地デジやBS/CSテレビアンテナの受信性能を決める「指向性」とは?基礎から計算、利得との違いまでプロが図解で徹底解説!
お住まいに適した地デジアンテナ・BS/CSアンテナをお求めで、さまざまな製品を比較している時に「指向性(しこうせい)」という言葉を見かけた経験はないでしょうか?
または、技術系の学生や職業の方であれば、レポート作成や資格試験、業務などでアンテナ技術に触れる中「指向性」という言葉に戸惑ったこともあるかもしれません。
テレビアンテナを選ぶにあたっては、指向性の意味を含めてアンテナのスペックを理解して適切な性能のモデルを選ぶこと、さらにはアンテナ性能に応じた適切な取り付けを行うことが重要です。
また「指向性を利得(ゲイン)と何が違うの?」「スペックシートのグラフはどう読めばいいの?」といった疑問は、多くの大学生や若手エンジニアが抱える共通の課題です。
アンテナの性能を理解し最大限に引き出すためには、この「指向性」の概念を正しく理解することが不可欠といえます。
この記事では、アンテナの指向性というテーマを基礎から徹底的に掘り下げます。
定義や放射パターンの読み解き方から、利得との明確な違い、そして具体的なアンテナの種類ごとの特性までを、技術系の知識を持つプロのライターが、図表なども参考にして体系的に解説します。
お住まい用のテレビアンテナをお求めの方には少し難しい話に思われるかもしれませんが、特にテレビアンテナの解説については、アンテナ工事の専門業者「あさひアンテナ」に取材を行い、プロの経験と専門知識による確かな情報をまとめています。
さらに一般のお客様にとって必要な情報を、専門用語をさけて、分かりやすい形でまとめていますので、どうかご安心ください。
この記事をお読みいただければ、断片的な知識が体系的につながっていき、自信を持ってテレビアンテナの選定や通信品質の改善に取り組めるようになるでしょう。
地デジ放送受信のポイントとは?
地デジアンテナの「指向性」を理解するためには、まず地デジ放送の仕組みを知ることが重要です。
地デジ放送では、UHF(極超短波)と呼ばれる周波数帯の電波が使われています。
この電波は、日本各地にある電波塔から、周辺のご家庭にある地デジアンテナに向けて送信されています。
UHFは数十センチの波長の幅があり、ある程度は障害物を乗り越えて広がる反面、長距離を進むほど弱まる性質を持つため、地デジアンテナの設置には、以下のようにいくつかの注意すべきポイントがあります。
これらのポイントを押さえることが、安定したテレビ視聴につながります。
※上記は地デジアンテナ設置の主な注意点になります。
新築住宅などで地デジテレビアンテナの設置工事を行う際は、まずご自宅がどの電界地域に属するかを確認しましょう。
そして、アンテナの向きを電波塔の方向へ正確に合わせ、障害物の影響が少ない高い場所に設置することが基本となります。
これらの要素が、地デジアンテナで電波を十分に受信するため「指向性」を最大限に活かす鍵となるのです。
衛星放送受信のポイントとは?
