあるので一般の方にとっては難しく感じるかもしれませんが、ここではそれぞれの意味をわかりやすく解説していきます。
以下で解説するこれらの指標は、皆様の通信環境を客観的に評価するための「ものさし」になると考えてください。
指標①:dBm(デシベルミリワット)|マイナス値が大きいほど高感度
電波の受信感度を表すもっとも一般的な単位が「dBm(デシベルミリワット)」です。
これは、1ミリワット(mW)の電力を基準(0dBm)として、電波の強さを絶対的、定量的な対数で表したものです。
皆様もスマートフォンの電波強度や無線機のスペックシートなどで、-80dBmや-100dBmといった数値を見たことがあるかもしれません。
dBmの特徴は、数値がマイナスで表現される点にあります。
そして、もっとも重要なポイントは「マイナスの数値の絶対値が大きいほど、受信感度が良い」ということです。
つまり、-100dBmの受信機は、-80dBmの受信機よりも微弱な電波を捉える能力が高い、ということになります。
以下、dBmで表される受信感度の目安について、一覧でご紹介します。
※上記は一般的な目安です。
このように、dBmは数値が3dB小さくなる(マイナス方向へ大きくなる)ごとに、受信能力が約2倍良くなることを示しています。
この関係を覚えておくと、機器の性能を比較する際に非常に役立ちます。
指標②:RSSI(受信信号強度)|スマホやWi-Fiの電波強度の正体
「RSSI(Received Signal Strength Indicator)」は「受信信号強度」を示す指標です。
簡単に言えば、スマートフォンやWi-Fiルーターが現在、受信している電波の強さを表す数値のことです。
普段、私たちがスマートフォンの画面で見るアンテナマーク(ピクトグラム)は、このRSSIを分かりやすく視覚化したものです。
RSSIもdBmという単位で表されることが多く、こちらは0に近いほど電波が強いことを意味します。
一般的に、快適な通信を行うためには、以下のRSSI値が目安とされています。
※上記は一般的な目安になります。
お使いのスマートフォンやパソコンにて、専用のアプリを使うことにより、現在のRSSI値を測定できます。
もし通信が不安定だと感じたときは、一度この数値を測ってみることで、電波の強さが原因かどうかを判断する材料になります。
指標③:S/N比とBER|ノイズとデータ品質の関係性
電波の強さ(dBmやRSSI)だけでなく、その「品質」も受信感度を左右する重要な要素です。特に現在の地デジ放送や衛星放送のBS放送、CS放送など、テレビのデジタル放送では電波の品質が映像の品質にも大きく影響します。
その品質を測る指標が「S/N比(信号対雑音比)」と「BER(ビット誤り率)」です。
S/N比とは、テレビ放送やスマートフォンなどで電波に乗せて送受信されるデジタル信号(Signal)と、通信を邪魔するノイズ(Noise)の電力比率を示すものです。
これは、静かなコンサートホールで美しいオーケストラの演奏を聴いているような状況に似ています。演奏(信号)が大きく、周囲の雑音(ノイズ)が小さければ、S/N比は高くなり、音楽をはっきりと楽しむことができます。
一方で、BERは受信したデータ(デジタル信号)の中に、どれくらいの割合でエラーが含まれているかを示す指標です。
デジタル放送や通信では、S/N比が悪化するとBERが高くなり、テレビの映像が乱れたり、音声が途切れたりする原因となります。
特に現在の地上デジタル放送では、一定のBER数値を超えると、デジタル信号を映像化できなくなり、テレビ映像がまったく映らなくなるという特性があります。
以下、S/N比とBERについて簡単にまとめました。
※上記はそれぞれの指標の概要になります。
つまり受信感度が良いとは、単に弱いレベルの電波を十分に捉えられるだけでなく、ノイズが多い環境でも高いS/N比を維持し、低いBERを実現できる性能のことを指すのです。
テレビ電波の強さとアンテナの受信感度を示す目安とは?
「テレビのアンテナレベルが低くて、画面にブロックノイズが出る」
「特定のチャンネルだけ映りが悪い」
このような地デジや衛星放送のテレビ視聴のトラブルは、多くの場合、アンテナが受信する電波の強さや、アンテナ自体の受信感度が関係しています。
この項目では、特に地上デジタル放送(地デジ)の受信に焦点を当て、電波の強さやアンテナ性能を測るための具体的な目安について解説します。
これらの専門知識は、ご自宅のテレビの映りが悪くなっている原因を特定し、適切な対策を講じるための第一歩となります。
受信できる地デジ電波の強さを決める「㏈μV」と「電界地域」
ご自宅で受信できる地デジ電波の強さは、「dBμV(デシベルマイクロボルト)」という単位で示されます。
一般的には単に「dB(デシベル)」と略されることも多く、テレビのアンテナレベル設定画面などで確認できる数値も、このdBμVを基準にしています。ただし実際のアンテナレベル画面で表示される数値や十分な受信レベルの目安は各メーカー独自のもので、dBμVの数値とは必ずしも一致しません。
また地デジ電波の場合、dBμVの数値は0から100で表されますが、この数値で示される電波の強さは、十進法による計算ではなく常用対数で表されます。
簡単に言うと、地デジ電波のdBμVの計算は、例えば10dBμVの電波に、さらに10dBμVが加われば20dBμVになるというものではありません。
10dBμVを基準にした場合、20dBμVは10dBμVの10倍の強さ、30dBμVは100倍の強さの電波という形で、元の数値から10dBμV増すたびに、電波の強さも約10倍と、べき乗の計算になるのです。
実際の地デジ電波は、日本各地に設置された地デジ電波塔の先端から周辺エリアに送信されています。
地デジ電波として使われるUHF(極超短波)にはある程度の波長の幅があるため、ビルなどの障害物にぶつかっても乗り越えて広がりやすい性質もありますが、そのぶん電波塔から離れるほど電波は拡散され、電波レベル(dBμVの数値)は低下していきます。
他にも地デジの電波強度は、伝わる空間の状態(気候や悪天候)などに影響され、低下することがあります。
したがって電波塔の周辺に到達する地デジ電波のdBμVは、電波塔からどれだけ離れているか、また山など乗り越えにくい地形的な遮蔽物の影響によって変動します。
このdBμVの数値に応じて、電波塔の周辺エリアは、主に「強電界地域」「中電界地域」「弱電界地域」の3つに分類されています。
以下、一般的な各電界地域のdBμVの数値、また実際の環境の目安になります。
※上記は一般的な電界地域の基準ですが、電界地域に正式な定義はないため、使われる場所によって分類や目安が異なる場合もあるのでご注意ください。
一般的に、地デジ放送のテレビを安定して視聴するために必要なdBμVは、テレビのチューナーに届く時点で、34dBμVから89dBμVです。
ただ上記の通り、地デジ電波レベルは気候や天候でも変動が生じるため、電波レベルに余裕を確保する必要があり、実際の地デジ電波は、チューナーに届く段階で47dBμVから81dBμV、最低でも40dBμV以上のレベルが必要とされています。
このような受信レベルの必要から、お住まいの地域がどの電界地域に属するかを知ることは、後述する適切なアンテナ機種を選ぶ上で、非常に重要な情報となります。
なお、衛星放送(BS/CS)の場合も、テレビで必要な受信レベルの目安などに大きな違いはありません。
ただ衛星放送では、宇宙空間にある人工衛星(静止衛星)から日本全域に電波を送っているため、日本全域で受信できる電波強度に大きな差はありません。(厳密には静止衛星からの距離が遠いエリアでは、電波レベルが若干弱まることがあります)
地デジアンテナの受信性能を示す「素子数・素子数相当」と「指向性」
地デジアンテナの受信性能を判断する上で、もっとも基本的な指標となるのが「素子(そし)数」または「素子数相当」です。