衛星放送(BS放送/CS放送)は、地上にある電波塔ではなく、宇宙空間で赤道軌道上を周回する「静止衛星」から、日本全域に電波が送られてきます。
この電波は12 GHz帯という非常に高い周波数帯(SHF:センチメートル波)が使われており、光のように直進性が高いなど地デジとは異なる特性を持っています。
そのため、BS/CSアンテナ設置のポイントも、地デジアンテナとは大きく異なります。
衛星放送の電波は、静止衛星から地上のアンテナへ向けて、光に近い直進性でピンポイントに照射されます。
この電波を正確にキャッチするため、BS/CSアンテナには極めて高い指向性が求められます。アンテナのディッシュ部分を上下、左右ともミリ単位で正確に角度調整する必要があり、向きがわずかでもずれると、まったく受信できなくなるほどシビアです。
衛星放送の受信、BS/CSアンテナ設置のポイントは、主に以下の通りとなります。
※上記はBS/CSアンテナ設置の主な注意点になります。
BS/CSアンテナ設置で特に重要となるのは、アンテナのディッシュを向ける方向に障害物が一切ないという点です。ベランダの手すりや木の枝葉など、わずかなものでも衛星放送の電波は遮られてしまいます。
また、4K8K放送の多くのチャンネルを受信するには、従来の2K衛星放送で使われていた電波(右旋円偏波)に加えて追加された、新しい電波(左旋円偏波)に対応するアンテナや周辺機器が必要になる点も注意が必要です。
アンテナ指向性の基本を1から理解する
ここからは、テレビアンテナの性能を語る上で欠かせない「指向性」の核心に迫ります。
この概念は、アンテナがどのように電波を送受信しているかを理解するための基礎となります。
スピーカーが特定の方向に音を届けることができるように、アンテナも特定の方向に電波(受信性能)を集中させる能力を持っています。
本記事はテレビアンテナを主題にしているため、アンテナは電波を受信する機器というイメージがありますが、アンテナには電波を発信する役割の機器もあります。例えば地デジの電波塔も大型のアンテナと呼ぶことができます。
この能力こそが「指向性」です。同様に特定の方向に音を届けるスピーカー、特定の方向からの音を拾うマイクなどは「指向性スピーカー」「指向性マイク」といわれます。
指向性とは?特定の方向に電波を集中させる能力
アンテナの指向性とは、電波を特定の方向に集中して放射する、あるいは特定の方向から効率よく受信する能力を示す指標です。
この能力を評価するために、現実には存在しない仮想的な基準アンテナである「等方性アンテナ(Isotropic Antenna)」を想定します。
等方性アンテナは理論上、まるで点光源のように、全方向へ均一に電波を放射する理想的なアンテナです。
ただ現実のテレビアンテナは、どうしてもその形状により一定の指向性が生じるため、上記のような理想的なアンテナは実在しません。実在するとすれば、宙に浮いた完全な球形の点のようなアンテナになります。
そして実在するアンテナは、この等方性アンテナと比較して、特定の方向にどれだけ電波(受信感度)を集中させているかで指向性が決まります。
この集中の度合いを示す単位が「dBi(デシベル・アイソトロピック)」です。
dBiの値が大きいほど、特定の方向への集中度が高く、指向性が鋭い(強い)ことを意味します。
以下、等方性アンテナと現実のアンテナの比較です。
※上記は各アンテナの基本的な解説です。
例えば、半波長ダイポールアンテナ(実在する中ではもっともシンプルで指向性の低いアンテナ、詳細は後述)の最大指向性は約2.15dBiです。
これは、もっとも強く電波が放射される(受信感度を発揮する)方向では、等方性アンテナの 1.64 倍の強さになることを示しています。
このように、指向性はアンテナの「方向に関する個性」を表す重要なパラメータなのです。
なぜ指向性が必要?通信品質を向上させる3つのメリット
アンテナになぜ指向性が必要なのでしょうか。
それは、指向性を持つことで通信品質や受信性能を劇的に向上させる3つの大きなメリットがあるからです。
これらのメリットを理解することで、アンテナ選定の重要性がより明確になります。
以下、アンテナの指向性が実現する主なメリットの一覧になります。
※上記はアンテナの指向性が持つ主な役割になります。
このように、指向性は単に電波(受信)の向きを定めるだけでなく、通信システム全体の効率と安定性を高めるために不可欠な要素なのです。