素子(エレメント)とは、アンテナの中で実際に電波を受信する部品のことで、この数が多いほど受信性能が高くなります。
地デジの八木式アンテナで言えば、素子は中心的な横の支柱に並ぶ、短い横棒がこの素子に当たり、受信性能によって8素子、14素子、20素子などのモデルがあります。
また近年のデザインアンテナ、ユニコーンアンテナなどの機種ではこの素子が外部から見えないため、受信性能を素子数に換算した「素子数相当」で表します。
地デジアンテナを選ぶ際は、前述した電界地域(周辺に届く電波レベル)に合わせて、適切な素子数(受信性能)のモデルを選ぶのが基本です。
例えば、弱電界地域で素子数の少ないアンテナを使っても地デジ電波を十分に受信できませんし、逆に強電界地域で高性能すぎる多素子アンテナを使うと、地デジ電波だけでなくノイズまで拾ってしまい、かえってテレビの映りが悪くなることがあります。
以下は、各電界地域に対応する地デジアンテナの素子数・素子数相当の目安です。
※上記は電界地域に応じた一般的な素子数の目安です。
また、地デジアンテナには「指向性(しこうせい)」という特性があります。
指向性とは、地デジアンテナ本体でも特定の方向(前方)のみで受信性能が高くなる性質のことです。
地デジアンテナの指向性は、もっとも受信性能が高まる真正面を基準に、アンテナ角度を徐々に左右にずらせて、受信性能が最大の半分になる角度を示す「半値幅(はんちはば)」で表されます。
この半値幅は地デジアンテナでも種類(機種・形状)や受信性能によって異なり、同じ素子数(相当)のアンテナでも半値幅が狭い(指向性が高い)モデルほど、受信性能が狭い範囲に集中し、多方向からノイズも受信しにくくなるため、狙った方向の電波を効率よくキャッチできて受信感度が高まる傾向があります。
一方で、指向性が高いアンテナの場合、正面を電波塔の方向に調整した向きが少しでもずれると受信レベルが大きく低下するという側面もあります。
以下、主な地デジアンテナ機種別(同素子数(相当))の、指向性の違いを一覧でまとめたものになります。
※上記は機種別の主な比較になります。実際の指向性はモデルや受信性能によっても左右されます。
先端側(受信方向)が狭い八木式アンテナは、古典的なモデルで受信性能や指向性が高く、受信環境のいい屋根の上に設置することで、現在でももっとも高い受信性能を発揮する機種です。
正面が平面状で設置の見栄えがいいデザインアンテナは、八木式アンテナよりやや指向性が低い分、同素子数相当でもやや受信感度が弱まる上、壁面やベランダなどに設置されることが多いため受信感度が下がりやすくなります。
したがって電波塔の方向に障害物がない位置を選び、あらかじめ設置場所の受信レベルが十分であるかを確認することが重要になります。
ユニコーンアンテナは円筒形のため、指向性はもっとも広くなりますが、八木式アンテナと同じく高い位置に設置されるため受信感度を確保しやすく、周辺に高層建築などがあってデザインアンテナが対応できない現場で、同等のメリット(外観性や対候性)を確保したい場合に適しています。
ただ同素子数の八木式アンテナに比べると受信感度はやや及ばないため、対応できるエリアはやや狭まります。
なお衛星放送用のBS/CSアンテナは、静止衛星からの直進的な電波を皿状のディッシュで受け止めるため、ディッシュの有効直径が大きいモデルほど受信性能が高くなります。
また直進的な電波を受け止めるため、ディッシュの仰角と方位角(上下と左右の角度)を東経110度(南西上空)に向けて、ミリ単位の正確さで角度を合わせる必要があるため、地デジアンテナ以上に極めて指向性が高いアンテナと言えます。
地デジアンテナの受信効率を示す「動作利得」
「動作利得(どうさりとく)」または「利得」「ゲイン」とは、地デジアンテナが受信した電波をどれだけ効率よく出力できるかを示す指標です。より具体的には、アンテナが受信性能を発揮する正面側の受信感度を示す数値とも言えます。