目的の通信相手(受信したい電波)とだけ効率よく通信し、ノイズなどの不要な干渉を避けるという、無線通信の理想を実現する技術と言えます。
放射パターン図の読み方【主ローブ・サイドローブ・ビーム幅】
アンテナの指向性は、「放射パターン」と呼ばれる図で視覚的に表現されます。
これはアンテナを中心として、どの方向にどれだけ強く電波が放射されるかを示した「電波の地図」のようなものです。
この図を正しく読み解くことで、アンテナの性能を直感的に把握できます。
放射パターンは、主に以下の4つの要素で構成されています。
これらの意味を理解することが、スペックシートを読み解く第一歩です。
※上記は各要素の基本的な解説になります。
例えば、高性能なパラボラアンテナは、非常に大きくて鋭い主ローブと、ごく小さなサイドローブを持ちます。
一方で、広い範囲をカバーするアンテナは、主ローブが丸く、ビーム幅が広くなります。
前述した等方性アンテナは、各要素がまったく同じ形であるため、放射パターンが完全な球形となります。
このように、放射パターンを見れば、そのアンテナがどのような用途に適しているかを判断することができるのです。
「利得(ゲイン)」との違いは?アンテナ効率の視点から解説
アンテナのスペックで、指向性と共によく登場するのが「利得(ゲイン)」です。
この2つの言葉は非常に似ていて混同されがちですが、その意味は明確に異なります。
その違いを理解する鍵は、「アンテナの効率」という視点にあります。
指向性がアンテナの形状だけで決まる理論上の性能であるのに対し、利得は実際の運用で現実的な性能を示す指標です。
指向性は「方向性」、利得は「実力」- 効率(η)の重要性
指向性と利得の違いを端的に表すなら、「指向性は方向性、利得は実力」と言えます。
指向性は、入力された電力をどれだけ効率よく特定の方向に集中できるかという「方向性の能力」だけを示します。
一方、利得は、その過程でアンテナ内部で発生する損失まで考慮した、最終的に放射される電波(または受信できる電波)の強さ、つまり「総合的な実力」を示します。
アンテナに入力された電力は、すべてが電波として放射されるわけではありません。
アンテナを構成する素材の電気抵抗(導体損失)や、絶縁体の性質(誘電体損失)によって、一部が熱として失われてしまいます。テレビアンテナなど電波を受信するアンテナでも同様になります。
この損失の度合いを示すのが「アンテナ効率(η)」です。
利得(Gain)は、指向性(Directivity)とアンテナ効率(η)の掛け算で表されます。
Gain (G) = η × Directivity (D)
以下、各パラメータの解説を一覧で表したものです。
※上記は各パラメータの基本的な解説になります。
アンテナ効率(η)は 0 から 1 の間の値を取り、1 は損失がまったくない理想的な状態を意味します。
しかし、実際のアンテナでは必ず損失があるため、効率は 1 より小さくなります。
したがって、利得は常に指向性と同じか、それよりも低い値になるのです。
スペックシート必須知識!「dBi」と「dBd」の違い
アンテナの利得を表す単位として、前述した「dBi」と「dBd」の2種類が使われることがあります。
どちらもデシベル(dB)を用いた相対的な値ですが、基準となるアンテナが異なります。
この違いを理解していないと、スペックシートの値を誤って解釈してしまう可能性があるため注意が必要です。
以下、「dBi」と「dBd」の違いについて解説します。
- dBi:基準は「等方性アンテナ(Isotropic Antenna)」です。全方向に均一に電波を放射する理論上のアンテナを0dBi とし、それと比較してどれだけ利得があるかを示します。
- dBd:デジベルダイポール。その基準は「半波長ダイポールアンテナ(Dipole Antenna)」です。非常に基本的で広く使われるアンテナを0dBd とし、それとの比較で利得を示します。
半波長ダイポールアンテナは、受信または送信する電波の波長の半分の長さを持つ、棒状のアンテナで、実在するアンテナの中ではもっとも指向性が低いものになります。
その放射パターンは、棒状のアンテナ周辺を覆う形で、棒の両端部分がくぼんだ、ドーナツのような楕円形です。
この版波長自体が、等方性アンテナに対して約2.15dBi の利得を持っています。
したがって、この2つの単位の間には、以下の関係が成り立ちます。
利得 (dBi) = 利得 (dBd) + 2.15
以下では、「dBi」と「dBd」のそれぞれの特徴を解説します
※上記は基準となる各アンテナの基本的な特徴になります。例えば、あるアンテナの利得が「3dBd」と表記されていた場合、dBiに換算すると「3+2.15=5.15 dBi」となります。
アンテナの性能を比較する際は、必ず単位が「dBi」と「dBd」のどちらで表記されているかを確認し、必要であれば単位を統一することが重要です。
【種類別】指向性アンテナと無指向性アンテナ
アンテナは、その指向性の特性によって大きく2つのタイプに分類されます。
具体的には、特定の方向に強く電波を飛ばす(受信する)「指向性アンテナ」と、全方位に均等に電波を飛ばす「無指向性アンテナ」になります。
どちらが良いというわけではなく、それぞれの特性を理解し、用途に応じて適切に使い分けることが重要です。
指向性アンテナ|長距離・特定方向の通信に最適
指向性アンテナは、電波(受信性能)を特定の方向に集中させることで、高い利得を実現するアンテナです。
懐中電灯が光を一点に集めて遠くを照らすように、指向性アンテナは電波(受信性能)を特定の相手に効率よく届けます。
そのため、通信相手の方向が定まっている場合に非常に有効です。
以下は、指向性アンテナの主な特徴の一覧です。
※上記は指向性アンテナの基本的な特徴になります。
指向性アンテナは、電波塔と地デジアンテナ、静止衛星とBS/CSアンテナのようにその鋭い指向性を活かして、遠く離れた地点間を結ぶ「ポイント・ツー・ポイント」通信で真価を発揮します。
一方で、設置の際には精密な方向調整が不可欠となるため、その特性を理解した上での運用が求められます。
無指向性アンテナ|広範囲・移動体との通信に強み
無指向性アンテナは、水平方向360度に均等に電波を放射、または受信するアンテナです。
電球が部屋全体を明るくするように、無指向性アンテナは周囲の広い範囲をカバーします。
特定の方向を狙う必要がないため、通信相手が不特定多数の場合や、相手が移動する場合に適しています。
以下が、無指向性アンテナの主な特徴一覧になります。
※上記は無指向性アンテナの一般的な特性になります。
ただし、「無指向性」といっても、上記した通り、指向性はアンテナの形状に影響を受けて必ず発生するもののため、完全にすべての方向に均等な性能を示すわけではありません。
ダイポールアンテナの例のように、多くの場合、ドーナツのように水平方向には強いですが、上下方向の感度は低くなっています。
この特性を理解することが、無指向性アンテナを効果的に利用するポイントです。
【代表的なアンテナ】構造と指向性の関係を徹底解剖
アンテナの指向性は、その形状や構造によって決まります。
ここでは、私たちの身の回りで活躍する代表的なアンテナ(テレビアンテナ)の種類を取り上げ、その構造がどのようにして特徴的な指向性を生み出しているのかを解説します。
アンテナの「形」に秘められた機能美を理解することで、指向性への理解がさらに深まるでしょう。
八木・宇田アンテナ:素子数が指向性を決める仕組み
古くからテレビアンテナとして利用され「魚の骨」のような形状で知られる八木・宇田アンテナ(八木式アンテナ、八木アンテナ)は、指向性アンテナの代表格です。
このアンテナは、複数の短い金属棒(素子・エレメント)で構成されており、それぞれの素子が異なる役割を担うことで鋭い指向性を生み出しています。
以下、八木・宇田アンテナの各部分について一覧で解説します。
※上記は八木・宇田アンテナ各パーツの主な役割になります。
この導波器の数が多くなるほど、電波(受信性能)を前方に集中させる効果が高まります。これにより、アンテナの利得が向上し、ビーム幅が狭く、より鋭い指向性が得られるのです。
地デジアンテナとしての八木・宇田アンテナは、アンテナの先端側で非常に高い指向性(受信範囲の狭さと感度の高さ)を示します。
そのため先端を電波塔の方向へと向けることで他方向からのノイズを避け、地デジアンテナ機種でもっとも優れた、高い受信性能(利得)を発揮します。
また導波器に並ぶ素子(エレメント)数で受信性能が変化するため、素子数別に、地域の電界地域(電波レベル)に応じたモデルが存在し、幅広いエリアに対応できます。
このシンプルかつ高機能な構造により、八木・宇田アンテナはテレビアンテナやアマチュア無線などで長年にわたり広く利用されています。
デザインアンテナ(平面アンテナ):スリットアンテナの構造とは?