地デジアンテナの動作利得は、基準となる指向性がない理論上のアンテナか、もっとも指向性が低い基本的なアンテナとの出力レベルの差を、dBμVの数値で表したものになります。
この動作利得のdBμV値はアンテナの形状や素子数(相当)や指向性の高さに比例し、数値が大きいほどアンテナの受信効率が良い、つまり高感度であると言えます。
つまり同じ素子数のアンテナでも指向性が高く、特定の方向の電波を集中して集められる機種の方が、動作利得が高くなる傾向があります。
以下、地デジアンテナの性能や形状が動作利得に与える影響の一覧です。
※上記は動作利得への基本的な影響になります。
素子数がアンテナの基本的なパワーだとすれば、動作利得はより実践的な受信能力を示す数値と考えることができます。また指向性だけでは測れない、指向性などの影響による、より細かな受信性能の目安とも言えます。
地デジアンテナ機種を選ぶ際には、素子数と合わせてこの動作利得も確認することで、よりご自宅の環境に適した受信性能のモデルを見つけやすくなります。
受信感度が悪い?考えられる4つの原因をセルフチェック
「急に地デジの画面が乱れて入ってテレビの映りが悪い状態になった」
「今まで問題なく使えていたスマートフォンやWi-Fiで、急に通信が不安定になった」
そんな時には、ただやみくもに電波障害への対策をする前に、まずは何が原因なのかを切り分けることが重要です。
ここでは、テレビやスマートフォン、Wi-Fiの受信感度が悪化する主な原因を、4つのカテゴリーに分けて解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら、どの項目が当てはまるかをチェックしてみてください。
まずは受信感度が悪くなった原因を正しく特定することが、問題解決のための一番の近道です。
原因①:距離と障害物|電波が届きにくい物理的な問題
テレビや通信などの電波は、発信元(電波塔やWi-Fiルーター)から距離が離れるほどレベルが弱くなります。
また、発信元から受信する機材(アンテナやスマートフォンなど)までの間に、壁、建物、山、さらには人体のような障害物があると、電波は吸収される、反射されるなどして届きにくくなり、さらに弱まってしまいます。
これはもっとも基本的で分かりやすい原因のひとつです。
特に、周波数が高い電波ほど波長が短くなり、障害物の影響を受けやすくなるという特性があります。
以下、テレビやスマートフォンなどで使用される電波の周波数帯と、
※上記は各周波数帯の基本的な特性になります。
例えば、Wi-Fiルーターを設置している部屋から離れた部屋で通信が不安定になるのは、この距離と障害物が原因である可能性が高いです。
テレビの場合も、アンテナと電波塔や静止衛星との間に高層ビルが建った、といった周辺環境の変化が原因となることがあります。
特に衛星放送の電波は、静止衛星の方向に建物などはもちろん、樹木の枝や洗濯物など、わずかな障害物があっても遮られるため、注意が必要です。
原因②:電波干渉|他の電子機器がノイズ源になっている
目には見えませんが、現代社会では、日常の空間にさまざまな電波が飛び交っています。
お使いの受信、通信機器が利用している周波数帯と同じ、または近い周波数帯の電波が他にあると、それらが互いに干渉しあって影響を与えることで、通信品質を低下させることがあります。
これが「電波干渉」と呼ばれる現象で、放送や通信において品質を乱す「ノイズ」の主な原因となります。
特に、家庭内やオフィスには電波干渉を引き起こす可能性のある機器が多く存在します。
以下、電波干渉を招く家電製品の主な種類になります。
※上記はノイズの原因となる主な種類になります。
ノイズの源となるものは電話やWi-Fiなどに限らず、家電製品は動作することで必ず電磁波を発するため、機器によっては大きなノイズの原因となります。
上記でご紹介した機器が動作している時に、通信やテレビ画面が不安定になる場合は、電波干渉を疑ってみる必要があります。