近年、住宅の外観を損なわないこと、自然環境の影響にも強いことから人気を集めている地デジアンテナ機種がデザインアンテナ(平面アンテナ)です。
このアンテナは、箱型のケースの内部に「スロットアンテナ」または「パッチアンテナ」と呼ばれる平面状のアンテナ素子が収められています。
電波をキャッチする金属板に切り込み(スロット)を入れることで、そのスロット部分が電波を集めるアンテナとして機能します。
以下、デザインアンテナの主な特徴です。
※上記はデザインアンテナの基本的な特性です。
デザインアンテナは、そのスマートな見た目に反して、しっかりとした指向性を持っています。内部の反射板が後方への電波を遮断し、前方への感度を高める役割を果たしているのです。
なおデザインアンテナや後述するユニコーンアンテナなど、八木・宇田アンテナのような素子が使用されていないアンテナは、受信性能を素子数に換算した「素子数相当」で表記します。
ただ平面状の金属板で電波を受信する構造上、デザインアンテナは八木・宇田アンテナに比べると指向性はやや低く、受信範囲は広くなります。そのため同じ素子数(相当)モデルのアンテナでも、八木・宇田アンテナに比べるとやや受信感度(利得)は低くなります。
特にデザインアンテナは壁面など低い位置に設置されることもあり、周辺の障害物に影響されて受信レベルが低くなることもあるため注意が必要です。
デザインアンテナ設置の際は、この指向性を意識して、電波塔の方向が見通せる(その方向に建物など障害物のない)壁面を選ぶことが重要です。
ユニコーンアンテナ:ポール状の形状に隠された秘密とは?
ユニコーンアンテナ(マスプロ電工「U2CN」)は、ポール(円筒)状のスタイリッシュなデザインが特徴の新しい地デジアンテナです。
このアンテナは、デザインアンテナと同様に内部にアンテナ素子を格納していますが、その指向性には独特の特徴があります。
一見すると無指向性アンテナに見えますが、実際には指向性を持っています。
以下、ユニコーンアンテナの主な特徴になります。
※上記はユニコーンアンテナの基本的な特性になります。
ユニコーンアンテナの最大の強みは、その形状により屋根の高い位置に設置できる点です。設置位置の低さや障害物から受信感度が低くなりやすいデザインアンテナに比べて、設置高を稼ぐことで受信環境を改善し、結果的に安定した受信を実現します。
そのためデザインアンテナが設置できない現場でも多くの場合は対応でき、デザイン性や対候性など、同等のメリットを確保できるアンテナ機種と言えます。
ただ、ユニコーンアンテナ本体の指向性は、その形状からデザインアンテナよりも低く、受信範囲がより広い分、アンテナ自体の利得もデザインアンテナよりもやや低くなりありません。そのため同じ位置に設置しても、八木式アンテナに比べると受信感度は低くなります。
総じてユニコーンアンテナは、デザイン性と受信性能のバランスを高いレベルで両立させたアンテナと言えるでしょう。
パラボラアンテナ:放物面反射器で実現する超指向性
お椀のような形が特徴的なパラボラアンテナは、非常に高い指向性と利得を誇ります。
衛星放送の受信や業務用無線通信など、微弱な電波、また直進性の強い電波を確実に捉える必要がある場面で活躍します。
その高い性能の秘密は、「放物面(パラボラ)」という特殊なカーブ形状にあります。
ディッシュ・放物面反射器とも呼ばれる皿のような放物面には、平行に入射してきた電波をすべて一点(焦点)に集めるという幾何学的な性質があります。