特に、複数の機器が同じ2.4GHz帯に集中すると、「受信感度抑圧」という、受信機が目的の信号を正しく認識できなくなる深刻な問題を引き起こすこともあります。
原因③:アンテナ|種類・性能・設置場所が不適切
テレビ放送や無線通信の品質は、電波の入り口であり出口でもあるアンテナの性能に大きく左右されます。
このアンテナに何かの問題が生じると、受信感度低下の直接的な原因となることが非常に多くなります。
具体的なアンテナトラブルの例としては、以下のようなケースが考えられます。
- アンテナの選択ミス:お住まいの電界地域に合わない性能(素子数)のアンテナを使用している。
- 設置場所の不備:アンテナが建物の陰や屋根裏など、電波を遮る場所に設置されている。
- 向きのズレ: 特にテレビアンテナが、老朽化や強風などによって適切な向きからずれてしまい、電波塔の方向を正確に捉えられていない。
- 経年劣化:屋外に設置されるテレビアンテナ本体やケーブルが雨風にさらされて劣化し、性能が低下している。
特にBS/CSアンテナは上下、左右への正確な角度調整が必要なため、数ミリ単位の角度のズレが受信レベルに大きく影響することがあります。
住宅のテレビアンテナは一度設置するとあまり気にしない部分ですが、受信トラブルの際にはまず確認すべき重要なポイントとなります。
原因④:受信機・デバイスの性能|機器自体のスペック限界
電波環境やアンテナに問題がなくても、受信する側、つまりスマートフォンやテレビ、Wi-Fiルーターといった機器自体の性能が原因で、受信感度が悪くなることもあります。
特にスマートフォンやWi-Fiなどの通信規格は時代につれて更新されることもあり、新しいモデルの機器ほど、内部の信号処理技術や、微弱な信号を増幅する「低雑音増幅器(LNA)」の性能が向上しています。
そのため古い機器を使い続けていると、最新の通信規格の性能を十分に引き出せなかったり、ノイズの多い環境で通信が不安定になったりすることもあります。
これは、機器のスペック上の限界であるため、設定の見直しなどでは改善が難しい場合があります。
さまざまな対策を試しても状況が良くならない場合は、機器の買い替えも有効な選択肢のひとつとして考える必要があります。
プロが実践する受信感度の改善策|アンテナ調整から設定見直しまで
受信感度が悪い原因が特定できたら、次はいよいよ具体的な改善策です。
ここでは、誰でも簡単に試せる基本的な対策から、専門的な知識を要する本格的な対策まで、プロが実践している有効な方法を網羅的にご紹介します。
ご自身の状況に合わせて、できそうなことから試してみてください。
ひとつの対策で劇的に改善することもあれば、複数の対策を組み合わせることで効果が出る場合もあります。
【基本対策】アンテナの設置場所・向きを最適化する
以下は主に、テレビアンテナの場合の対処になります。
受信感度を改善するためのもっとも基本的かつ効果的な方法は、アンテナの物理的な位置や向きを調整することです。
- 設置場所を見直す:アンテナをできるだけ高い場所や窓際に設置して、壁や家具などの障害物から遠ざけます。
- 向きを調整する:地デジアンテナの場合は、地域の電波塔の方向へ正確に向けます。スマートフォンのアプリなどで方角を確認しながら微調整するのがおすすめです。
- 高品質なケーブルを使用する:アンテナと機器をつなぐケーブルは、信号の損失が少ない太くて品質の良いものを選び、長さは必要最小限にします。
- ブースター(増幅器)を利用する:受信できる地デジ電波が弱い地域や、ケーブルが長くなることで映像信号が減衰してしまう場合には、電波を増幅するブースターの設置が有効です。ただし、ブースターはノイズも一緒に増幅してしまうため、できるだけアンテナの近くに設置する必要があります。
これらの対策は、テレビアンテナだけでなく、Wi-Fiルーターやラジオなど、あらゆる無線機器にも応用することで、効果が期待できます。
【最終手段】専門業者への相談も有効|信頼できるアンテナ工事業者の選び方