パラボラアンテナは、この性質を利用しています。
お椀型の大きな反射器(主反射器)で宇宙からの微弱な電波を受け止め、焦点の位置に置かれた「一次放射器」で効率よく受信するのです。
以下、パラボラアンテナの性能を決定する主なポイントの一覧です。
※上記はパラボラアンテナの基本的な特性になります。
この構造により、衛星放送用のパラボラアンテナ(BS/CSアンテナ)は目的の静止衛星からの電波だけを強力に捉え、他の方向からの不要な電波を排除することができます。
これが、BS/CSアンテナに極めて精密な方向調整が求められる理由でもあります。
フェーズドアレイアンテナ:電子制御でビームを操る最新技術
フェーズドアレイアンテナとは、物理的な可動部なしに、電波のビーム方向を自由自在に操ることができる最先端のアンテナ技術です。
多数の小さなアンテナ素子を平面上に並べ、それぞれの素子から出す電波のタイミング(位相)を電子的に制御することで、これを実現します。
このアンテナの原理は、波の「干渉」に基づいています。
各素子から出る電波の位相を少しずつずらすと、特定の方向では波が強め合い(建設的干渉)、他の方向では打ち消し合います(破壊的干渉)。
この位相のずらし方をコンピュータで高速に変化させることで、アンテナを物理的に動かすことなく、瞬時にビームの向きを変えることができるのです。
以下、フェーズドアレイアンテナの主な特性を一覧で解説します。
※上記はフェーズドアレイアンテナの基本的な特徴です。
この革新的な技術は、インターネット、またスマートフォンなど携帯端末が欠かせない現代の通信社会を、次のステージへと導く鍵となります。
Massive MIMOと組み合わせることで、5G/6G通信の超高速・大容量・低遅延を実現する中核を担う新技術なのです。。
まとめ:指向性を理解して最適なアンテナ選定と通信改善へ
この記事では、アンテナの「指向性」という重要な概念について、多角的な視点から解説してきました。
最後に、本記事の要点を振り返ります。
- 指向性とは:アンテナが電波(受信性能)を特定の方向に集中させる能力であり、「等方性アンテナ」を基準とした「dBi」という単位で表されます。
- 利得との違い:指向性が理論上の「方向性」を示すのに対し、利得はアンテナ内部の損失(効率)を考慮した現実的な「実力」を示します。
- 放射パターン:アンテナの性能を視覚化した地図であり、「主ローブ」「サイドローブ」「ビーム幅」を読み解くことで、その特性を把握できます。
- アンテナの種類:用途に応じて、特定方向を狙う「指向性アンテナ」と、広範囲をカバーする「無指向性アンテナ」を使い分けることが重要です。
- 構造と性能:八木・宇田アンテナの素子、パラボラアンテナの放物面など、アンテナの形状には指向性を生み出すための機能的な意味が込められています。
アンテナの指向性を正しく理解することは、単なる知識の習得に留まりません。
それは、お使いの通信システムの性能を最大限に引き出し、より安定した高品質な通信環境を構築するための実践的なスキルです。
特にお住まいで使用する地デジアンテナの具体的な受信性能や、お住まいに適したアンテナを選ぶ重要な目安にもなります。
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この記事に基づく知識が、皆様のお住まいでのテレビアンテナ機種選びから、レポート作成、製品開発、あるいは日々の課題解決の一助となれば、筆者としても幸いです。