お住まいでアンテナの向きのズレ、部分的な破損などの不具合が発生して、調整や修理などが必要になることがあります。
ただ戸建て住宅のテレビアンテナは屋根の上に設置されていることが多く、調整には高所での作業が伴うなど、ご自身で行うのが難しい場合も少なくありません。
また、さまざまな対策を試しても改善しない場合は、より専門的な原因の調査や、専門の知識と工具による工事が必要なケースもあります。
そのようなときは、決して無理をせず、アンテナ工事の専門業者へと、テレビアンテナの修理・調整をご相談になることがもっとも賢明な選択です。
しかし、アンテナ工事も業者によって、その技術力や料金体系はさまざまです。
そこで、信頼できる業者を選ぶためのポイントを以下にまとめました。
※上記は主なチェックポイントになります。
例えば、本記事の執筆にご協力いただいた「あさひアンテナ」では、年間6,000件以上の施工実績を誇り、完全自社施工による低価格と10年保証を実現しており、上記の条件を高いレベルですべて満たす優良な業者の一例と言えるでしょう。
もちろんあさひアンテナをはじめ、完全無料の電波調査や見積もりに対応している業者も多いので、まずは上記の条件が揃った業者の窓口へと、お気軽にご相談されることをおすすめします。
【機器別】Wi-Fi・スマホ・5G|今すぐできる設定見直し術
テレビアンテナ以外にも、日常的に使うWi-Fiやスマートフォンの受信感度を手軽に改善する方法があります。
この項目では、それぞれの機器に特化した設定の見直し術をご紹介します。
※上記は各機器の主な対策になります。
これらの方法は、特別な機材も必要なく、すぐに試せるものばかりです。
各機器の通信が不安定だと感じられたときは、ぜひ一度お試しください。
まとめ|受信感度を正しく理解し、快適な通信環境を手に入れよう
この記事では、テレビやスマートフォン、Wi-Fiなどの「受信感度」という、一般の方にはやや難しいテーマについて、その基本となる指標から、感度が悪化する原因、そしてプロが実践する具体的な改善策までを解説してきました。
受信感度とは、単なる技術的な数値ではありません。
それは、私たちが日常的に利用するテレビやスマートフォン、インターネットの快適さを直接的に左右する、非常に重要な要素なのです。
以下、本記事の重要なポイントを、あらためて簡単にまとめます。
- 受信感度の指標:dBm、RSSI、S/N比や㏈といった指標を理解することで、機器の性能を客観的に比較し、通信環境を評価できます。
- 悪化の原因:受信に関する問題の多くは、「電波が届く距離と障害物」「電波干渉」「アンテナの性能や不具合」「機器の性能」のいずれかに起因します。
- 改善策:アンテナの調整や設置場所の見直しといった物理的な対策から、Wi-Fiのチャンネル変更といった設定の見直しまで、原因に応じた多様な解決策があります。
もし、ご自宅でテレビやスマホ、Wi-Fiの通信環境に問題やご不満がある場合は、まずはこの記事で紹介した方法を参考に、原因のセルフチェックから始めてみてください。
そして、ご自身でできる改善策をひとつひとつ試していくことで、きっといまよりも快適な通信環境を実現できるはずです。
それでも解決が難しい場合は、専門業者という頼れる選択肢があることも忘れないでください。
特にテレビアンテナの故障や不具合など、お住まいでの解決が難しいテレビ受信の問題については、記事内でもご紹介した「あさひアンテナ」などの専門業者へとご相談になることをおすすめします。
あさひアンテナでは、フリーダイヤル(9:00-21:00)のほか、24時間365日対応のメールフォーム、LINEアカウントも用意されていますので、アンテナトラブルや工事のご相談についてはどのようなことでも、まずはお気軽にお問い合わせになってください。
本記事を参考に、読者の皆様が電波や受信に関して正しい知識を身につけていただき、ストレスのないデジタルライフを送っていただけければ、筆者としても光栄です。




